コロナ禍でテレワークが注目され、それに伴い判子不要論が浮上している。
わざわざ出社して、上司の判子をもらうというアナログ感が、テレワークとシンクロしないようだ。
しかし、私は判子で命拾いした経験がある。
30年ほど前、私が某通販会社でMDをしていた頃の話だ。
当時私が担当したカタログのひとつにバレンタインカタログがあった。
タブロイド判8ページ、発行部数50万部で2億の売り上げ予算だった。当時そのページ数で2億はそこそこ大きな金額だ。
商品決定から校正、在庫の確保までを、当時主任だった私が実務責任者として切りまわした。
出来上がったカタログは、事前に反応を見るために、2000部ほどを優良顧客にパイロット版として配布した。
数日後コールセンターに1件のクレームが入った。
通常クレームは責任部署にいの一番にまわってくる。
しかし、そのクレームは私の部署を通らず、上の方へまわり、たまたま社長の耳に入ってしまった。
そのクレームの内容というのが、カタログ掲載商品のひとつに、いかがなものか的なものがある。
子供には見せられないようなものだ、とクレーム主は憤慨していたらしいとのこと。
その商品は当時巷の一部で流行っていたパロディ商品だ。
バナナを模したチョコレートで、先端はバナナではなく、男のシンボルの形だった。
唇やお乳、お尻の形のパロディチョコもあるので、バナナも大丈夫だろうという軽いノリで掲載した商品だ。
それを見て社長は、こんなカタログやめてしまえ、と烈火のごとく怒りまくっていたらしい。
即刻、私は直属の上司の商品課長と企画課長とともに、部長席へ呼ばれ、事情聴取となった。
ふたりの課長は部長の両隣に立ち、実務責任者の私の責任と言わんばかりの口ぶりだ。
私は問われるままに商品決定の経緯を話し、何人かの女性社員にも感想を聞いたりしたことなどを述べた。
部長から商品決定シートを持ってくるように言われ、それを提出した。
そこにはメーカーカタログから切り取った商品写真が貼ってある。
そして右上の承認欄には、商品課長と企画課長、それと担当の私の判子が押印してあった。
「君たちが承認しているやないか。盲判か?」
それまで私を責めていた部長の矛先はふたりの課長に移っていった。
私は放免され席に戻り、善後策なり対策なりが指示されるのを待った。
その時、サラリーマンにとっての判子の重要性を身に染みて実感した次第だ。
後日譚だが、残りの49万8000部のカタログは印刷会社で100数十名のアルバイトを使って、バナナチョコの上に剥がれないシールを貼って、無事配布完了した。
その作業の費用が2000万ほどかかり、カタログの利益はほとんど飛んでしまったのは言うまでもない。
わざわざ出社して、上司の判子をもらうというアナログ感が、テレワークとシンクロしないようだ。
しかし、私は判子で命拾いした経験がある。
30年ほど前、私が某通販会社でMDをしていた頃の話だ。
当時私が担当したカタログのひとつにバレンタインカタログがあった。
タブロイド判8ページ、発行部数50万部で2億の売り上げ予算だった。当時そのページ数で2億はそこそこ大きな金額だ。
商品決定から校正、在庫の確保までを、当時主任だった私が実務責任者として切りまわした。
出来上がったカタログは、事前に反応を見るために、2000部ほどを優良顧客にパイロット版として配布した。
数日後コールセンターに1件のクレームが入った。
通常クレームは責任部署にいの一番にまわってくる。
しかし、そのクレームは私の部署を通らず、上の方へまわり、たまたま社長の耳に入ってしまった。
そのクレームの内容というのが、カタログ掲載商品のひとつに、いかがなものか的なものがある。
子供には見せられないようなものだ、とクレーム主は憤慨していたらしいとのこと。
その商品は当時巷の一部で流行っていたパロディ商品だ。
バナナを模したチョコレートで、先端はバナナではなく、男のシンボルの形だった。
唇やお乳、お尻の形のパロディチョコもあるので、バナナも大丈夫だろうという軽いノリで掲載した商品だ。
それを見て社長は、こんなカタログやめてしまえ、と烈火のごとく怒りまくっていたらしい。
即刻、私は直属の上司の商品課長と企画課長とともに、部長席へ呼ばれ、事情聴取となった。
ふたりの課長は部長の両隣に立ち、実務責任者の私の責任と言わんばかりの口ぶりだ。
私は問われるままに商品決定の経緯を話し、何人かの女性社員にも感想を聞いたりしたことなどを述べた。
部長から商品決定シートを持ってくるように言われ、それを提出した。
そこにはメーカーカタログから切り取った商品写真が貼ってある。
そして右上の承認欄には、商品課長と企画課長、それと担当の私の判子が押印してあった。
「君たちが承認しているやないか。盲判か?」
それまで私を責めていた部長の矛先はふたりの課長に移っていった。
私は放免され席に戻り、善後策なり対策なりが指示されるのを待った。
その時、サラリーマンにとっての判子の重要性を身に染みて実感した次第だ。
後日譚だが、残りの49万8000部のカタログは印刷会社で100数十名のアルバイトを使って、バナナチョコの上に剥がれないシールを貼って、無事配布完了した。
その作業の費用が2000万ほどかかり、カタログの利益はほとんど飛んでしまったのは言うまでもない。
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