帰らざる日々(1978)
懐かしい。
たぶんそうなんだろうけど、藤田敏八の描いてきたこういう青春時代のやるせなさってのは、田舎の高校生とか地方出身の大学生には刺さるもんがあったんだろうなあ。
それにしてもなんつーか、自主制作映画の35ミリ版っていうのがなによりしっくりくるかなあ。大掛かりな自主制作な感じ。ま、ともかく、飯田にデパートが進出して、中央高速が開通したばかりの時代。そうかあ、だから、あの頃、信州が舞台の映画が多かったのか。
喫茶店に掛かるのは『旅の宿』だが江藤潤が不良に見えない。映画館は『日本侠客伝』で『唐獅子牡丹』が流れ、朝丘雪路の経営するスナックで掛かるのは『傷だらけの人生』だ。
江藤潤の家、むかしの町家だなあ。向かって左の戸を開けると通り庭。入って右手が江藤潤の部屋。浅野真弓を手籠めにしようとしたとき、浴衣の足元から覗き込むようなアングルで下着を撮るんだけど、趣味の良くないカットながら白い下着ってのがなんとなく当時を匂わせる。
しかし、当時の喫茶店はええね。特徴的な雰囲気は当時でしか味わえないなあ。
「太宰の斜陽の中に不良とは優しさのことではないかしらっていう一節があるよな」
と、河原で友達にいうのは、5月生まれのタツオこと永島敏行で、その青春物語なんだけど、相手は竹田かおり。中学でて名古屋の美容学校に通って美容院にも勤めてたとかで、店主に強姦されて、だけど、かなり深入りしてたようで、見切りをつけて出直そうと飯田に帰ってきたんだが、だから、童貞の永島敏行が挿入しようとしたとき、ちがう、そこじゃないといわれちゃう。これは、めげるんだよなあ。
そうか、飯田のパチンコはまだ手打ちだったのか。しかし竹田かおりを犯そうとした翌日に、江藤潤のたくらみで浅野真弓とデートするときの純情ぶりはなんだよって話だけど、まあ、それがばれて、竹田かおりが怒るのはいいとしても、母親の吉行和子が朝丘雪路と電話でお互いに店を知ってたりする話をしてるうしろではやくざの中村敦夫が大喧嘩したりと、まあ、そんなありがちの世界なんだが、まじ、田舎はそんなもんだ。
とにかく、いろいろ懐かしいけど、いくらなんでも、アリスの『つむじ風』のかかるミュージックビデオみたいな画面で夢精するか?