☆ゼロの焦点(1961年 日本 95分)
監督/野村芳太郎 音楽/芥川也寸志
出演/久我美子 高千穂ひづる 有馬稲子 南原宏治 西村晃 加藤嘉 十朱久雄 沢村貞子 穂積隆信
☆ヤセの断崖
いやもう、実に大したもので、橋本脚本の真骨頂が堪能できた。
過去『羅生門』『生きる』と続けられた回想の鬼の構成は、やがて「砂の器」に結晶するまで綴られていくんだけど、過去を隠すための殺人という主題もまたそうだ。
ちなみにこの主題は、当時はなんだか流行りめいたものがあって、松本清張だけじゃなくて、水上勉や森村誠一もそうした世界を書いた。そう『飢餓海峡』や『人間の証明』なんかがそうだ。
そういうところを見ていくと、この傑作は原点のひとつになるような気もしてくる。
まあ、このあと『ゼロの焦点』は何度か映像化されるんだけど、この作品よりおもしろい『ゼロの焦点』に出会ったことがない。
ちなみに助監督だった山田洋次は脚本にも参加しているから、そうしたことからいえば『砂の器』の習作といっていいんだろうね。