デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

午年にマックス・ベネットを聴く

2014-01-12 09:17:13 | Weblog
 このごろは電子メールで新年のあいさつを交わす人も多いそうだが、世代的に年賀状でなければ実感が湧かない人もいるだろう。小生もそのひとりで、元旦に受け取る年賀葉書の束を広げるのが正月の楽しみでもある。年賀状だけの付き合いになった方もいて、このときばかりは顔を思い出す。家族の写真を使ったものや凝ったアイデアもあるが、絵柄はやはり干支の午が圧倒的で、そのデザインの豊富さに驚く。

 ジャズレコードで午といえば「シマウマのベネット」と呼ばれているアルバムがある。ベツレヘム・レーベルの10吋盤で、ベーシストのマックス・ベネットのリーダー作だ。ベネットはスタン・ケントン楽団で安定したリズムを刻んだ人としてジャズ・ファンにお馴染みだが、フュージョンやロック・ファンにも広く知られている。55年にケントン楽団を退団後はロサンジェルスでスタジオ・ミュージシャンとして多くのレコーディングに携わり、また60年代後半からクインシー・ジョーンズのバンドに出入りにするようになってからは、ジョニ・ミッチェルやアレサ・フランクリンといったビッグネイムとの共演でエレキ・ベースの達人として活躍している。

 「シマウマのベネット」は55年の録音で、チャーリー・マリアーノとフランク・ロソリーノの2管をフロントを配したセッションだ。ともにケントン楽団の盟友ということもありソロリレーは阿吽の呼吸でつなぐ。またヘレン・カーのヴォーカルも2曲収録されており、これがオリジナル盤の高値を呼んでいる。どのトラックも会心の演奏で楽しめるが、なかでもカナダ出身の女性作曲家ルース・ロウが、一夜で書き上げたという「I'll Never Smile Again」のベースラインは素晴らしい。派手さはないもののリズミカルなサポートで、こんなベースが鳴っていたらさぞフロントのプレイヤーも気持ちがよかろう。どのジャンルでも人気の所以だ。

 シマウマが2頭だけの変哲のないジャケットだが、これが妙に味がある。デザインは数々のジャズ・ジャケットを手がけたバート・ゴールドブラットと知ると納得するが、そのまま年賀状に使える秀逸なものだ。次の年賀にはこれを使ってみようか。う~ん、12年後は何歳になるのだろう。「今年もジャズと野球観戦と酒とバラの日々です」と添え書きをした年賀状を12年後も旧知の友に差し出したいものだ。
コメント (17)
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