◎海の淵(Landkrimi Tirol: Das Mädchen aus dem Bergsee)
なんとなく感傷的なギターのメロディが好いなあっておもってたら、どんどんと人間関係の深みに嵌まっていく。そんな映画だった。
ミリアム・ウンガーっていう監督も、パトリシア・アウリツキーという女優も、とにかく地味だ。ただ、物語は決して地味ではなくて、湖に重しを入れられたリュックを背負わされて沈められた売春婦の存在意義みたいなものを探っていくんだけど、この相関図がなんともいえない。相関関係は、サッカーの監督で、かつ、町の名士がいて、とうに離婚してるんだけど、こいつを父親に持った女刑事パトリシア・アウリツキーが捜査をする過程で徐々に知れてくる。むなくそが悪くなる関係で、どう書けばいちばんわかりやすいんだろう?
パトリシアの実家には、母親がいる。12歳で、死んだ姉もいる。さて、この姉、死んだ理由がよくわからない。自殺らしい。なんで自殺したのかをつきとめてゆくんだけど、この謎を解こうとするうちに、パトリシアの家族が濃厚に絡んでくる。この展開があまりにも身近すぎて、どうかなあっておもっちゃう。
つまるところ、パトリシアの父親のサッカーの監督は異常性欲の持ち主で、自分の長女に倒錯して、特別な女だといって執着し、性交渉を強要して妊娠させちゃう。娘は、女児を出産するんだけど、そのために気鬱になり、みずから命を絶つ。話はそれでは終わらなくて、生まれた女児は修道院に預けられるんだけど、働き始めても挫折し、ベルリンで売春屋に務め、それをつきとめたのか偶然なのかはわからないけれども、まあ、たぶんつきとめたんだろうけど、サッカーの監督つまり祖父が客になって現われるんだね。これまたいたたまれず、娼婦になっていた孫は逃げ出すんだけど、執拗に追われ、やがて性交渉を拒んだことで殺される。この因縁深い犯罪の真実を、父親とは離婚した母親と暮らしてきたパトリシアが偶然にも追いかけることになるんだけど、いやもう、この展開は偶然すぎないか?
ちなみに、チロル地方の風景はとっても美しく撮られてるね。