コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

買ったけどまだ読んでいない本々

2009-10-26 00:39:00 | ブックオフ本
先日の「いずれちゃんと感想したい本々」は読了した本や途中まで読んでいるものだが、こちらはほとんど未読。いつになったら読めるかな。

『禁煙ファシズムと戦う 』(ベスト新書 小谷野 敦、斎藤 貴男、栗原 裕一郎 )

もちろん、ブリンクマン指数数千の私はこの人たちと一味同心する。が、「タバコより害を為すものは他にもある」というのは弱い。「ファシズム」という言葉づかいにも違和感が拭えない。「言論の自由」が国家権力だけに対する言葉であるように、「ファシズム」ももっと厳密に使うべき。

「象の消滅」(村上 春樹 新潮社)

ニューヨークで出した短編集の収録順序や装丁そのまま出版したそうだ。あれで、顔が林家こぶ平(9代目正蔵)でなければなあ。

『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ 早川書房)

カズオ・イシグロの執事小説が原作のジェームズ・アイヴォリー監督の映画「日の名残り」はよかった。マドンナの前夫ガイ・リッチー監督の「ロックンローラ」(2008)に、チンピラがこの「日の名残り」をビデオレンタルで観ているシーンがあった。顔では、カズオ・イシグロは村上春樹に圧勝している。ま、たいていの人が林家こぶ平には圧勝できるものだが。

『この世でいちばん大事な「カネ」の話』 (西原 理恵子 よりみちパン!セ)

薄くて字が大きくて総ルビという子ども向けの本なので、これはすぐに読めた。西原理恵子は漫画家というより、やはり文筆家なのだと思った。小学校で株式投資ゲームや賢い消費者教育するより、「働いて金を稼ぐ」ことの自由と不自由を説いて、はるかに教育的指導に満ちている。

『本読みの虫干しー日本の近代文学再読』(関川夏央 岩波新書)

関川夏央と橋本治と高橋源一郎と荒川洋治と片岡義夫と小林信彦は、文体が独特なので癖になる。当代きっての文章家・関川夏央によれば、大正時代が現代の文化の起点だという。すぐに、「内面が書けていない」「人間が描かれていない」と批判する日本の近代文学観への反発。そりゃ近代じゃなく、たかだか大正期にはじまった流行だそうだ。なるほど。

(敬称略)


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顔を見れば、天下りだな

2009-10-25 23:04:00 | ノンジャンル



先日、斎藤次郎元大蔵省事務次官の日本郵政社長就任について、しかつめらしく書いてはみたが、かんじんなことを書き忘れていた。上の写真は、大蔵省事務次官だったときのもので、下が就任記者会見の写真である。

さっそく床屋へ行って毛染めしてきましたというヅラのような頭。よほど嬉しかったのか、頬がゆるみっぱなし。「小沢派」として自民党から15年以上干されてきただろうから無理もないが、同じ老人でも、眼光鋭かった西川前社長に比べるまでもなく、とても、「十年に一人の大物次官」「カミソリ次郎」といわれた面影はない。もう、そうたいしたことはできないかもしれないなと思う。それが鳩山政権にとって、吉と出るか凶と出るかは、それはまた別のお話ということで。

(敬称略)


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いずれちゃんと感想したい本々

2009-10-22 23:18:00 | ブックオフ本
『愚か者ほど出世する』(ピーノ・アプリーレ 中公文庫)

日本一のバカ通として著名な養老孟司が序文を書いているので買ってみた。
著者はイタリア人ジャーナリスト。近代動物行動学の大家(おおやと呼んでもおよそ意味は変わらない)であるコンラート・ローレンツ教授と出会ったことから、「どうして世の中バカばかりなのか」という疑問を深めていく。

『ミラノ 霧の風景』(須賀 敦子 白水ブックス)

絶賛されるほどの文芸なのか、かねてから疑問だった須賀敦子。当方に鑑識眼が不足しているのか、ただ相性が悪いのか。代表作らしいので結果が楽しみ。

『「文明論の概略」を読む 上』(丸山 真男 岩波新書)

『回想のビュイック8』(スティーヴン・キング 新潮文庫)



『夕暮れを過ぎて』(スティーヴン・キング 文春文庫)

この最新短編集も、キング・オブ・ホラーという称号がもはやそぐわない、ノンジャンルの佳篇ばかり。地下室に設置したエアロバイクにまたがり、幻想の道路を走り続けるメタボ男(「エアロバイク」)。911のWTCから生き延びた男が、次々に部屋に現れ、捨てても戻ってくる品々に悩まされる(「彼らが残したもの」)。高校を卒業した日の午後、ニューヨークに憧れる美しい娘が見た未来とは(「卒業の午後」)。

