コタツ評論

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鍵泥棒のメソッド

2013-06-30 00:36:00 | レンタルDVD映画


ウディ・アレン監督・脚本の「ミッドナイト・イン・パリ」は、1920年代の絢爛たるパリを舞台に、ヘミングウェイやフィッツジェラルド、ピカソ、ダリ、コール・ポーターなどが登場して、ウディ・アレン監督作品としては珍しくヒットしたそうだ。アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞だけでなく、美術賞にもノミネートされたのは、当時のパリの街角やカフェ、ホテルの部屋、パーティの模様を豪華に再現したからだろう。たしかに、「ミッドナイト・イン・パリ」の美術はすごかった。

ひきかえ現代物の邦画を観ていていつもがっかりするのは、美術や衣装がなきに等しい場合が少なくないことだ。いったん室内にキャメラが入ると、アダルトビデオもTVドラマも映画作品も、ほとんど区別できない殺伐な空間を見せられる。フィルムに固着する価値のない、島忠ホームズやIDC大塚の売り場で見るような安物のソファやダイニングセットやリトグラフが映される。美意識や伏線はもちろん、そこには何らの主張や訴求もない。

日本のインテリアの貧しさの反映といえばそれまでだが、スクリーンから人物以外のモノや道具が語りかけてくることはほとんどないわけだ。かと思えば、やたらけばけばしく飾られたパンクでロックでキッチュな若者の原色の部屋とか、あるいは笠智衆や乙羽信子でも顔を出しそうな縁側に籐椅子に茶の間といった昭和レトロの部屋など、ありえない饒舌さだったりする。

その点、「あまちゃん」に登場する、1980年代にアイドルに憧れた春子(小泉今日子)の部屋はじつにリアルに作られていて感心した。この「鍵泥棒のメソッド」も、売れない俳優の桜井武史(堺雅人)のボロアパートの乱雑な部屋が重要な場面となるだけに、よく作り込まれていた。日本アカデミー賞の脚本賞を受賞したほど上出来なコメディとして認められているが、ここでは美術を賞賛したい


売れない俳優の桜井武史の部屋
くわしくはこちらのサイトへ。やっぱり、この映画の美術は話題になっていたんだな。


スーパーのレジ係の井上綾子(森口瑤子)が中学生の息子と住む、所狭しと逸品が置かれた団地の部屋も、とても効果的に見せていた。一瞬、パンするだけだが、パウル・クレーの絵が架かっていた。最後のクレジットの協力協賛に、日本パウル・クレー協会とあったから、たぶん本物だろう。さすがにジミー・ヘンドリックスのギターはレプリカだろうが。美術監督は金勝浩一という人だ。

衣装も優れていた。またしても「あまちゃん」で恐縮だが、吉田副駅長を演じている荒川良々のヤクザの親分工藤純一が、コートからネクタイまで渋いグレーで統一した凝ったなりをしていた。それまで黒のスーツでキメていた「殺し屋」のコンドウ(香川照之)が売れない役者の桜井武史と入れ替わり、間抜けなダンガリーシャツにジーパンで、とぼとぼボロアパートに歩くところも可笑しい。

そして、白眉は黒いハイヒールである。終わり近くの場面で、堅物編集長の水嶋香苗(広末涼子)が車を降りるとき。一瞬、形よく伸びた膝下から細い足首と黒のピンヒールが登場する。かなり高価な品ではないかと思える素敵なハイヒールだった。広末涼子が美しい細い脚を持っていることにはじめて気がついた。

正直いって、堺雅人や広末涼子や森口瑤子を、一度もよい俳優だと思ったことはなかった。ひいきの香川照之にしても、市川中車を継いでから、ひいきを降りていた。梨園の、名門の、という旧弊と袂を分かち、「スーパー歌舞伎」を独創して「歌舞伎界の反逆児」といわれた猿之助の耄碌を晒しているとしか思えないからだ。

