コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

ホットモットイエモット!

2013-10-31 06:05:00 | 経済
このところ、朝日新聞にスクープが続いている。

日展書道「篆刻」、入選を事前配分 有力会派で独占
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131030-00000006-jct-soci

みのもんたの次男逮捕や阪急阪神ホテルの食材偽装を追及するなら、同様に不正審査と金まみれの日展のジジイどもに謝罪記者会見を迫るべきだろう。

ヤクザの自動車ローンを組んだことで、歴代頭取に役員報酬の「自主返上」を発表したみずほ銀行のように、日展の理事長や常務理事など幹部に報酬の「自主返上」を、日本芸術院会員は「年金辞退」を、文化功労者や文化賞などに「叙勲の返上」などを迫るのは、当然のことではないか。

日展審査で「不正発覚」と朝日スクープ 美術関係者「あ~あ、そこは秘密ってコトだったのに」
http://www.j-cast.com/2013/10/30187698.html

日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5科のうち、書科の石に字を刻む篆刻(てんこく)部門で、会派別入選数の配分表と手紙という具体的な証拠を朝日新聞は入手したわけだが、ことはもちろん書道界だけにとどまらず、日本の美術界全体に及ぶと読める。

芸能人の趣味の絵が入選や受賞する二科展以上に、日展のコンテストとしての権威はとうに失われていたようだが、組織的な不正審査だけでなく、新聞マスコミを含む構造的な腐敗を支える集金システムにまで、はたして追及は及ぶだろうか。



亡くなった父は、仕事を辞めた後、70歳を過ぎてから書道をはじめた。「新聞の公募展に入選した」と嬉しげに紙面を見せられたことがある。「将来は自宅でささやかな書道塾でも開ければというのが、今のところの夢だな」と父は語った。

塞ぎがちだった父の明るい様子を喜んだが、素人目からみても、父の書はとても巧いとは思えず、他の入選作にも感心しなかった。地方面とはいえ、一頁全面を埋め尽くしていた講評付きの入選作発表の紙面は、書道団体の買い切り広告に思えたが、それは黙っていた。

「たいしたもんじゃないか」と母に水を向けると、「そうだね、お父さんにそんな才能があったなんてね」と笑顔を浮かべた。それに照れるように、父が「でもな、けっこう金がかかるんだよ」と苦笑いしながらつけくわえた。母はうつむいていた。

父の机には、高価そうな書道の本が何冊も並び、高価そうな筆が何本も掛かっていた。父も母も気づいていたし、知っていたのだと今になって思う。老後の暇つぶしに趣味を持ち、日々の楽しみを見つけることはよいことだ、という通念に振り回されていることを。

TVドラマを視て、個性的な俳優や演技に接すると、「一風変わった芸風だな」というのが癖だった父。「一風変わった」が気の利いた言い回しだと思っていた、文化芸術にほとんど興味関心がなかったはずの父にとって、書道はひとつの投資だったのだろうと思う。

株式や債券などの金融商品と同様に、家元制度も投資とリターンで成り立つ。違いがあるとすれば、金融商品の場合、企業や市場など投資情報について透明性が担保されているはずだが、家元制度にそれはない。あくまでも民間の愛好者が集うものだからだ。

リターンについても、家元制度では金銭ばかりではなく、名誉や褒章という「人生の夢」に重きが置かれるところが異なるだろう。投資対象とリターンのいずれもが不透明だが、文化芸術に価値を見出す者には十分な価値を持つ。その限りでは、家元制度に何の問題もない。

問題は、日本芸術院や文化功労者、文化勲章など、国の文化行政が、家元制度の劣化コピーの頂点を形成していることだろう。民間の権威であるべき家元が、国と公共を背景として組織的に老人たちを囲い込み、その老後の蓄えを吸い上げる仕組みを作っていることだ。

権威も金も二重取りとは業つくだし、不正審査で応募者を裏切ってきたなら、せめて「家元」たちは、国民の税金が原資である年金や報酬、また勲章などは返上すべきではないか。欲が深すぎるというものだろう。私の父からだけでも、50万円以上はせしめているのだから、

追記:父の書道も数年は私の年賀状の宛名書きに役立ったが、その父もやがて「筆まめ」を使うようになった。

(敬称略)

今宵はカッチーニのアベ・マリア

2013-10-27 23:17:00 | 音楽
歌詞が覚えやすい歌はいいですね。今度、カラオケで歌ってみるかな。

いちばん、再生回数の多い Andrea Bocelli の Ave Maria 。


いちばん、この曲を有名にしたカウンター・テナー Slava の。


いちばん、不明だったの。


いちばん、意表をつかれたの。


(敬称略)



形三題

2013-10-25 19:08:00 | ノンジャンル
最初のは、かたと読みます。

第21回世界空手道選手権大会、女子個人「形の部」優勝


2012年の11月、ところはフランスはパリ。世界最高の形を見せた宇佐美里香さんは、鳥取県教育委員会に勤務だそうです。ちょっと鳥取へ行ってきます。

カンナム・スタイル」以来の大ヒット動画、1億5000万回以上再生されているそうです。さて、はどこに?

