★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

「檸檬」と「砂丘」

2020年08月04日 21時51分42秒 | 徒然(つれづれ)
「檸檬」。
 言わずと知れた梶井基次郎の珠玉の短編だ。
 筋を超約すると、京都寺町の八百屋でレモンを買い、丸善へ行って画集を山のように積み上げ、その上にそっとレモンを置いて出てきた、という話だ。
 以下に「檸檬」の最後の文章を引用する。
 

 丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。 私はこの想像を熱心に追求した。「そうしたらあの気詰まりな丸善も粉葉みじんだろう」 
 そして私は活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている京極を下って行った。


 学生時代を京都で過ごした私は、もちろん丸善に何度か行き、画集もめくってみた事がある。さすがにレモンは置いてこなかったが、たぶん京都の学生の何人かは、レモンを置いてきた奴がいるだろう。

「檸檬」で私が物足りなかったのは、最後の爆発のシーンが主人公の頭の中だけで、物語の中に描写されていなかったことだ。
 梶井の筆力を持ってしても、そのビジュアルを文章化するのは不可能だったのだろう。

 時を経ずして、私はそのビジュアル化をアメリカ映画に見た。
 その映画は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「砂丘」だ。
 不条理ものだから筋はない。
 私はピンク・フロイドが音楽を担当しているというだけで観にいった。
 その「砂丘」のラストシーンが、砂丘の豪邸がなんの脈絡もなしに大爆発して、クローゼットの中の衣料品や冷蔵庫の中の食料品が、スローモーションで宙を舞うという、ハチャメチャなものだった。爆発とは対照的な、そのカラフルでファンタジックなシーンが、ピンク・フロイドの音楽をバックに、幾度となく繰り返されるのだ。
 
 このシーンが私の頭の中で、瞬時に「檸檬」の物足りなかったラストシーンに結びついた。
 梶井はこれが書きたかったのではないか。
 奇しくも最後の一文の中の「活動写真の看板画が奇体な趣きで街を彩っている」という文句は、時空を超えて「檸檬」と「砂丘」の奇妙な関連性を予測していたのではないだろうか。
 きっとこのシーンを後年誰かがビジュアル化してくれるだろうと、梶井は考えていたのではないだろうか。


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タウンウォッチング

2020年08月04日 14時37分56秒 | 徒然(つれづれ)
 ウォーキングしているといろんな人々を目にする。
 ブランチのために入った松のやは、ご飯、味噌汁が食べ放題だ。
 それゆえ、食べ盛りの若者やガタイの大きい肉体労働者の客が多い。

 平均すると皆んな3回はご飯のお代わりをしている。それもてんこ盛りだ。
 箸が卓上の端立てにあるにもかかわらず、割り箸をもらっている客もいる。
 そのコロナ対策とデカい肉体労働者の対比が面白い。

 肉体労働者で目につくのが、解体現場や道路工事で働く姿だ。
 この猛暑の下、一様に長袖の作業服で、重労働をこなしている。
 私には到底無理だ。すぐに熱中症になってしまいそうだ。

 途中にカラフルな遊具を完備した公園がある。
 そこに集まるママ友のファッションが奇異に映る。
 競い合うような派手なサマードレスや原色のお出かけファッションで、一種の異空間を作り出している。
 徒歩圏内には団地や長屋風の一戸建てが多いにもかかわらず、プチセレブ感を醸し出しているのだ。

 最近はスマホのコードレスイヤホンが流行りなのか、自転車でひとり喋りながら走っている輩も見かける。
 スマホを耳に当てての通話なら珍しくもないが、その姿はケータイが出だした頃の歩き通話の違和感を思い出す。

 この炎天下でテニスに興じている連中もどうかしてるぜ。
 ほとんどが初心者レベルで、ラリーも続かない。
 何が面白いのだろう。

 まあ、人それぞれ、いろんな人間がいるから、世の中面白いのかもしれない。


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