しかし、この映画の彼らは、とてもよかった。ウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」より、ずっと上出来で洒落た作品に出演できた幸福な俳優たちといえるだろう。おまけの、猫飼いのメンヘラ女の胸キュンに笑った後、しかしどちらのカップルも、うまくいきそうでいかなそうなと気づかされて、工藤純一(荒川良々)のようにニヤリとしてしまった。大人の映画である。

(敬称略)

スポーツ以外にプロはいないのか

2013-06-29 00:31:00 | スポーツ



プロ野球:選手会 加藤コミッショナー辞めさせろ “痛烈”要望書
2013年06月28日

http://mainichi.jp/sponichi/news/20130628spn00m050021000c.html

またプロ野球選手会がやってくれました。WBCのときも毅然としていましたね。よくぞいってくれましたとばかりのスポーツマスコミ。権威ある組織の最高権力者に、冷静にして勇気ある提言をする、堂々たる言論の持ち主は、ジャーナリストではなくスポーツ選手だという情けなさ。

Veteran Japanese Date-Krumm creates Wimbledon history(コタツ訳:ベテラン42歳のクルム伊達、ウインブルドンの歴史を創る)
http://edition.cnn.com/2013/06/27/sport/tennis/tennis-wimbledon-kimiko-date-krumm-serena-williams/index.html?hpt=hp_c4

3回戦の相手、シード1位のセリーナ・ウィリアムスも絶賛しています。提灯記事と賞賛記事の区別ができず、海外取材ができない日本のジャーナリズム。伊達はそんなに凄いのかとロートル扱いしていた不見識を露わにされたようなもの。「Veteran ベテラン」とは、見出しにできるほどの敬意表現なのだと知りました。

(敬称略)

おどロイター電

2013-06-27 06:22:00 | 司法
6月27日6時20分なのですが、いまのところメディアの報道なし。ちょっと驚きます。記者会見には新聞テレビは来なかったのでしょうか。

2013/06/24 「被害者にかわって対抗言論を行使するのは『民主主義社会のあるべき姿』」 ~新大久保・排外デモ暴行事件、152人の弁護団による刑事告訴後の記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/86613

団長は前日弁連会長の宇都宮健児先生。サラ金・クレジット、商工ローンなど、多重債務問題に早くから取り組んできた、「闇金ウシジマくん」のような人です。ただし、ウシジマくんのガタイや腕力はもちろん、口八丁手八丁からもほど遠い「のび太くん」みたいな人です。



その宇都宮先生が日弁連会長になったときは驚きました。いや、候補になったときからびっくりです。捨てたもんじゃないなと日本を見直したくらい。都知事選にも立候補しましたが、猪瀬さんが「スネ夫」にみえるほど、あいかわらず「のび太くん」でした。

東大法学部卒ですが、食うや食わずの落ちこぼれ弁護士でした。しかたなく、ほかの弁護士が鼻もひっかけない多重債務問題を飯びつにしたとは、ご本人が取材やインタビューを受けるたびに明かしていることです。

偶然、銀座にあった宇都宮健児法律事務所が入るビル前を通りかかってびっくりしたことがあります。ヤクザや事件屋ばかりが入っている、いわく因縁があるので知られた、「ジャイアン」の巣みたいなビルだったからです。

まさか弁護士が「占有屋」しているはずもなく、そりゃ家賃は格安かもしれないが、恐ろしくはないのだろうかと首を傾げました。もっとも「商売の邪魔しやがって」と押しかけた「ジャイアン」も、ビルを前にすれば拍子抜けしたはずです。

もしや、どこかの組が「ケツ持ち」しているのではと誤解して、辞を低くする効果はあったかもしれません。いまは東京市民法律事務所と名前を変え、ビルの名前も違っていますが、宇都宮先生はあのボロビルにまだいるのでしょうか。

有田芳生 首相の『民主は息を吐くように嘘をつく』発言紹介
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20130626/Postseven_196023.html

