その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

とある職場の風景  図で考える人は仕事ができる?

2011-01-10 22:16:50 | ロンドン日記 (日常)
 このタイトルは、久恒 啓一さんというなんでも図解してしまうのが得意な方のビジネス自己啓発本のタイトルです。ただ末尾に「?」はついていません。

 企画書作成やビジネスプレゼンテーションにおいて、如何に事象やコンセプトを図やイラストを用いて、人にわかりやすく説明するスキルが、仕事を進めていく上で大切なことは、日系企業の共通ではないかと思います。私の日本の会社なんかは、「「絵」がうまく描ける人=企画力がある、コンセプチャル能力がある」ぐらいに考えている人もいます。まさに、「図で考える人は仕事ができる!!!」のです。

 逆に、こっちの西洋人は全然(??)、絵が描けません。なんか難しいことを、文書で延々と書いてくるので、なお難しくなるし、会議の資料でも、短いセンテンスが項目ごとに淡々と並べられたプレゼン資料が多いです。ローカルのマネジャーからの資料なので一生懸命読みますが、もしこれが日本人若手社員からのメールだったら、「ちょっと、メールが長いよ。こん感じの図を一つ描いて、中に数字を入れて貰えれば、一発でわかるんだから・・・」と教育的指導に走ること間違いなしです。

 そんなこちらの人ですが、会議とかで「要は、こういうことかい?」と、私がホワイトボードに図を描いて整理したりすると、「そうそう」、「さすが日本人」と分かったような顔をしてくれます。漫画文化の日本と契約書文化の西洋の違いが、こんな仕事の日常にも現れるのだなあと思っていました。そして、みんな図で考えれば分かるんだから、なるべくそうすれば良いのに・・・と。

 しかし、先日、パブでのイギリス人マネジャーとの何げない会話で彼らのホンネがちらり。もう数時間も飲んだ最中で、イギリス、フランス、アメリカ、スペインなどなどの同僚の仕事ぶりをいろいろ面白おかしく話していたら・・・

(酔っていましたので、きっと一部不正確な再現です)

A:「そういえば、日本人は絵を描くのが好きだよね〜」

私:「そりゃ、そうだ。日本の漫画文化は世界一。日本人はみんな漫画が描けるんだぞ〜。知らないの??」

A:「しかし、いったい、なんであんなに直ぐ図にするんだい?わけわかんないよ〜」

私:「図にすれば、難しいことも直感的、感覚的にわかるだろう。皆が共通の理解をもてるじゃないか」

A:「・・・・・・・・・・、感覚的に分かったってねえ〜。細部が分からなければ、分かったことにはならないんじゃないの?」

私:「・・・・・・・・・、まず全体のイメージをつかんで、それから細部を考えるじゃないのか?」

A:「・・・・・・・・どっちにしたって、契約書や文章に落とすんだから、別に図にする必要はないと思うけど。なんか日本人と打ち合わせると、絵を描いてなんとなく分かったような気になって、結局、細部はみんな全然違うこと考えていることが多いんだよね〜」

私:「・・・・・・・・・(そうか、こいつら、分かった振りして、全然分かってなかったのか!!!それどころか、なんでこんなことやるのかと、不思議に思われていた(馬鹿にされていた?)んだな〜。ショック!!!)・・・・・・・」


 彼は、図が描けないのではなくて(もちろんそれもあると思いますが)、そもそも「図が理解を助ける」とか、「必要だ」とは思っていなかったのです。これは、思考における大きな前提条件の相違ですから、「彼と話をするときには根本的に認識を改めねばならん」と感じた次第です。数字と図は万国共通語だと思っていた自分は浅はかだった・・・

 一口にグローバルビジネスといっても、かっこいい戦略論以前に、こんなパターン認識、発想方法の違いも理解しないと、「ああ〜、勘違い」の連続になります。

 しかし、なんとかして、彼らに心から「やっぱり、図で考える人は仕事ができる!!!」と言わせたい。

コメント (4)
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