
先週28日に「DAY BY DAY」のジャズ仲間と野球観戦に行ってきた。北広島エスコンフィールド行きのシャトルバスが出る新さっぽろ駅で待ち合わせたものの、先着で来場者プレゼントがあるらしく早い時間から長蛇の列だ。いつもは球場に着いてから青空の下で宴会をするのだが、ラインは更に伸び、雨も降っていたので、コンコースのベンチに陣取り早速缶ビールで乾杯だ。
1時間ほど経って波が途切れたのでバスに乗り込む。満席になろうかという時、小生と同じTシャツを着た人が乗ってきた。3年前の夏にユニクロから発売されたブルーノート・シリーズで一番売れた「Somethin' Else」だ。「新宿ピット・イン」のTシャツが似合うベーシスト鈴木由一さんが、「ここでかぶる確率は一万分の一、もっとでしょうか?」と。ジャズ・フェスに向かう電車ならたまにあるケースだが、野球場に行く定員50人のバスとなれば一生に一度あるかないかの出会いだ。小生は応援グッズで膨らんだリュックを前に抱えていたのでその方は気付いていない。
今更説明の要らない大名盤である。何百回聴いただろう。「枯葉」は千回を超えている。56年前に初めて聴いたときの感動と興奮は今も変わらない。これから何が始まるのかとドキドキする荘厳なイントロからマイルスのミュートが出てくる瞬間の美しいこと。聞き覚えのあるメロディを「♪C’est une chanson qui nous ressemble.」に沿って丁寧に紡いでいく。最近若手のミュージシャンがテーマを大きく崩したり、いきなりアドリブに入るのを聴いたが、面白くも楽しくもない。美しい曲はより美しくである。この「枯葉」がジャズ演奏の標準であり名演と呼ばれるのはそこにあるのだ。
バスを降りその人を待つ。同じTシャツに驚いたようだが、ご家族の方共々笑顔で快く写真撮影に応じてくれた。小生と同じ世代なので、ジャズ喫茶の大音量でマイルスの洗礼を受けたに違いない。同じ服だと普通気まずいものだが、ジャズという連帯感が居心地を良くするのだろう。試合は9対0で贔屓のチームが勝った。「Somethin' Else」はスラングで、「今回は最高」である。