デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

バディ・チルダーズの膨大な録音数

2023-09-03 08:33:17 | Weblog
 先週、馴染みのジャズ喫茶「GROOVY」でリバティ―盤「Buddy Childers Quartet」を聴いた。ジャケットに見覚えがあるものの買ったことさえ忘れていたレコードだ。バディ・チルダーズの傑作というとフォー・ブラザーズのハービー・スチュワードが参加した「Sam Songs」があるが、アーノルド・ロスとツーショットのこの作品も忘れがたい。B面ラストの「Bernie's Tune」はワンホーンの名演だ。

 この機会にチルダーズの足跡を追った。スタン・ケントン楽団で活躍したのは知っていたが、その後トミー・ドーシーをはじめレス・ブラウン、ウディ・ハーマン、チャーリー・バーネット、ダン・テリー、ベニー・カーター、ジョージ・オールド、秋吉敏子とルー・タバキン等々、名立たるビッグバンドに参加している。単発のミルト・ジャクソン「Memphis Jackson」や、クレア・フィッシャー「Thesaurus」、ジーン・アモンズ「Free Again」にも呼ばれているので重厚なアンサンブルに欠かせないファーストコール・トランペッターなのだろう。

 「Wikipedia」によるとシナトラをはじめディーン・マーティン、ナット・キング・コールにエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレイの三大女性シンガー、そしてアニタ・オデイ、ジューン・クリスティ、クリス・コナーのケントンガールズ、更にパティ・ペイジ、ペギー・リー、テレサ・ブリュワー、驚くべきはモンキーズ、キャプテン&テニール、カーペンターズ等のポップシンガーのレコーディングにもクレジットされている。3万5千曲以上の録音に参加したドラマーのハル・ブレインや、米大統領よりも稼いでいたと言われるベーシストのキャロル・ケイというレッキング・クルーのメンバー並みの録音数だ。

 久しく聴いていないアルバムや忘れかけていた名演に耳を傾け、スウィングのエッセンス溢れるジャケットを眺めながら薫り高き珈琲を味わう。至福のひと時である。半世紀以上ジャズに浸っていても、火を吹くアドリブの熱度は聴くたび増すばかりだ。だからジャズはやめられない。ジャズ喫茶の扉を開けると広くて深いジャズの景色が広がっている。そこはあまりにも美しい。
コメント (7)
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