コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

ご本といえばりゅうかくさん

2019-11-27 06:07:00 | ノンジャンル
私はノンフィクションが読めなくなりました。小説のほうが読みたいですね。先日、古本屋でイギリスの樋口一葉といわれるJane Austenの”Pride and Prejudice”を入手しました。Penguin English Libraryの一冊です。

It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune, must be in want of a wife.

という冒頭の一文にコケました。ペンギンライブラリの世界の文学100選の一冊の出だしが、落語の枕みたいですからね。「腕はよいし正直者だから先輩やお得意にも可愛がられて、あとは嫁を貰うだけだあな」(紺屋高尾)を思い出したのは私だけではないはず。

しかし、イギリスの女性作家が書いているのですから、そんな呑気な「親方」見解なはずはなく、「幸運に恵まれた男」が嫁取りをめぐって、きっと「不幸のズンドコ」(藤純子)に落ちるのでしょう。私が読んだことがあるルース・レンデルとかパトリシア・ハイスミス、P・D・ジェイムズなんて女性作家は、そりゃあ意地の悪い展開でしたからね。

思い直してまたパラパラ眺めています。ま、私の英語力では読了するまで5年くらいかかりそうですが。翻訳を読めば? いえいえ、本との出会いとはそういうもんじゃありません。

いまそこにあり、手に取った本を読むべきなのです。沢木耕太郎の『深夜特急』でも、アジアかどこかの安宿に残された、山本周五郎の『さぶ』を読み耽ったという話があるでしょう?「出会いは億千万の胸騒ぎい」(売野雅勇)という歌もあります。

そうそう、ノンフィクションを読んでいるという話でしたね。ご参考までに以下を。ノンフィクションに名作という小説や映画のような定冠詞を置くのも変ですが、誰が読んでも「巻置くに能わず」の10冊でしょう。私も開高健の以外は読んでいます。どれもあまり覚えていないけれど。三浦英之という人は、朝日新聞から久々に登場した有望な若手記者だそうです。これもご参考までに。

三浦英之さんのベスト10冊
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68426?page=3

とはいえ、竹中労や斎藤龍鳳、笠原和夫などが入る極私的ベスト10には、上記は一冊も入っていません。最近のは読んでいないなあ。

ノンフィクションの醍醐味は、「事実は小説より奇なり」にありますが、いまなら、大澤昇平東大准教授の「ヘイト発言」をめぐる「有識者」バトルが「奇なりニッポン」をよく露出させてケッサクです。

大澤昇平のAI企業トップをかさに着た「子ども屁理屈」や伊東乾の「東大教養部で学んでいれば」謝罪や荻上チキの「学歴ロンダリングといわれて」独白、明戸隆浩のドヤ顔まとめなど、臨場感豊かにしてトピック満載、クリック置くに能わずです。

もちろん、かつてのハンガリーやポーランド、チェコ、天安門の「反乱」を思わせる香港情勢が現下最大のノンフィクションであることはいうまでもありません。

これにくらべれば、ジーソミアをめぐる軋轢なんぞ、日韓いずれの政府にとっても国内受けを狙った「茶番」に過ぎません。本番があるとすれば、ジーソミア攻防を「茶番」と暴くノンフィクションが韓国から出てくるときでしょう。

あるいは、90年代に大統領選を優位に運ぶため、国民の愛国心を煽る目的で、北朝鮮に金を払って挑発させた大スキャンダルを映画化していますから、そう遠くない将来、安倍首相や菅官房長官が登場する韓国娯楽大作がつくられるかもしれません。



(止め)
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使えないau ひかりTV のおかげで

2019-11-15 22:47:00 | 音楽
最近はYoutubeの音楽動画をパソコンのモニターではなく、32インチTV画面で観ています。au ひかりTV では、地上波デジタルは見られず、番組の多くはスポーツ中継やいまどきの音楽番組、古くて画質の劣るTVドラマで占められ、まず食指が動きません。

以前の集合住宅では定時のNHKニュースをメインに、JCOMの24時間ニュース番組を流しっぱなしにしていたのだが、au ひかりTV のニュース番組といえば、日経とBBCだけ。

日経はアメリカの経済ニュース番組を字幕や同時通訳なしで丸投げ、BBCはブレクジット関連の議会報道か最近ではトルコを中心に中東情勢ばかり。

パソコンを介さずにYoutubeは観られるので、日本のニュースやエンタメを検索して探すほかないのだが、これまでにないメリットがありました。

クラシックのコンサート動画やジャズやポップスのLive動画を高画質で選べば、大画面の圧倒的な迫力に酔えるだけでなく、子細な臨場感を味わえるです。

オーケストラの指揮者の独特の動きだけでなく、ピアノソロの指の運びから、バイオリン列の弓の上げ下げが揃うところ、譜面を見つめるティンパニーの真剣な眼差しやオーボエの口許まで、見入るようになります。

それよりなにより、音楽を楽しみ、感動している老若男女の観客それぞれの様子が、手に取るようにわかるのが嬉しい。

で、今回は観客のバリエーションが豊かなジャンルとして、非アメリカのジャズのLive動画を選びました。ま、ジャズ自体、アメリカ文化や黒人音楽というルーツを意識されず、グローバルな音楽スタイルとして世界中で演奏され、楽しまれているのですが。