Ylvis(イルヴィス) - The Fox(ザ・フォックス)


英語には動物の鳴き声の擬音語だけでなく、擬音語を縮めた単語(形)にして表現したり、鳴き声を表す別の単語(形)もあるようですね。知らなかった。曲もいいです。

故ダイアナ妃には、何の関心も興味もなかったのですが、彼女が「狐狩り」に反対したことは快哉しました。たった一匹の狐を、何十頭もの猟犬と、猟銃を持った何十人もの紳士貴顕が、馬を駆って追いつめる残酷きわまる「ゲーム」に、かねてから怒りを覚えていました。狐に同情したというより、かつて狐は人間だったのだろう、と容易に推測できたからです。

彼らが交わす抱擁や接吻や握手などのは、この緊張からはじまっているのですね。

違和感ありまくりの親密ポーズ
http://japan.digitaldj-network.com/articles/20117.html


いわゆる「ピース写真」とは反対のユニークな試みです。日本でなら、ほんとうに親密な二人でも、これくらいぎこちなくなりそうです。親密圏という考えかたに、カメラマンは触発されたのかもしれません。

ローマ以来市民は奴隷を必要とする

2013-10-23 22:14:00 | 経済
シリアの空爆がとりあえず避けられ、イランが国際社会へ復帰しそうなわけで、おかげでエジプトのクーデターと反政府市民の衝突がどうなったか、とんとニュースが入ってこない。それはともかく、エジプトが中東だということに、いまだに合点がいかない。

「犬の散歩に袋」「召使雇わない」…中東が日本の美徳に注目
http://news.livedoor.com/article/detail/8180047/

「日本人はイヌの散歩の際、糞(ふん)を片付けるための袋を持ち歩く」「日本は世界で最も裕福な国の一つなのに、(大部分の)国民は召し使いを雇っていない」
貧富の差が大きいエジプトでは、高収入の家庭で使用人を雇うのは一般的で、ペットの世話なども他人任せにすることが多い。


これを読んでいたら、『損を承知で正論申す』(石堂淑朗 PHP研究所)の一文を思い出した。この本は、1989~1990年に月刊中央公論に連載したエッセイをまとめたものだが、そのなかに、「イスラム雑感」というエジプト訪問記がある。

カルナック大神殿のルクソールからアブシンベル神殿のヌビアまで、古代の神殿史跡を巡る紀行文を書いた旅の思い出である。石堂は、アブシンベル神殿を訪ねたとき、ちょっとした衝撃を受ける。


アブシンベル神殿。エジプト観光客は激減しているそうです。

「バクシーシュ(喜捨)とたかり・乞食のように押し売りしてくる禿鷹を思わせるエジプト人たち」の姿が消え、「物売りをしていても、ただにこにこしているだけで、絶対に近寄ってこない、黒塗りのお地蔵さんさながらのヌビア人」たちに出会ったからだ。「あまりの変わりようにガイドブックを読み直すと、何のことはない、国が変わっていたのである」。アブシンベル神殿のあるヌビア一帯は、スーダンにまたがるアフリカだった。

同じエジプト人とはとうてい思えない。私は温厚なヌビア人と接しながら、エジプト人達は他ならぬその昔、アフリカ原住民を奴隷としてアメリカに売り飛ばすのに大きな役割をした悪辣なアラブ商人であったことを思い出した。天が下に新しきことなし、奴隷なきいまエジプト人達はヌビア人を低賃金で奴隷のようにこき使っているのである。あちこちのホテルに泊まったが、メイドその他の下働きは例外なしに黒いヌビア人が多かったのである(同書 227p)

20年以上も前に書かれたエッセイだが、いまもあまり変わりないのではないかと思わせるニュースが出た。

奴隷を持つ恥ずべき国のリストに、インド、中国、パキスタン、ナイジェリア
http://edition.cnn.com/2013/10/17/world/global-slavery-index/index.html?hpt=hp_c2

調査によれば、インド1400万人、中国290万人、パキスタンには210万人の奴隷がいて、その他、ナイジェリア、エチオピア、ロシア、タイ、コンゴ民主共和国、ミャンマー、バングラデシュが奴隷が多い国の上位10か国だそうだ。

"We're not talking about bad choices, we're not talking about crummy jobs in a sweatshop. We're talking about real life slavery -- you can't walk away, you're controlled through violence, you're treated like property."

