その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

VAT(付加価値税)増税で思うこと

2011-01-04 22:52:17 | ロンドン日記 (日常)
 今日は仕事始め。今シーズンの年末年始はカレンダーに恵まれたので、久しぶりにゆっくりさせてもらいました。なので、今朝の連休明けの出勤時には、準備にいつもより1.5倍ぐらい時間がかかるし、携帯電話は部屋に置き忘れるわで、習慣が持つ影響力の大きさ、大切さを改めて実感した次第です。


 今朝はテレビも新聞も、これまでの17.5%から今日を境に一挙に20%に跳ね上がる付加価値税(日本の消費税に該当)のことで一色でした。The Times紙は一面の見出しで「家庭の税負担額は年間600ポンド増加 (“Families to pay £600 more after rise in VAT”)」とし、中で具体的に何がいくらからいくらになるかを紹介しています。(私が最も影響を受けそうな、ビール1杯は£2.95から£3.02になるらしいです)

 この増税に追い打ちをかけているのが、鉄道各社の運賃値上げです。今年は平均で5.8%、ロンドンから南東部に向かう路線を提供するサザン・イースタン・トレーンは平均で7.8%、高いところは更に12.8%もの値上げになるそうです。ロンドン市内の地下鉄とバスも6.8%も上がります。

 なので、話が少し逸れますが、昨年末からの給与査定は結構難航したところがありました。こちらの給与システムでは、通常、通勤費は会社持ちでなく個人負担なので、社員にとっても死活問題なのです。(今日のTimes紙にも、定期券代が英国サラリーマンの平均給与の20%に上る人も居ると紹介しています)

 増税の是非はともかく、一外国人としてイギリスに暮らす身にとって、参考になるのはこの政府のアクションの早さです。日本並みの財政赤字を抱えるイギリス政府は、保守党政権になった昨年から、緊縮予算編成、VATの増税と矢継ぎ早に施策を展開します。いったい、イギリス以上の累積財政赤字を抱える日本が消費税の増税のみならず、抜本的な具体的なアクションをどうとってきたのかと振り返ると、少し恥ずかしくなります。

 そして、それは公共部門の政策にとどまらず、民間部門に身を置く私たちにもあてはまるのです。こちらに来て、何度現地のマネジャーたちから「何故、日本の本社はもっと抜本的な変革をしようとしないのか?」「幹部は何を考え、何をしようとしているのか?誰がこれを決めているのか?」と時には問い詰められ、時には愚痴られたことか。

 時として、「動かざること山の如し」が結果として、成功、リスクの回避(まさにリーマンショックの被害度の大きさ/小ささが物語っていたかもしれません)につなかることもあるかもしれません。しかしながら、公共・民間を問わず、日本に見られるのは、やはりアクションの遅さ、意思決定の不明確さ・不透明さとしか、いいようがない事象だと思います。

 私に今できることは、こちらの早い社内意思決定のプロセス、ノウハウを学ぶこと、そして外から日本の本社、支社などに働きかけることだと、思っているのですが、前者はともかくとして、後者はある程度システムとして出来上がっている組織カルチャーを変えていくのは容易なことではなさそうです。

2011年1月4日



※Times紙の記事。VAT上昇の歴史が図で紹介されますが、私が来た2年前は15%だったんです。


※各国の付加価値税ランキング。まあ、掲載基準が不明確ですが、英国は上から2番目、日本は下から2番目です(「やっぱり、日本はいい!?」と思いますか?)
コメント (3)
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