その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ぶらっとひとり旅 セブン・シスターズ (1/2)

2011-01-13 22:26:49 | 旅行 イギリス
 文庫本3冊をバックパックにいれて、週末の一人旅にでかけた。目的地はロンドンの南東、イギリス海峡を望むセブンシスターズ。有名なホワイトクリフを見るのが半分と、何となく自分の部屋とは違うところで読書がしたくなったから。

 休暇明けのせいか、ホテルも列車も思いの外安く、ホテルは40ポンドちょっと、列車は往復13ポンドで予約できた。昼前にロンドンビクトリア駅から列車に乗り、1時間半程で到着するイーストボーン駅で降りる。

 ここから更にバスに乗って20分程行くはずなのだが、準備しておいたネット上の地図とかガイドを不覚にも部屋に置き忘れてきたので、バスの運転手に「セブンシスターズに行きたいから、最寄りのバス停で降ろしてくれ」と頼む。

 バスに10分ちょっと乗ったところで、運転手が「ここで、降りて、この道をまっすぐ15分ぐらい行けばよい。」と言って降ろしてくれた。羊が草を食らうのどかな牧草地帯だ。たまに横を車が通るが、歩いている人と誰とも行きあわないので、多少不安になるが、運転手さんの言うとおり、15分で海岸線に到着した。いきなりホワイトクリフが現れてびっくり。

 

 生で見るホワイトクリフは、さすがに写真とは比較にならない迫力だ。近くのクリフは多少茶味がかかっているが、遠くになるにしたがって真っ白に見える。そこに、英国海峡の波が岸壁に荒荒らしく打ち付けられ、その音がすさまじい。「そうか、写真集の写真では音がわからないのだなあ」と、当たり前のことに気づく。そして、空中からは何の障害物に邪魔されない風が、波と一緒に壁と私にぶつかってくる。この岸壁は、まさにこの風と波とこの土地の地質による自然の芸術品なのだと得心し、しばし見とれていた。生憎、天気が回復傾向にはあるものの、曇り空だったので、色彩のコントラストはややぼやけたところがあったが、これが晴天であったら、さぞ素晴らしい色合いを見せてくれるのだろう。

 
 

 続いて、今度は岸壁沿いにWalk Pathがあったので、そこを歩くことにした。イギリスらしく、Walk Pathが自然のままで整備されているので、沿って歩くのだが、すぐ2,3m横には100M近くはあると思われる絶壁がある。吹き飛ばされそうな強風の中を歩くのは、かなりのスリルだ。日本なら間違いなく、岸壁側は杭と鉄条で立ち入り禁止区域になっているのだろうが、そのまま放ってあるのがイギリスらしい。自然のままで、危険は個人の判断で、ということなのだろう。

  

※これでは高さが全く分かりませんが、下は100m以上の絶壁です
 

 曇り空を反射しているのか、海は灰色に染まり、空と海の境界もわからず、波しぶきととともに、曖昧な灰色の色合いはターナーの絵そのもの。こうした風景を見ると、ターナーの絵がこういうイギリスの風土に根差したところから生まれているというのも良くわかる。



 このWalkingの素晴らしさは、海側だけでなく、海とは逆側の牧草地の雄大さが味わえることだ。ロンドンから1時間半来ただけで、こんな雄大な見通しと大らかでのんびりした雰囲気を味わえるのは素晴らしい。

 このWalk Pathはどこまでどう続いているのか?がわからず、だんだん日没の時間も迫って来て、暗くなり始め、かつシーズンオフということで人もまばらに見かける程度なので「引き返した方がいいのか、それともこのまままっすぐ進み続けるか?」、かなり不安になった。1時間半ほど歩いたところで、パブを見つけた時は、すっかり「注文の多い料理店」を見つけた猟師の気分だった。このパブはなかなかいかしていて(また別にご報告)、ビール一杯飲んでちょっと休憩。そして、パブ横にあった案内板で位置、方向を確認して再出発。結局、イーストボーンまで歩いた。総歩行時間2時間ちょっと、きっと距離にして8Kmぐらい。夕焼けに照らされる岸壁と牧草地の美しさは、いつまでも私の記憶に残ると思う。

 


※B&Bのパソコンでその日のルートを再確認。すると、私が歩いたところはセブン・シスターズではなく、ビーチーヘッドというところであることが判明。どうりで、「写真集の景色と若干違うなあ」と思った。ということで、翌日の午前中は読書から、セブン・シスターズ再挑戦となった。


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