今まで古代の大まかな流れを掴んできたけれど、ほんの一部分的な解析にすぎないことは十分理解しています。例えば瓊々杵命が『五部族を引き連れ云々』という出雲への随伴を述べた古事記は、それ以前の歴史を暗示しているだけで、何時から、何処で、どのようにして一所になったかは語っていません。
古くは大陸系の渡民であった縄文人の『山祇(やまつみ)族』は、狩猟、漁労、焼畑農業を営んでいた。日本人を形成する最も古い民族である。
『高天原』で天照大神と一緒にいた高木神は山祇族の出だとされる。
大巳貴(おおなむち)命(大国主命)を祖とする海神(わだつみ)族は航海術で舟を操り、漁労の他、水稲耕作農を行い青銅器を生産した。初めの頃、北九州沿岸地域に住み着いた。
この海神族が北九州の沿岸という、大陸や半島からの侵略に弱い地域から、より内陸の――あるいは防御性の高い出雲(?)に居を移したと思われる。
天孫族の祖、天照大神は弟スサノヲと『誓約(うけい)』を交わすことで、スサノヲの心が清いか汚れているかを子産みで決めることになった。清い心だから女児を産んだと言って、スサノヲは『私が勝った』のだと姉の天照大神に宣言する。その後にスサノヲは暴れまくり、天照大神は岩屋に隠れることになる。
スサノヲは大巳貴の神祖であり、出雲の神である。『誓約』に表れたスサノヲの行状は天照大神の領域を侵したものとも言える。天照大神はスサノヲに追われて黄泉に隠れた。つまり死んだのだ。そこが出雲なのか?だとすれば天照大神を祖とする天孫族、瓊々杵命が大国主命から『国譲り』を受けた話は、国を取り戻す復旧の大事業ということになる。
天照大神と高木神が共に居たという『高天原』が、九州高千穂の近くではないかと前篇で述べたが、スサノヲに追われて移行した後の、実在しない架空の象徴的な場所であったのかも知れない。
とかく『高天原』は謎の解けない神話である。
昔語り『因幡の白兎』が古事記に出てくる。隠岐の島から因幡に渡ろうとした白兎が、鰐の背中を踏んで渡り切ろうとした時、最後の鰐に咬みつかれて皮を剥がされてしまう。大国主命の兄たちが意地悪な治療法を伝えて苦しませたが、大国主の治療の教えの通りにすると元の体に戻ったとある。
白兎は大国主命に、兄たちを差し置いて因幡の姫と結婚するでしょうと予言する。
この昔語りは何を言っているのだろうか?単に大国主命の傑出した資質を誇張しているだけではない。
予言した白兎とは何者?鰐といえば海神族の和邇(ワニ)氏を連想させるし、白兎は自分こそが因幡に上陸する目的を持っていたのに、海神族の裏切りで果たせなかったと言っているようにも読める。