Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

セカンドライフ sonicmart制作記13.

2007年09月06日 | Design&3DCG
 今日は、オブジェクトのモジュールについて述べる。セカンドライフ(SL)は、アバター身長が概ね決まっている。従ってシムの環境形成において、アバター・モジュールを、オブジェクト制作場面での原単位として捉える必要が出てくる。それは20世紀の建築家ル・コルビジェの「モデュロール」を思い出させてくれる。モデュロールは、黄金比、フィボナッチ数列、及びウィトルウィウス,レオナルド・ダ・ビンチ,アルベルティらの人体寸法を組み合わせ、人間にとって心地よく美しい空間をつくるために考えられた彼独自のモジュールである。環境形成の際、人体寸法を基本とする環境要素のモジュール化が、美的要素形成の1つだとする先人の知見だろう。
 セカンドライフの3DCG画面は、常時パースペティブな透視画面が表示されている。制作やモジュール化といった考え方を用いるためには、他3DCGソフト同様、オブジェクトを詳細的、定量的、客観的に表示できる投影画面表示が不可欠となる。だがSLには、投影画面表示がない。私達の経験からすれば、とんでもないソフトだったのである(笑)。それでは、モジュールどころの話ではない。
 そこで私達は、マナティー・リゾート制作に着手する際、アバター身長を調べた。上図左の黄色い柱が高さ2m(オブジェクト数値)であるから、アバター身長は、約2.3m前後と計測できた。SL開発国のアメリカ人男性平均身長1.73mから、アバター身長は、アメリカ人平均の1.3倍大きいことがわかった。
 次いで現代建築の居室天井高でよく使われる寸法が2.4m、2.7mなどである。これらを1.3倍した寸法を、マナティー・リゾートで制作するコテージの天井高とした。それが3m、3.5mである。上図左背後のグリーンコテージ梁迄の天井高さは3mである。ディスプレイ展示を予想し、アバターの視線が下方に向くよう、このタイプはあえて天井高を低めに設定した。 最終的に5m、7.5m、10mといったモジュールを加え、建築全体の制作に適用した。
 上図右は、海外シムの民家である。アバター身長から類推し、天井高5m以上ある。特殊な地域を除けば海外民家で天井高5m以上は、明らかなオーバースケールであり、実際には存在しない。セカンドライフの建築全体傾向であるが、相当数がオーバースケールで制作されている場合が一般的だ。こうした制作傾向は、パソコンモニターサイズ、室内空間が一望できる、バーチャルゲーム世界の影響等いくつかの要因が類推できるが、内実はわからない。このようなゲーミング感覚或いはスケールで制作すると、3DCGが本来持っているリアリズムの表現からは逸脱し、むしろ誇張された劇画的表現に近づいてゆく。この辺の考え方の選択が、シム制作における最初の分岐点なのであろう。
 私達は、3DCGによるリアル風景の実現を選択し、マナティー・リゾートで展開したのである。ここが従来のシムとは、基本的に異なっている考え方であり、差別化している点でもある。私達が採用した方法によって制作したマナティー・リゾートが、前述したコルビジェが目指したところの、心地よく美しい空間となったかどうかは、このシムを来訪するアバターの判断に委ねたい。
コメント
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