★★たそがれジョージの些事彩彩★★

時の過ぎゆくままに忘れ去られていく日々の些事を、気の向くままに記しています。

恐怖の花火

2022年05月19日 11時10分54秒 | 徒然(つれづれ)
 夏には全国各地で花火大会が催される。
 私の故郷でも昔は毎年花火大会があった。

 漁村だったので、花火大会が開催される港周辺の海上には、近隣の村から多くの漁船が集まった。
 海に向かって打ち上げられる花火を、海上の船で真下から見上げるのだ。

 私が初めてその花火大会に、祖父の漁船で連れられて行ったのは、保育園児の頃だった。
 暗い船上でスイカを食べながら待っていると、なんの前触れもなく、轟音と共に幕開けの連発花火が開花した。
 それまで暗かった夜空が、一瞬にして昼間の明るさになった。

 それは普段、家の庭でやる線香花火や打ち上げ花火とは、比べものにならないスケールだった。
 幼心にはまさに雷をも凌ぐ、驚天動地の現象だった。
 私はこの世の終わりかと思って、耳を塞ぎ、目をつぶって震えていた。

 未だにあの恐怖や驚異を上回る出来事に遭遇したことはない。
 あの恐怖の感動をもう一度味わってみたいものだ。

 夜中にベランダで煙草を吸いながら夜空を見上げる時、ふと、あの時のように暗い夜空が一瞬にして昼間の明るさになったら、と思ったりする。
 それは、おそらく北の国からの核攻撃か、巨大隕石の落下しかないだろう。


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