「吉田調書」に激震、が走ってないんだな、これが。
所長命令に違反、原発撤退 福島第一、所員の9割 政府事故調の「吉田調書」入手
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11144817.html?_requesturl=articles%2FDA3S11144817.htmlamp;iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11144817
東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。
修学旅行の高校生乗客を置き去りにして、真っ先に逃げ出したセウォル号沈没の船長・船員たちと同じにみえる。もちろん、同じではない。船長ともいえる吉田昌郎所長や
フクシマ50の現場作業員たちは、逃げずに残って懸命に奮闘した。乗客の救助を優先して亡くなったセウォル号の一般乗務員たちと、フクシマ50の作業員は同じかもしれない。
先日、韓国のパク・クネ大統領は、セウォル号の救助失敗を落涙しながら国民に詫び、その責任があると海洋警察の解体を言明した。セウォル号沈没の全容と責任はほぼ明らかになりつつあり、その背景となった、企業の利益偏重、業界の安全軽視、官民の癒着腐敗、官僚・政治家の不作為などについて、厳しい追及がはじまっている。
あえて、わずかとするが、300人余の犠牲者を前にして、韓国は自己否定に等しい総懺悔の渦中にあり、国家改造まで着手しようとしている。そのきっかけのひとつは、沈没必至にもかかわらず乗客に待機するよう船内放送しながら、自らは真っ先に逃げ出した船長と船員たちの姿に衝撃を受けたからだろう。
フクイチでも、当時の枝野官房長官による、「ただちに健康には影響がない」という放送はあったが、所員の9割が逃げ出した事実が発覚することはなかった。セウォル号は人々の眼前で沈没していったが、フクイチでは遠景のTV画像は注視されても、原発の近くにマスコミ記者の姿はなかったからだ。
韓国の船長と日本人の魂
http://takedanet.com/2014/05/post_0ab8.html
福島原発が2011年3月12日に爆発してほどなく、福島県に行っていた大手テレビ、全国紙の新聞の記者は一斉に福島から引き揚げた。
セウォル号沈没とは比べようもない被害をともなうフクイチの危機に際して、報道機関もまた、いち早く事故現場から逃げ出していた。きっかけという事実といっしょに、避難したわけだ。フクイチとセウォル号を事故とすれば、その異同を並べるのは無意味なことだが、事実がどのように扱われたのかについては、じゅうぶんに意味があるはずだ。
セウォル号とフクイチの最大の違いは、フクイチでは、「船員」が逃げ出した事実が3年間も明らかにされず、隠されてきたことだろう。「船員」が逃げ出したことより、その事実が隠されてきたこと、3年間もの長きに渡って、それが可能であったこと。はるかに問題なのは、そのことであり、それ以外にはないと思える。
自らの立場に置き換えてみれば、セウォル号の船員や福島第一原発の所員、あるいはマスコミ記者が逃げ出したことを一概に責める気にはなれない。その場にいれば、私も逃げたいと思っただろうし、逃げたかもしれない。少なくとも、留まって死ぬことが仕事だとは、とうてい思えない。
しかし、個人が保身に走ることと、逃げた事実がなかったことにされるのでは、まったく別な話である。セウォル号と同様に、フクイチからも、所員の9割が現場から逃げ出したという事実をそのとき知っていれば、その後に起きた、あるいは明らかになった、いろいろな事実の見方はずいぶん変わっていただろう。
セウォル号の沈没は「人災」であることは疑いようもなく、未必の故意、不作為による「殺人」まで取りざたされ、責任の所在が洗い出されようとしている。そうした「犯人」「悪人」捜しにとどまらず、政治権力や社会の構造にまで踏み込んだ検証を国民は期待し、パク・クネ政権も本気で取り組もうとしているようだ。しかし、日本ではそうはならなかった。
それは、こう言い換えることもできる。セウォル号の沈没によって、韓国の体制はわずか1か月で大きく揺らぐほど、その脆弱な権力基盤を晒したからだと。一方、セウォル号よりはるかに甚大な被害を出しているフクイチでは、国民の安全に関わる重大な情報を3年間も秘匿できるほど、体制は揺るがず権力基盤は強固に保たれたと。
もちろん、べつな言い換えもできる。日本は韓国に比べて、自浄能力や復原力において、いちじるしく劣っていると。
ドライベント、3号機準備 震災3日後、大量被曝の恐れ
http://www.asahi.com/articles/ASG5N2F8DG5NUEHF003.html
(敬称略)