「息を吐くように嘘をつく」とは、ネトウヨの慣用なのでこれにもびっくりしました。元は「朝鮮人は」です。安倍首相は、ほんとうにネトウヨだったんですね。

朝貢国VS従属国

2013-06-22 14:07:00 | 政治
読売には、橋本五郎とかいうお粗末な論説委員しかいないのかと思っていたら、こんな風にゴリッと書ける人もいたんだな。

勝股秀通 (かつまた・ひでみち) 読売新聞調査研究本部主任研究員

1983年に読売新聞社入社。青山学院大学卒。54歳。 1987社会部、93年から防衛省・自衛隊を担当。防衛大学校総合安全保障研究科に初の民間人として入校、修士課程修了。編集委員、解説部長兼論説委員などを経て2011年10月から現職。

仮想敵は日本
韓国軍が狂わせる日米韓の歯車

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2908

アメリカを除けば、戦後の日本が、世界のどの国や地域よりも、物心両面とも最大の支援を注いできた中韓それぞれに、あからさまに仮想敵国視されている現実。中国とは東西冷戦以来だが、韓国とも新たな「冷戦」期に入ったのかもしれない。自民党の「韓国ロビー」の功罪がはっきりしたようだ。戦争を避けるために、最小限にとどめるために、韓国とも「冷静に戦う」政治を選ぶしかないようだ。


残酷な天使のテーゼ



「対馬は韓国のものだ」と言い出した韓国人
韓国の異様な行動を岡本隆司准教授と読む

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130617/249773/?P=1&rt=nocnt

韓国は中国の朝貢国に戻ったという指摘ですが、アメリカの属国の日本よりましだということでしょうか。大昔の中国の朝貢国とは、「あんたが大将!」とおだてていれば、静岡のわさび漬けくらいを手土産にもっていくと、エビチリやフカヒレをおごってくれたりした、CPのよいものだったようです。琉球王国をふくめ、アジア各国から朝貢を受けていた頃の中華文明は圧倒的だったので、そんなのどかな国際関係があり得たのでしょう。

現在の中国には、朝貢を受けるに宗主国にふさわしい先進的な文明も高度な文化もありません。日本と同盟することでその条件はある程度整うはずなのですが、遅れてきた帝国主義的野心に満ちた頑なな姿勢を変えません。やはり、中国が民主化しなければ、打開点は見出せないのでしょう。日韓といい北朝鮮といいますが、朝鮮半島の問題は、本質的には日中問題に帰結するようです。

(敬称略)

いやはや、まったく

2013-06-16 19:12:00 | 政治
戦犯「秋山好古」をモデルに使ったマンガ「進撃の巨人」は韓国へ謝罪と賠償せよ!
http://birthofblues.livedoor.biz/archives/51438051.html

韓国の極端な「反日家」が、とうとう日露戦争の英雄・秋山好古まで「戦犯」にして、作者に謝罪を迫っています。日本にも極端な「嫌韓家」がいますから、「いやはや」と村上春樹風に嘆息しようと思っていたら、

【萬物相】北海艦隊06/16
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/16/2013061600047.html

なんと韓国では、日露戦争以前、日清戦争から日本は「戦犯」らしいのです。まるで日清戦争の雪辱を晴らさんと、韓中両国軍が力を合わせて制海権を獲得しようと「誓い合った」かのようです。

1世紀前、なすすべもなく制海権を明け渡した韓中両国軍が、海を守るべく誓い合ったというわけだ。

【コラム】韓中首脳が構想すべき「ビジョン」06/16
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/16/2013061600052.html

習近平主席が提起した「新型大国関係」は、オバマ大統領に直ちに却下されたように日本では報じられていますが、はたしてどうでしょうか。韓国は中国のビジョンに諸手を挙げて支持し従うようです。

韓国が習近平外交を正確に理解し、主導的に「絵」を描くことが、その出発点となる。

まさしく日米関係のコピーそのものです。しかし、中韓にとっては、自分たちこそポジであり、日米がネガとして映っているようです。