今夜は懐かしいパリの歌をお届けします。
オルセー美術館を出てバンドーム広場を歩いていたら、車から声をかけてきたロッシ。
ダニー・デヴィートに似た禿げの小男だった。イタリア人でバレンチノブランドの縫製工場を営んでいると云っていたっけ。カジノで負けて金欠なので、バレンチノのコートを2着買ってくれないかという話だった。日本で買えば、1着8万円はするが、2着で4万円でいいという。手持ちのフランは日本円で2万円ほど。そのうち1万円強相当のフラン札を「これしかない」とみせると、お前のホテルまで残金をとりに行こう、俺の車に乗れという。「オテル・ド・ニッコー」とでたらめを教えて、バレンチノのコートを抱えて足早に歩き出した。車の向きとは反対なので追いかけてはこれないロッシが、何か大声を出していたが、聞こえないふりをして路地を曲がるや走った。16万円が1万円! 大儲けだ。その夜、セリーヌ本社前のプチホテルの部屋で着てみた。縫製はゾウキンを縫ったように雑だったが、スタイルはわるくない。裏革を使ったウエスタンコートはけっこう似合ってみえた。どこかでロッシとバッタリ会ったらまずいので、東京に帰ってから着て歩いた。「パリでロッシというイタリア人から買ったバレンチノだぜ」と自慢した。ロゴは「バレンチン」だったが。パリと聴くと、哀しげな目をした間抜けなロッシを思い出す。酒屋の店先ですすったカキ、露店の焼き栗、フランス語しかなかったが美しい装丁の本がたくさんあった書店、その2階の中華料理店の変な味の春巻き、早朝と深夜には夜勤の黒人しか歩いていなかったジャンゼリゼの裏通り、懐かしい私のパリ、1週間しかいなかったけれど。
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(敬称略)