その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

イヴァン・フィッシャー指揮、ブダペスト祝祭管弦楽団 (Budapest Festival Orchestra)

2011-01-16 22:54:31 | コンサート (in 欧州)
 ブタペスト祝祭管弦楽団のロンドン公演に出かけた。12月にブタペストを訪れたばかりなので、不思議に親近感を感じる。今日はハンガリーの大統領(と聞えたが気がしたが?)を初めとするVIPもロイヤルボックスに鑑賞に来ていた。

 一曲目はハイドンの交響曲第92番。美しい室内楽的な調べ。うっとり聞き入る。余りの響きのよさに危うく気を失い(眠り)かけたがなんとか踏み止まった。弦のアンサンブルの美しさが特に印象的だった。

 リストのピアノ協奏曲は更に、素晴らしかった。冒頭からの重厚なオーケストラとピアノの響きが、ハイドンの余韻を打ち払うかのように始まってハッとした。スティーヴン・ハフ(Stephen Hough) のピアノは時に優しく、時に激しく、それでいて全体を一本の線が通っているような均整さを感じる演奏。弾く姿が背筋が伸びて、姿勢が良く、乱れなく安定しているのが印象的。オーケストラやフィッシャーとのぴったり息があっていて、リストの音楽の美しさを堪能させてくれた。 それにしても、まあよくもあんなに早く指が動くものだと感心。

 休憩後はベートーベンの交響曲第6番「田園」。舞台を観て、あれれ・・?と思う。楽器配置が変わっていて、オーボエ、クラリネット、フルートらの木管の第一奏者達が弦に交じって第一列に陣取る。いつも舞台奥に居る人達がいきなり、最前線に出ているので、本人たちもなんとなく落ち着かなそう。そして第二奏者の人は弦楽器団のなかに紛れて座っている。そして指揮者の前には譜面台ではなく、一本の木が置いてある。(この木の意味合いは最後まで分からなかった・・・)

 演奏は、これは素晴らしいものだった。「田園」は日本でも何度か実演を聴いているが、心の底から揺さぶられた演奏だった。最前線で木管が歌い、響く。鳥が鳴き、風に誘われるのがわかる。弦楽器のアンサンブルも素晴らしい。音がふくよかで、奥行きがある。

 フィッシャーは、全体にスローペースに運びつつ、一つ一つの音作りに凄く気を遣っているのがわかる。ただディテールに拘るだけでなく、全体のバランス、ハーモニーが素晴らしい。調和、均整、寛容、包容、柔、自然、詩という言葉が頭に浮かんでくる。何かに暖かく包まれている感じで、先週の日曜日に暖かな日差しを背中に浴びて歩いたセブンシスターズでの田園ウオーキングを思い出させた。第5楽章になって終盤が近づくと、「もう終わってしまうのか。終わらないでくれ~」と願うほどだった。こんな演奏を聞くと、本当にクラシック音楽を聞くことを趣味に持てて幸せだと心から思う。

 すごい拍手に応えてアンコールを2曲やってくれた。いずれもブラームスのハンガリー舞曲の21番(?)とストラウスのポルカ(?)。特にポルカは、楽員さんたちまでのコーラスも入り、それに応えて聴衆からの手拍子がつく楽しい締めだった。

 新年早々、素晴らしい演奏会だった。打ちのめされるというような衝撃的な感動とは異なる、心豊かにしみじみと音楽の余韻に浸らせてくれる、そんな音楽会だった。

※スティーヴン・ハフ(Stephen Hough)


※謎の舞台中央の「木」


※前列にクラリネットやオーボエが座っていました



Royal Festival Hall

Budapest Festival Orchestra
Sunday 16 January 2011

Joseph Haydn: Symphony No.92 (Oxford)
Franz Liszt: Piano Concerto No.1 in E flat
Interval
Ludwig van Beethoven: Symphony No.6 (Pastoral)

Iván Fischer conductor
Stephen Hough piano

コメント (8)
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