コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

いま万城目学がグレートである

2011-06-23 02:34:00 | 新刊本


読了。期待を裏切らぬ上質のリーダビリティ。『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』に続き、この最新作『偉大なるしゅららぼん』も、傑作といってよいおもしろさ。これは尋常なことではない。

なぜ、万城目学はおもしろいのか。いま考え中。これまで読んだどの小説や作家とも似ていない。共通点が見当たらない。上等な映画を観た後に、ストーリーや画面ではなく、俳優が、その役柄が強く印象に残るように、万城目小説ではその登場人物が際立っている。

といっても、登場人物に共感できる、感情移入する、というのではない。「いるいる」「そうそう」「こんな人知ってる」とは逆に、身近にはとてもいそうもない人物ばかり。

ヘタレの王道・日出涼介はともかく、ナチュラルボーン殿様・日出淡十郎、トール&ハンサムリア充・棗広海、グラマーというよりフィジカル絵画女子・速瀬、白馬に跨るグレート清コングこと・日出清子、いつも城内を忙しげなパタパタ走者・パタ子さん、渡し舟からクルーザーまで運転する源爺。

なかでも秀逸なのは、日出家の次の当主にして、誂えの赤い学生服を着て通学するデブの淡十郎であることは誰でも肯くだろう。かつての岩走城に源爺や料理人など大勢の使用人にかしづかれて暮らす「殿様」として、底知れぬ度量を秘めながら、恋をしたパンダのような愛らしい一面を晒らけ出す。

万城目小説はいつも女優陣が魅力的だ。背高く肩幅広い立派な体格なのに、聴きとり難いほど声が小さく、しかしてきぱきとした物言いで、絵の才能もある速瀬。傲岸不遜にして口調辛辣な日本最強のひきこもり清子。いつも呑気な天然師匠の濤子ことパタ子さん。こんな女性がいたら、どれほど世界が笑顔で満たされるかと、あたかも天女や観音様の眼福に与れるかのようだ。

それにひきかえ、涼介のライバルにして、絵に描いたようなモテ男の棗広海の存在感が薄く、物足りない。終盤にさしかかっても、これといった活躍もなくあきらめかけていると、これが南斗聖拳! 颯爽と白馬の騎士となって琵琶湖を駆け抜け、煙のごとく忽然と姿を消したかに見えて実は、という大逆転には、「しゅららぼん」の謎解きとともに、唸らされた。

もう、残頁が5mmくらい、もうすぐ終わりかなと、「サザエさん症候群」みたいな寂寥感が降りてきてから、急展開するのだ。日出涼介は「しゅららぼん」を野球の投球に擬するが、バッターボックス手前から加速して、グンとホップしてくる感じ。たいていはのけぞって見送りだろう。最後の3行の見事さ。

先日、人がくれた週刊文春(6/23号)をめくっていたら、万城目学の連載小説「とっぴんぱらりの風太郎」の第1回が掲載されていた。初の時代小説のせいか、リーダビリティは前4作に比べ、少しもたつく気がする。しかし、また違った万城目小説を読ませてくれるのかもしれない。そのときは、「同時代に巡り会えた幸福」という最大級の賛辞を捧げたい。

(敬称略)


がんばれ日本! という恥知らず

2011-06-22 01:37:00 | 3・11大震災



ちょうどゴルバチョフからエリツィンに代わる寸前、ソ連時代のシベリアの冬を旅したことがある。経済が崩壊したおかげで、「ソ連人」たちは飢餓線上にあると日本では憂慮されていたが、貧しく飢えているはずの彼らは、一様に太っていて血色がよかった。ある朝、泊まったイルクーツクのホテルから散歩しようと外に出たら、貧しい身なりのアジア人の男達が身体を寄せ合うように固まっているのを目撃した。15,6人はいただろうか。通訳氏に、「あの人たちは?」と尋ねると、「ベトナム人だ」という。いま北朝鮮は外貨を稼ぐために、シベリアに森林伐採労働者を輸出しているそうだが、アメリカの経済制裁が解けていなかった当時のベトナムも、ソ連に労働者を輸出して出稼ぎさせていた。通訳氏の話によると、ソ連人が嫌がる最低の仕事をするのがベトナム人労働者だそうで、たぶん、ホテルの配水管や下水の掃除をするそうだ。作業が命ぜられるまで、零下の屋外で足踏みしながら待ち続ける様子に、「どうして、中に入れないのか?」と通訳氏に聞くと、首をすくめてみせた。いったい、この人たちは、健康診断を受けているのだろうか? 社会保険には加入しているのだろうか? 労災が受けられるような会社なのだろうか? なにより、きちんとした給与が支払われているのだろうか?