(敬称略)
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斎藤次郎

2009-10-21 10:33:00 | ノンジャンル


驚いた。昨日、日本郵政の西川善文社長の辞任記者会見が開かれ、西川社長の唇を震わせた表情が映されたが、今朝の臨時ニュースでは斎藤次郎元大蔵省事務次官が後任に決まったという。

驚いたの1
13日に亀井郵政改革・金融相が西川社長に会見を申し入れて引導を渡し、28日の取締役会を待たずに20日に辞任記者会見を開かされた。この間、わずか一週間。辞任は既定路線なのだから、28日の取締役会で辞任が認められてから、記者会見を開いてもよかったはず。

「開かされた」この記者会見において、「郵政見直しに関する鳩山内閣の基本方針を通告した(亀井)」に対し、「(基本方針は)これまでやってきたこと、これからやろうとするものに大きな隔たりがあった(西川)」と語られた。つまり、西川社長が「自分の能力をはるかに超えるものだったが」と皮肉を込めたように、民主党政府の「基本方針」に最後まで対立・抵抗した「敗戦の弁」であった。

いかに前政権の政策とはいえ、国策会社の改革のため三顧の礼で迎えた民間企業トップに対し、実質的に「更迭」したことを見せつける目的の記者会見だった。礼を失している以上の非情さである。

驚いたの2
斎藤次郎元大蔵省事務次官といえば、細川政権のときに、小沢一郎と組んで7%の「福祉目的税」導入を図り、結果的に細川政権を瓦解させた張本人である。

その後も、小沢一郎の政策ブレーンを努めてきたことに不思議はないが、日本郵政の後任社長として表舞台に出てくるとは意外だった。とうに東京金融取引所に天下った「過去の人」の敗者復活戦である。次官時代に「カミソリ」と畏怖された斎藤次郎は、いまも財務省に強力な影響力を持つといわれるが、表舞台に出て役職を得た場合の影響力の行使とでは雲泥の差がある。

驚いたの3
政策は鳩山内閣、党務と選挙は小沢の棲み分け政権といわれてきたが、とんでもなく的はずれであることがこれではっきりした。連立政権の主軸はやはり小沢であり、郵政改革や金融政策も小沢主導で進められると考えて間違いないだろう。亀井金融相が提唱するモラトリアムの実現可能性がいちだんと高まっただけでなく、かつて挫折した「福祉目的税」導入が再浮上するかもしれない。

政治主導といいながら、元大蔵官僚の藤井裕久財務大臣に、今度は元大蔵省事務次官の斎藤次郎とくれば、結局、旧大蔵省=財務省主導ではないかといわれるだろう。が、財務省は一枚岩ではないはず。自民党政権やアメリカ共和党政権と近かった財務省トップは急速にその省内の求心力を失っているだろうし、「天下り禁止」によってOBとしての影響力も減殺されるだろう。「小沢支配の財務省主導」が見えてきたといえば穿ちすぎだろうか。

西川のような、「水に落ちた犬」を打つだけでなく、犬のいる場所そのものを水没させようというつもりにも思える。西川辞任記者会見を見ながら、変ないいかたになるが、「世界基準」の徹底した政敵の追い落としがはじまる気がした。

自民党の政争は、相手を殺すまではしなかった。将棋のように、負けた者を自分の手駒にして活かした。小沢はチェスをやっている。殺して盤外に置く。もちろん、「反小沢」がこのまま黙っているはずもなく、反撃も開始されるだろうが、その旗を誰が担うのか。自民党からではなく、意外な人物が出てくるだろうな。

「政権交代って、ホントにおもしろいですねえ」(@水野晴夫)
「おもしろくっても、大丈夫」といったのは誰だったっけ。

(敬称略)


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クローズZERO

2009-10-17 01:15:00 | レンタルDVD映画


かつて、石井輝男という、それはおもしろい映画をつくる監督がいました。現代の石井輝男は、三池崇史です。荒唐無稽が裸足で逃げ出す映画を次々につくっております。こういう作品や監督は、コンテンツ産業の活性化のために映画振興助成金とか、映画スクールやシナリオ賞の創設とか、そういう優等生のマーケティング会議からはけっして生まれず、試写会には足を運ばない映画ファンたちに、映画館の座席から手を打って賞賛されるものです。

小栗旬もいいが、やはり、「チンピラの拳」を演じたやべきょうすけが圧倒的。やべと山田孝之がプロの俳優らしく、古臭い型にはまった役作りをしたおかげで、演技には素人に等しい不良高校生役たちがより新鮮に見えた。

挿入歌を歌っているTHE STREET BEATSがまた結構。歌詞は陳腐だが、リードボーカルが味のある声とよい面構えとをしている。

(敬称略)

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