昭和11年2月26日のいわゆる「2・26事件」の日、東京は前夜から降った大雪
で一面銀世界だった。5歳だった僕は通園していた幼稚園の横の坂ででミカン
箱をソリにして遊んでいた。そして、何故か母親があわてて僕を迎えに来たー
その場面だけが記憶にある。昔は2月末には東京でも大雪が降った。
日本の市街地に降った最深積雪は、敗戦の年の20年2月26日、新潟県高田(上
越市)の377cmである。高田は日本のスキー発祥の地で、明治44年、オーストリ
アのレルヒ少佐が始めて日本人にスキーを教えた。それほどの豪雪地帯だが、昨
日は積雪ゼロだったという。
20年2月26日、東京も前夜からの大雪に見舞われた。亡父の日記にはこう書かれ
てあ
る。「戸外は近来の大雪(一尺五寸=約40cm)である。敵襲来に備えて隣組総
協力での雪片付け。10時半、交通難をおかして出勤」
前日の25日(日曜日)午後、東京では上野駅前、広小路、御徒町、秋葉原一帯が空
襲にあい焼失している。戦争も終わりに近づき、休日も悪天候も関係はなかった。
今は百年来の不況であり、政治はちじに乱れているが平和である。暖冬なのか全国的
には、かってのような豪雪もなくなった。喜ばしいことなのだが、この暖冬が自然破
壊に関係があるのか、それだけが心配だ。