デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

"Tootie"の愛称が似合うアルバート・ヒース

2024-05-05 08:28:56 | Weblog
 先週話題にしたマル・ウォルドロンが参加したアルバムにコルトレーンの初リーダー作「COLTRANE」がある。インパルスにも同タイトルがあることから70年代のジャズ喫茶では混乱を防ぐため「コルトレーンの7105」とレコード番号で呼んでいたレコードだ。因みにインパルス盤は、「インパのコルトレーン」とか「マイルス・モードのトレーン」などとリクエストされた。

 そのプレスティッジ盤が初録音だったのは、4月3日に亡くなったアルバート・ヒースだ。録音した1957年というと長兄のパーシーはMJQのメンバーで、ジミーは53年にマイルスと録音後、麻薬で逮捕され刑務所にいた。故郷フィラデルフィアで一緒に練習したジミーを慮り、頭角を現してきた弟を起用したのだろう。当時22歳。派手なドラムソロこそないが、正確なリズムを刻んでいるし、要所要所で控え目ながらフィルインを入れる余裕ぶりだ。トップの「Bakai」はヒースのイントロから始まりフロントを引っ張る気迫がある。

 その後の活躍は目を見張るばかりだ。ブレイキーやローチ、エルヴィンはフロントを刺激して引っ張っていくタイプだが、ヒースは後ろからそっと背中を押す感じでホーン奏者やピアニストを支える。自分のスタイルと役割をよく知っている。「Live at Smalls」は2009年にイーサン・アイバーソンとベン・ストリートと組んだアルバムだ。この時74歳。いい顔をしているではないか。キャリアを積むと若手を育てる立場になるが、ここでもスタイルは変わらない。毎日のようにレコーディングしていた60年代と違うのはドラムソロが増えたことだろうか。

 愛称の"Tootie"は子どもの頃トゥッティ・フルッティ・アイスクリームが大好きだったので母方の祖父が付けたのだという。そのアイスクリームのようにメリハリのあるカラフルなドラムだ。レコード棚からランダムに10枚選ぶと1枚は「Albert "Tootie" Heath(ds)」のクレジットがある。天国でヒース・ブラザーズのセッションが始まった。享年88歳。合掌。
コメント (3)
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