グーグル翻訳を意訳
"我々は、悪い選択肢について話していない、我々は搾取された悲惨な労働について話をしていない、我々は現実の奴隷制の話をしている。あなたは(彼らを)拘束している、あなたは暴力を介して制御している、あなたが扱かう資産のように。"

メイド喫茶が話題になるほどメイドさえ珍しい日本だから、奴隷なんて関係ないと思っていたが、ついこの間まで奴隷のような日本人がいたそうだ。これには驚いた。

封印された日本のタブー 人権を無視した某集落の奇習「おじろく・おばさ」
http://n-knuckles.com/discover/folklore/news000589.html

奴隷の条件や環境はさまざまに違いがあるが、奴隷が奴隷であることを、主体的といえるほどに受け入れたとき、奴隷は完全な奴隷といえる、という誰かの言葉を思い出した。

「エジプト市民」はメイドを使わない日本人に驚いているようだが、竹中平蔵率いる「産業競争力会議」は、移民受け入れに積極的なので、いずれ日本にもフィリッピン人メイドが普及するかもしれない。

田原総一朗×竹中平蔵対談【下】「移民の受け入れなどタブーなき議論をすれば人口減少下でも経済成長は達成できる」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36315?page=4

竹中: ただ、毎年毎年、2030年を過ぎると日本の人口って100万人強減ってくるんですよ。そうすると、たとえば私の学生、とくに女子学生なんかに「いちばん欲しいものは何か」と聞くと、ほとんどの人がメイドさんだって言いますね。だって自分が働くには必要ですから。

竹中平蔵主査の「産業競争力会議」が政府に提出したレポートのタイトルが、「立地競争力の強化に向けて」ですからね。日本の国土や環境や社会を、企業や工場や店舗の立地対象と同様に考えているわけです。すると、たしかに、海外のビジネスエリートやセレブを東京に集めるためには、安く働いてくれるメイドや下働きが必要ですよね。もちろん、メイドは奴隷じゃありません。しかし、階層社会はメイドを必要とし、メイドはメイドを生み、やがてメイド以下をも必要とするのです。

(敬称略)

ミミズオケラアメンボだって

2013-10-21 05:11:00 | ノンジャンル
3.11大震災の各地の避難所で、ラジオから聴こえてきた「アンパンマンマーチ」に、子どもたちが合唱したという佳話があった。

故・やなせ氏に無報酬で仕事依頼していた自治体も……吉田戦車が痛烈批判 「恥じろ」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131018-00000018-rbb-ent

「無料で描いてくれるそうだ」と聞きつけて、「公共の目的ですから」と頼んだんだろうな。担当者だけでなく、市長町長をはじめ、企画を閲覧した何十人もの職員が、延べ数千人の役人の誰一人も、「無料奉仕」に疑問を抱かなかったわけだ。

クールジャパンがじつはクールではないのは、とてもカッコワルイ人たちが集まっているからなんだろうね。役人たちも、「子育て」というボランティア経験があるはずなのに、「愛」と「敬意」が欠片もないよなあ。

吉田戦車が読んで憤慨したという対談がこれ。

箱入りじいさんの94年
http://www.1101.com/yanase_takashi/2013-08-09.html

やなせ これも、考えてみると、
自分がそれを望んだわけだから、
いいんじゃないかっていうことなんだけど、
いまだに続いててね。
ぼくはいま、全国で御当地キャラクターをつくる
仕事をやっていて、高知県だけで
もう50を超えてるんですよ。
全国のものを入れると
200ぐらいあるんだよね。
これが、全部、タダ。あっはっは。
ただね、2つぐらいはお金をくれたんだよね


糸井 どういう2つなんですか。

やなせ 役人が4人来たんですよ。
キャラクターを、やなせさん、作って下さいと。
「ああ、キャラクター作るんですか。はい、わかりました」
「ところで、予算がないので、原稿料はタダです」
「えっ、タダですか。私もね、これは仕事でやってるんで、
 いくらかはもらわないと」
って言ったらですね、4人で相談してるの。


糸井 あらら。

やなせ 「相談した結果、みんなで相談して、いくらあげます」。
それじゃしょうがねえと思ったんだけど、
やったんです。
それでキャラクターが好評だからって、
着ぐるみつくる予算は出るのにね。
そういうのはパッと払うのに、
俺はタダって言われるのは何でなんだ、
よくわからない。


糸井 何でなんでしょうかね。

やなせ でも、俺は巨匠にならないと決めたんだから、
これでいいのかなと思って。


この対談ではじめて、やなせたかしが『詩とメルヘン』の編集長だったことや「手のひらを太陽に」の作詞者だったのを知った。『詩とメルヘン』はときどき立ち読みしていたし、「手のひらを太陽に」は、学生時代の持ち歌だった。

ひじょうに右翼的だった左翼の先輩たちが宴会で歌う「昭和維新の歌」や「蒙古放浪歌」に対抗して、俺は「手のひらを太陽に」を歌った。「幼児絵描き」のやなせたかしとは接点がないと思い込んでいたが、無縁ではなかったようだ、合掌。

手のひらを太陽に


(敬称略)