好き嫌いはともかく衝撃的な第9でした。
私も典型的日本人として、日本では2年に1回程度の頻度で、年末に第9を聴きに行きますから、ナマで聴いた楽曲としては、回数は間違いなくNo1のはずですが、今日の第9は今まで聴いた第9と全く違う音楽でした。
全体の印象は「激情」の第9。とにかく、強烈に激しい音楽でした。第1楽章、第2楽章は「何をそんなに怒っているんだ?!」と尋ねたくなるぐらい。第9は確かに情熱的な音楽であることは間違いないですが、こんなに激しい演奏は初めて聴きました。ピリオド奏法のせいなのか、それとも快速のテンポ(正確には分かりませんが、通しで恐らく1時間ちょっと位だと思います)のせいなのか、私にはわかりません。エモーショナルな演奏ってあると思いますが、当たり前ですが感情にもいろんな感情があって、今日の感情は、私には激しさ、怒り、向かう当てがないエネルギーに取れました。
ガーディナーさんは昨年「運命」を聴いた際も、違う「運命」を感じましたが、ここまで激しくはなかったような気がします。今日は左の端っこ席ですが、前方2列目だったので、ステージ入りするガーディナーさんが身近に良く見えました。長身で、堂々としており、大学教授というような雰囲気です。背格好はブロムシュテッドさんに似ていますが、ブロムシュテッドは温和な優しい感じがしますが、ガーディナーさんは岩石のような厳しさを感じます。今日の第9の「激しさ」はこのガーディナーさんの指揮ぶりや醸し出す雰囲気の影響かもしれません。
解釈の好き嫌いはまだよく分からない一方で、LSOの演奏、独奏者、合唱はいずれも素晴らしかったです。特に、合唱がすごい。今日は総勢40名ほどの合唱団。こんな数で大丈夫なのかなあと思ったら、とんでもありませんでした。一人ひとりが独唱者並みのパワーがあり、かつ美しい声をホール一杯に響き渡らせてくれました。日本の年末第9はお祭りということもあり、100名以上の合唱はざらで、第4楽章はオーケストラが聴こえなくなるぐらいなのですが、今日はオケと合唱と独唱の組み合わせが完璧でした。
(合唱はオケの後ろにちょこっといる人たちだけです)
独奏者は特に、冒頭のバリトンVuyani Mlinde の出だしが最高でした。なぜかその独唱の導入部は、ガーディナーさんはややゆっくり目に間を取っていたような気がしましたが、その見せ場作りに十二分に応える歌唱でした。私なんかはいきなり、背筋が伸びたぐらいです。他の独唱陣は目立ちすぎず、かといって埋もれるわけでもなく、全体の中で非常に上手く調和していました。ただ、今日の快速のピッチにちょっと皆さん苦しそうでしたが・・・
(独唱陣。左からEvans, Brummelstroete, Davislim, Mlinde)
LSOは相変わらず上手です。アンサンブル、木管、金管のソロパーツ、ホントにいつも聴かせてくれます。今日は私的にはティンパニーがすごく冴えて聴こえました。
とにかく、あまりにも激しい第9で、混乱していて自分の中で収拾できていないというのが実情です。
順番が入れ替わりますが、第9の前には1番が演奏されました。これは第9とは違って、非常に理知的な解釈・演奏だった気がしました。冒頭の出だしがやたらスローピッチで、いきなり何が起こったのかとビックリしましたが、直ぐに通常(?)のペースに戻り、後は堂々たる演奏でした。1番はCDを1枚持っているだけで、生はそれこそ20年ぐらい前に朝比奈隆大先生と新日本フィルのコンビで超ヘビメタ1番を聴いたぐらいなのですが、今日の演奏は軽すぎず、重すぎず王道を行く印象でした。正直、一つの完成された演奏だろうと言えるのではないかと思うほどの演奏でした。
どう総括していいのかわからないのですが、ガーディナーさんの強烈な指揮ぶりがやっぱり一番印象的です。堂々たる自信に溢れた指揮ぶりは「俺のベートーベンを聴いてみろ」と背中で言っているような気すらしました。
会場は万来の拍手で、スタンディング・オベーションの人も少なからずいました。名演奏であったことは間違いないのですが、皆さんそれぞれどう感じたのか、訊いてみたい気がしました。
London Symphony Orchestra / Sir John Eliot Gardiner
Beethoven Cycle
7 February 2010 / 19:30
Barbican Hall
Beethoven Symphony No 1
Beethoven Symphony No 9 ('Choral')
London Symphony Orchestra
Sir John Eliot Gardiner conductor
Rebecca Evans soprano
Wilke te Brummelstroete mezzo-soprano
Steve Davislim tenor
Vuyani Mlinde bass-baritone
