「マネーショート」
サブプライムローンの破綻からリーマンブラザース倒産に至るアメリカの金融危機をいち早く予見して、「売り」を仕掛けたヘッジ・ファンドや銀行マンを追った実録映画。クリスチャン・ベイル、スティーブン・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットなど名優たちがアメリカの経済犯罪を徹底的に暴いている。ヘッジ・ファンドはPCに向かって刻々と変わる経済情報を眺めているだけかと思っていたら、住宅バブルを調べるために現地に飛び(アメリカは広いから、本当に航空機で飛ぶ)、足を使って一軒一軒ノックして歩き、不動産業者をインタビューして回る、ほとんどジャーナリストの仕事もするとわかった。一方、WSJの記者は、「裏付けの取れない話は書けない。女房子どもがいるんだ」と業界紙記者に成り下がって、逃げ口上を述べるところは日本と同じ。「ウォール街占拠」デモがなぜ起きたのか? 反ウォール街を標榜するトランプがなぜ人気を集めるのか? かなりわかった気がする。高度なデリバティブ商品はサブプライムローンの焼き直しだというナレーションが恐ろしい。
「カットバンク」
ウォール街を舞台にした「マネーショート」とは対照的なアメリカで「一番寒い」田舎町が舞台(ただし季節は夏)。ブルース・ダーン、ビリー・ボブ・ソーントン、ジョン・マルコビッチというこちらは名優と怪優の嬉しい顔合わせ。老郵便配達夫が射殺されるという町ではじめての殺人事件が起きて・・・。偏屈な人々の奇怪な人間模様が徐々に明らかになって、と思いきや、思わぬ方向に転がりだした連続殺人から、かえって田舎の人々の善良さや健全さが身に染みてくる。こういう田舎の人たちはヒラリー・クリントンには投票せず、やはりトランプに入れるのだろう。
挿入歌の Ain't No Mountain High Enough 。マービン・ゲイやダイアナ・ロスのヒット曲ですが、これはジェニファー・ローレンス(17歳)やクロエ・グレース・モレッツ(10歳)が映画「早熟のアイオワ」のなかで歌っています。
(敬称略)