コタツ評論

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ワンコイン・ブルース

2001-03-01 22:39:00 | ダイアローグ
ワンコイン・ブルース


朝起きるのがどんなにつらいか
月や星をながめてはいくつため息をついたか
クソみたいな仕事にはがまんできねえ
おまえがそばにいないなら

電話が鳴るのを待っている
ビールもウイスキイも心は酔わせない
バカみたいなやつらとはもう遊ばない
おまえが帰ってこないなら

オレに笑いかけてくれたはじめての女
おふくろにだって好かれちゃいなかったのに
俺はもう二度と笑えない気がするよ
おまえが俺を憎んでいるのなら

よくベッドでふざけあったな
幸福で胸がはりさけそうなときもあった
それがいまじゃクソみたいな気分だ
おまえを二度と抱けないのなら

なあ 神さま
あんたはたった6日で世界をつくった
おかげで俺たちはクソまみれさ
だから俺はあんたを頼りにしたことはねえ
人をにらみつけて胸をそらしてやってきた
どうせこぎれいな天国には入れないさ
でも地獄にはまだ早すぎるだろう?

お願いだ
俺に電話するためのコインを一枚
彼女にやっちゃくれねえか
ほら、あんたの真下を歩いている
その赤毛の女だよ

なあ 神さま
ちょっと斜視でそばかすの田舎娘が見えているか
あんたが気に入るような女じゃないかもしれん
教会には行かないし汚い言葉もつかうからな
でも悪い女じゃない

なあ 神さま
ちょっとばかし運が悪かったとき
彼女に手を差しのべるべき人間が
ろくなやつじゃなかった

かなりひどい目にあったとき
彼女に手を差しのべる人間が
一人もいなかった

なあ 神さま
つらい目にあってきたのに
人を優しさで包むことができる女だ
おかげで俺も少しは人間らしくなれた

彼女の心には小さなクルスがあるんだ
数えきれないほど握りしめたせいで
プラザホテルの真鍮ノブのように
ピカピカに光り輝いている

なあ 神さま
そんな彼女を殴っちまった俺は
ほんとうにクソみたいなろくでなしさ
あのとき俺はどうかしてたんだ
悪魔にキンタマをつかまれていたんだ
いまでも彼女の悲鳴が耳から離れないよ

神さま お願いだ
俺に電話するためのコインを一枚
彼女にやっちゃくれねえか
あんたの真下を
泣きながら歩いてる
その赤毛の女だよ

コインを一枚
その足下に転がしてくれたなら
二度とあんたをクソッタレとは呼ばない
心からそう誓うよ
だからお願いだ
コインを一枚

(3/1/2001)
コメント
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