福島第1原発:作業員30人特定できず…被ばく線量検査
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110621k0000m040069000c.html

制服向上委員会が危ない

2011-06-19 23:44:00 | 3・11大震災
言葉の綾掲示板で、「夜半の嵐」のkaraさんから教えてもらいました。ありがとう。

「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」を歌う制服向上委員会のオフィシャルサイトが強いです。たぶん、新聞やTVの芸能ニュースは黙殺するでしょうが、以前に紹介した「城南信金の脱原発宣言」と並ぶ、勇気ある呼びかけにして、明晰な文言ではないかと思います。3月11日からこっち、ろくなことを見聞きしなかったけれど、意外なところから、「自由な言論」(言論の自由に非ず、為念)の風が吹いたのは、数少ない快事でした。

原発さえなければ! みんなが楽しく生活出来て
いたのに……
原発があるから原発事故が起きた!この事実以外に
何が必要なんだろう。
莫大な被害と迷惑を掛けても、まだ嘘を言い、真実を
伝えない政治家と東電とその息のかかった評論家と
TV局。頼れるのは友達と友達と知人の知人とその友
達だけ。だからみんなで大きな声で叫ぼう!

ダッ!ダッ!脱・原発!





異邦人

2011-06-18 20:25:00 | 音楽
梅雨どきの夜には、ひとつ昔の歌でも聴きながら、虹色の思い出に浸ろうと眼を閉じる。「ちーっ」というあの音は何だろうと眼を開けると、ピアノの譜面台に向けて猫が尻尾を上げている。「ティッシュ、ティッシュ、ペーパータオル、ペーパータオル!」

久保田早紀


中森明菜


なぜ、「異邦人」なのか、中森明菜なのかといえば、編曲の萩田光雄つながりですね。80年代を代表する久保田早紀の名曲ですが、地味なフォークソングを「シルクロードのテーマ」にした名アレンジャー・萩田光雄の代表作でもあります。中森明菜の歌から萩田光雄を知ったのですが、次の人も「萩田光雄」がいてほしいものですね。

森 恵




江東区民でもある

2011-06-13 01:58:00 | 3・11大震災


最近、一等おもしろいTV番組は、NHK「サラリーマンneo」であります。毎週火曜日10:55~11:25だが、毎週日曜日0:30~1:00に再放送。

今夜は、博多の食品メーカー「よかばい商事」のでたらめな売り込み(ほんと、博多の男はあげんとです。俺のルーツの片方なので)と「男はアヒル口に弱い」(美人女優の麻生祐未さんのアヒル口の真似が、これが)に、ゲハゲハしたばかり。動画もたんとUPされてます。

「東電の不作為は犯罪的」IAEA元事務次長一問一答
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110611/erp11061120230007-n1.htm

「東電は巨大で、すべてを知っていると思い込んでいた。神様のように尊大に振舞った。東電が原子力安全規制当局に提出していた資料には不正が加えられていた。これは東電が招いた事故だ」

カトリックとプロテスタントが80%近くを占めるスイス人が、「神のように尊大に振る舞い」と不遜をなじり、北朝鮮を核査察した機関の幹部が、「その不作為は犯罪的」とまで難詰するのですから、最大級ですね。この元事務次長さん、少しヒトラーに似てます。

東京都内各地の空中放射線量測定結果 資料③(日本共産党東京都議会議員団)
http://www.jcptogidan.gr.jp/html/menu5/2011/20110525195904_3.pdf

東電の「犯罪的な不作為」による水素爆発によって、東京東部は限度線量を超えると予測する日本共産党都議団のグッジョブです。足立区・葛飾区・江東区・江戸川区の東京東部と練馬区は、年間1ミリシーベルトの限度線量を超えると予測されていますから、本来なら5区300万区民は避難すべきところです。

ここ埼玉県所沢市のスーパーでは、九州産の野菜が売場を席巻していたが、最近では東京の大手スーパーに買い占められたらしく、茨城や千葉産が増えてきました。もちろん、九州産よりかなり安い。