conparu blog

ささやかな身の回りの日常を書き綴ります。
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我が事を憂える

2024-09-22 14:02:10 | 随想
我が事を憂える
 暗いニュースが多い近頃は世相を憂える気もあるが、自分の内を覗けばまた我が事を憂える。生きることの確かな手応えは、ほんの束の間の満足に終わって、夕べのことは夢にも残らない。つまり人間一般の傾向だと自らを慰めつつ、しかし――と思いは続くのである。ああなりたいこうなりたいと思うのは欲求の発露だが、なったらなったでもっと欲しいと欲の権化になってしまうのは成長とは違うな。沈思黙考して新聞広告に載った一文を反芻する。「無人島に一冊の本を持って行くなら『歎異抄』だ」とあった。かくて難解な『歎異抄』を手に取り、師釈の講話を謹んで拝聴したのはよいのだが、頭でわかるとしても心底に沈殿させることは容易ではない。歳をとると言うことは寿命の終わりに近づくこと、浅はかに生きてきた前半生に埋め合わせの利かない後悔が、晩生の脳みそを酷使する。そんな足掻きにも似た凡人の徒労を一蹴して、目覚めさせてくれるのが『歎異抄』なのだ。奥の深い哲学(らしき)の領域に入ると、残る人生の時間を食い潰してしまうオンリーワンの執着が疎ましく、あれもしなければ、これもしなければ、と雑念の貧乏素地が頭をもたげてくるのである。
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