丸太町入国管理局の帰りに鴨川河畔で寝転んでいた。京都も綺麗だな。あたりまえか(*^▽^*)。戦災に遭わずに過去の風景が残っているからだが。
それに日本建築が美しい。その様式は何世代にもわたり形成され、そして一般化されてきた意匠だから綺麗なのは当たり前だろう。
それにくらべ背後に見えるホテルオークラの建築(設計:清水建設)は、ポストモダニズム的意匠で少し救われた感じもあるが薄汚れ見飽きた風景だ。
現代建築は1年ぐらいで建築意匠を決めるから、まあ不完全なのも当たり前。不完全というのは同じ風景を10年も見続ければ飽きるから、つまりその程度の意匠だった。まあ一世代で一般的な建築意匠を極めるのは無理でしょう。どうせ消耗品としての現代建築だから飽きたら建て替えるのだろう。
対岸を右側に眼をやれは、吉村順三設計のホテルフジタは既に建て替えられてザ・リッツ・カールトンに変わってしまった。こちらの設計は日建設計がおこなったから、周辺樹木の高さの中に建築を収め景観上の配慮はよいとしても、建築意匠が鴨川河畔に建つ老舗和風料理屋船清を思いだす。こちらの現代建築はそっけないので建てたときから見飽きるデザインのようだ。いずれ樹木の中に埋没して見えなくなるだろう。それも現代建築の身の処し方と私は解釈している。
ザ・リッツ・カールトンの建築は三つに分節化され、そのデザインの類似性として桂離宮あげることができる。昔私も、桂離宮のブランを現代建築に活かそうとして建築設計の勉強をしたことがある。だが桂離宮ほどの完成度が得られない。やはり原作が持つ完成度の高さがあるのだろう。だからかっての和風建築の意匠は、現代人には難しいというのが今の私の理解である。
にもかかわらずあの設計事務所はやっちまったんだ。当然現代人がイメージする高級化、景観との調和、経営的な整合性といった点から一つの最適解を実現させた。そして用が済めば建て替えればよいとする現代建築の精神なのだろう。
それは東山のパークハイアットにも見て取れる。こちらも同じ日建設計のデザインであり、壁を排除し大型ガラスで壁面を構成し入母屋屋根で覆うとするデザインは同じである。
それらの出発点はおそらく京都迎賓館であり、こちらも日建設計のデザインだ。推測すると同じ人間なりチームがデザインを担当したのではなかろうか。現代人が抱える考え方、感性、志向性、あるいは高級化のマーチャンダイジングといういくつかの課題に対して頭脳的に最適解を見いだしたといえそうだ。
そのあたりをわきまえるというあたりが現代人の設計方法なのだろう。言い換えれば現代人の能力の限界を見ているようだ。
そうしたデザインのルーツをさぐると皇居新宮殿にありそうだ。壁面をのぞけば入母屋屋根を主として建築群が構成されているデザインは大変類似している。この基本設計は吉村順三がおこなった。そう、鴨川河畔のあの取り壊されたホテルフジタを設計した建築家である。
右側の過半に入母屋造りの目立たない設えがザ・リッツカールトン(設計:日建設計)。かってのホテル藤田を建て替えた。
東山のパークハイアット(設計:日建設計)Googleストリートビュー
敷地の高低差を活かし、道路側の和風建築(設計:芦原義信)をホテルレストランに組み込むなど巧みな方法である。伝統的建造物群保存地区に隣接しており周辺街並み景観との調和を頭脳的に実現している。景観調和という課題に対して現代建築の最適解の一つといえそうだ。
京都迎賓館(設計:日建設計)内閣府HPより
この設計が一連の事例のなかでは時間的に最初に建てられた。中庭を介した建築構成、入母屋屋根によるデザインはルーツをさぐると皇居新宮殿にあることがわかる。
取り壊されたホテルフジタ(設計:吉村順三)https://bb-building.net/tatemono/kyoto/k079.html
WEB情報によれば、経営的にも黒字だったとある。現在のザ・リッツ・カールトンより建築物の高さが3層分高い建築であるにもかかわらずランドマークとして機能し周辺の古い街並みにも大変よく調和していた。こうした実例をみると景観の調和は建築物の高さだけではなく、建築壁面の意匠が大きく作用していることがわかる。経営的にも景観的にも、特に取り壊して新しく建て替える必要性はなかったとみられる建築である。
トップ画像:iPhon13prp