「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

              昭和一けた世代と「断捨離」の心

2012-04-09 07:40:43 | Weblog
8日早朝のNHKラジオの番組「明日のことば」を夢うつつで聞いていたら”だんしゃり”と聞きなれない言葉が耳に入ってきた。解らないままに起きてから老妻に聞いてみたら「断捨離」と書き、ヨガの「断行」「捨行」「離行」からくる言葉、ひらたく言えば、物への執着心を捨てることだと教えてくれた。老妻は昭和一けた生まれ「断捨離」の権化みたいなのに、ちゃんとこの言葉を知っていた。

番組で「断捨離」の心を説いていたのは、心理カウンセラーで女医の川畑のぶこさんで、タイトルは「私を変えた捨てる心、断捨離の実践」。川畑先生自身が日常生活で断捨離を実践したところ、いかに効用があったかの体験談であった。川畑先生のお母さんは昭和9年生まれで、なかなか物が捨てられない世代。川畑先生もその影響をうけて育ち、例えばストッキングなども80足も持っていたが、古い片方だけのものまで捨てられないでいた。しかし、今は必要なだけを持ち身辺がすっきりしたという。

僕ら昭和一けた世代は、食糧難だけでなく、すべてに物のない時代に育った。伸び盛りの少年時代、僕は母親が擦り切れたズボンのお尻の部分に布切れをあてたのをはいていた。僕だけでなく、たいていの子供は同じで”猿のケツ”と呼んでいた。老妻も少女時代、モンペで暮らした世代だけに物の大切さを身にしみている。それだけに二人とも「断捨離」が出来ない。

娘たちは”一シーズン通じて一度も使用しなかった衣類は捨てる事”と忠告してくれるが、老妻は一シーズンどころか数十年前の服まで箪笥の底に仕舞ったままで、改める気はないようだ。僕は早速、断捨離を実行しようと、蔵書とアルバムの整理に取り掛かったが、やはり想い出があって思うように進まない。昭和一けた世代にとっては一つの業みたいなものだ。