Monteverdi Choir
私も典型的日本人として、日本では2年に1回程度の頻度で、年末に第9を聴きに行きますから、ナマで聴いた楽曲としては、回数は間違いなくNo1のはずですが、今日の第9は今まで聴いた第9と全く違う音楽でした。
全体の印象は「激情」の第9。とにかく、強烈に激しい音楽でした。第1楽章、第2楽章は「何をそんなに怒っているんだ?!」と尋ねたくなるぐらい。第9は確かに情熱的な音楽であることは間違いないですが、こんなに激しい演奏は初めて聴きました。ピリオド奏法のせいなのか、それとも快速のテンポ(正確には分かりませんが、通しで恐らく1時間ちょっと位だと思います)のせいなのか、私にはわかりません。エモーショナルな演奏ってあると思いますが、当たり前ですが感情にもいろんな感情があって、今日の感情は、私には激しさ、怒り、向かう当てがないエネルギーに取れました。
ガーディナーさんは昨年「運命」を聴いた際も、違う「運命」を感じましたが、ここまで激しくはなかったような気がします。今日は左の端っこ席ですが、前方2列目だったので、ステージ入りするガーディナーさんが身近に良く見えました。長身で、堂々としており、大学教授というような雰囲気です。背格好はブロムシュテッドさんに似ていますが、ブロムシュテッドは温和な優しい感じがしますが、ガーディナーさんは岩石のような厳しさを感じます。今日の第9の「激しさ」はこのガーディナーさんの指揮ぶりや醸し出す雰囲気の影響かもしれません。
解釈の好き嫌いはまだよく分からない一方で、LSOの演奏、独奏者、合唱はいずれも素晴らしかったです。特に、合唱がすごい。今日は総勢40名ほどの合唱団。こんな数で大丈夫なのかなあと思ったら、とんでもありませんでした。一人ひとりが独唱者並みのパワーがあり、かつ美しい声をホール一杯に響き渡らせてくれました。日本の年末第9はお祭りということもあり、100名以上の合唱はざらで、第4楽章はオーケストラが聴こえなくなるぐらいなのですが、今日はオケと合唱と独唱の組み合わせが完璧でした。
(合唱はオケの後ろにちょこっといる人たちだけです)
独奏者は特に、冒頭のバリトンVuyani Mlinde の出だしが最高でした。なぜかその独唱の導入部は、ガーディナーさんはややゆっくり目に間を取っていたような気がしましたが、その見せ場作りに十二分に応える歌唱でした。私なんかはいきなり、背筋が伸びたぐらいです。他の独唱陣は目立ちすぎず、かといって埋もれるわけでもなく、全体の中で非常に上手く調和していました。ただ、今日の快速のピッチにちょっと皆さん苦しそうでしたが・・・
(独唱陣。左からEvans, Brummelstroete, Davislim, Mlinde)
LSOは相変わらず上手です。アンサンブル、木管、金管のソロパーツ、ホントにいつも聴かせてくれます。今日は私的にはティンパニーがすごく冴えて聴こえました。
とにかく、あまりにも激しい第9で、混乱していて自分の中で収拾できていないというのが実情です。
順番が入れ替わりますが、第9の前には1番が演奏されました。これは第9とは違って、非常に理知的な解釈・演奏だった気がしました。冒頭の出だしがやたらスローピッチで、いきなり何が起こったのかとビックリしましたが、直ぐに通常(?)のペースに戻り、後は堂々たる演奏でした。1番はCDを1枚持っているだけで、生はそれこそ20年ぐらい前に朝比奈隆大先生と新日本フィルのコンビで超ヘビメタ1番を聴いたぐらいなのですが、今日の演奏は軽すぎず、重すぎず王道を行く印象でした。正直、一つの完成された演奏だろうと言えるのではないかと思うほどの演奏でした。
どう総括していいのかわからないのですが、ガーディナーさんの強烈な指揮ぶりがやっぱり一番印象的です。堂々たる自信に溢れた指揮ぶりは「俺のベートーベンを聴いてみろ」と背中で言っているような気すらしました。
会場は万来の拍手で、スタンディング・オベーションの人も少なからずいました。名演奏であったことは間違いないのですが、皆さんそれぞれどう感じたのか、訊いてみたい気がしました。
London Symphony Orchestra / Sir John Eliot Gardiner
Beethoven Cycle
7 February 2010 / 19:30
Barbican Hall
Beethoven Symphony No 1
Beethoven Symphony No 9 ('Choral')
London Symphony Orchestra
Sir John Eliot Gardiner conductor
Rebecca Evans soprano
Wilke te Brummelstroete mezzo-soprano
Steve Davislim tenor
Vuyani Mlinde bass-baritone
Monteverdi Choir