いや、ロックなほうがはるかにグローバルな音楽ジャンルだろうという声が聞こえそうだが、ロックの観客は画一的でおもしろくありません。

さてと、まずは、名前どおりのピザジャズから。映画ゴッドファーザーの脇役に出ていそうな強面だが、若いころはにやけたハンサムでした。

I Got Rhythm - John Pizzarelli


ホワイトハウスに招かれてオバマ大統領夫妻の前で演奏しているのだから、当然、彼女はアメリカ人なのですが、エスペランザという名前や華奢なのに大きなウッドベースを弾きこなすところなど、非アメリカ的だなあと。

Esperanza Spalding - On The Sunny Side Of The Street


スペインの美少女トランぺッターとスペインのジャスファンたちです。ジャズメッセンジャーズの有名なナンバー「モーニン」です。

MOANIN´ - ANDREA MOTIS - 9/9 - TVE HD


もうね、アメリカ女の顔じゃありません。名前もまるで読めません。ググってみたら、トラインチェ・オースターハウスというそうです。オランダ人です。ダイアナ・クラールよりいいですね。

Trijntje Oosterhuis The look Of Love


追記:
えっ、おまえんちではTVアンテナはないのかって? アンテナは立っているのですが、ケーブルがショートしています。NTTフレッツのひかりTVなら、地上波もBSも視られるのに知らないのかって? 知っていますが、キャンペーンの都合上、au ひかりTVにしたのです。

(止め)
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適応力について

2019-11-09 22:42:00 | スポーツ
WBSS バンタム級決勝の井上尚弥 VS ノニト・ドネア戦を観た。翌日の試合を振り返った記者会見も視聴した。いずれも Youtube だった。いうまでもなく凄い試合だったのだが、記者会見にも釘づけになってしまった。

井上尚弥の窮地救った息子「初めて顔浮かんだ」会見
https://www.nikkansports.com/battle/news/201911080000403.html

所属ジムの大橋会長が語った「適応力」について、井上尚弥が語った内容に感嘆した。「適応力」とは何かということを考え直してしまった。

「早いラウンドに決着がつくと思った」と井上も大橋会長も出だしでは思ったそうだ。ドネアのパンチやスピードは「想定内」のものだったので、初戦のパヤノや準決勝でロドリゲスを下したときのように、2、3ラウンドでKOできると踏んだわけだ。ところが、

「2ラウンドに左フックをもらって目を切ったことで、すべて(の作戦・計画)が壊れてしまった。そこから12ラウンドまでずっと二重に見えて、ドネアが二人いるような状態が続いた」

目を切ってからはいつもの尚也ではなかった。得意の左ボディフックは一発も出せず、ほとんど無駄なパンチを出さないはずなのに、おおぶりのパンチが何度も空を切る。それでもドネアをぐらつかせたりしたが、コンパクトで鋭いドネアのカウンターを一発でも食らえば、とひやひやしたものだった。じっさい、痛打を食らってクリンチに逃れるという、これまでの輝かしいキャリアではあり得なかった光景も見られた。

二重に見えるという片目より悪い状態をドネアを含む相手陣営に隠し通すために、右目をしっかりグローブで覆うポーズに変えて、出血を気にして TKO を恐れているように思わせた。そんな舌を巻くような冷静な試合運びを裏づける言葉がこれだ。

「後に出血がひどくなり、完全に右目が見えなくなったことで、もうグローブで右目を隠す必要がなくなって返って楽になった」

つまり、受けたダメージを隠すという以上に、ダメージの所在を誤認させたのだ。

ドネアのパンチが見えないから、左しか応酬できないのを逆手にとって、左ジャブを多用してポイントを積み重ねるというマイナスをプラスに転じる作戦も同様だろう。

8,9ラウンドを捨てて終盤のラウンドに体力を温存して、ドネアを迎え撃つか勝負に出る。2ラウンドに右目を切ってから、そうした判定をも視野に入れたゲームプランをすぐさま立てて、ラウンドごとに着々と実行していく。

これが井上尚弥の「適応力」なのだ。比べて、我々の「適応力」ときたら、涙目をした負け犬の苦笑いではないか。ただ我慢して、堪えて、慣れるまで俯いているだけ。

いかにダメージを受けようとどれほど不利な条件があろうと、どうしたら相手の優位に立って戦い続けられるかを考えつつ、同時に一瞬一瞬を勝ちにいく。それが井上尚弥の「適応力」なのだ。ただただ具体的に何かを仕掛けていく、大きく小さく。

ジャーナリズムと我々が大好きな艱難辛苦の物語性など、そこにはない。井上尚弥は試合終了直後、セコンドのスタッフに、「楽しかったあ」と笑みを洩らしたそうだ。

いや、ひとつだけ。「ボディにくるかと思ったパンチが顔面に来た」とき、一回だけ、倒れそうになった。そのとき、「初めて息子の顔が浮かんだ」。おかげで、なんとか立ち直ることができたという。

「息子」については、ドネアが恥を忍んで井上にアリ・トロフィーを一夜借りたという佳話が伝えられている。


モハメッド・アリの名を冠したアリ・トロフィー

ドネア陣営 優勝トロフィー貸してくれた井上と大橋会長に感謝
https://www.tokyo-sports.co.jp/fight/boxing/1614813/

36歳と盛りを越えてさえこれほどなら、全盛期のドネアはどれほどのボクサーだったのか。たぶん、ボクシング史に残る名勝負となったのはドネアの奮闘のおかげですが、ドネアもまた、「残念だったけど、楽しかったな」と独りごちている気がします。

11月10日 追記

井上尚弥 眼窩底骨折だった 手術は回避「鼻も骨折していました。。」
https://news.livedoor.com/article/detail/17357624/

いやはやまったく!

(止め)





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