「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

                夏ミカンの味に郷愁

2012-04-02 06:31:52 | Weblog
老妻が先日買物カートをひいて自由が丘の農家の無人スタンドから夏ミカン3個を200円で買ってきた。わが家の周りの住宅街には所どころこの夏ミカンがたわわになっている家があるが、あまり収穫せず、ただ通行人の目を楽しませているだけ。普段、もったいないなあと思っていた。僕らの世代にとって夏ミカンは、郷愁を感じさせる懐かしい味だ。

僕の記憶では夏みかんは、もっと季節が遅く初夏の頃八百屋の店先に並んでいた気がする。ちょうど果物の端境期であり、値段も安かったのだろう。子供たちへの格好のビタミンCの供給源だった。母親が新聞紙の袋に入った夏ミカンをよく買ってきた。しかし、皮がやたらに固くてむくのに一苦労した。味も口が曲がるほど酸っぱかった。僕らはミカンに重曹をかけたり、塩をかけたりして食べたものだ。砂糖は高級品でなかなか手に入らない時代であった。

最近は外国から1年中果物が輸入されてきて端境期がなくなった。それとハウス栽培が盛んになってきたのも原因している。露地でしか栽培できなかった時代には、たしかイチゴの旬は6月だった。戦前は梅雨時の6月、チブスかコレラの一斉予防注射があり、僕らは連れられて会場まで出かけたが、その帰途イチゴを”ご褒美”として買って貰えるのが楽しみだった。

今の若い世代は夏ミカンをそのまま食べるようなことはしない。昨年だったか町内会主催で夏みかんを使ってママレードを作る会があった。老妻も参加してできたママレードを貰ってきたが美味しかった。しかし、食生活が貧しかった時代に育った僕にとっては、やはり酸っぱいこの素朴な夏みかんを生で食べるほうが好きだ。