新井貴浩選手会会長
どのTV局のニュースでもトップニュース扱い。「プロ野球選手会の主張もわかるけれど、3連覇を期待していたファンの夢を壊さないでほしい」と締めていた。野球ファン以外にとっては、どうでもいいようなものだが、下を読んだ限りでは、WBC(ワールドベースボールクラッシック)の主張に妥当性があるように思う。
プロ野球選手会 WBC不参加表明
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120720/t10013729621000.html
WBC 日米双方が主張譲らず
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120720/k10013735871000.html
WBCには、世界にベースボールを普及させようという目的があり、プロ野球選手会にはそれがない。大リーガーが多数参加することにより、WBCが盛り上がり、スポンサーがつくのであって、日本の選手より貢献度ははるかに大きいという指摘も事実だろう。また、億万長者の大リーガーたちがケガした場合などに備える莫大な保険金の負担や、米日以外の参加国への資金援助などからも、収益の過半の配当を受ける必要があるという主張には肯けるものがある。
したがって、プロ野球選手会は金にばかりこだわらず、WBCに参加すべきだ、とは思わない。それ以前に、よくわからない点が多い。まず、WBCの矢面に立たされるのが、どうしてプロ野球選手会なのか。野球の世界的な普及という目的のために、WBCを開催して、参加選手に安全と安心を保障し、野球後進国に参加をうながすために資金援助をするというWBCの主張を吟味すべきなのは、日本プロ野球機構(NPB)ではないのかという疑問である。
WBCには運営会社があり、MLB(メジャーリーグ)の会長などが経営幹部が占めている。当然、日本側の交渉相手は、日本プロ野球機構を構成する球団幹部やオーナー企業のトップたちであるはずだ。プロ野球選手会に、WBCと直接交渉する権限や能力があるとは、とうてい思えない。プロ野球選手会がNPBに上げた主張がほとんど認められず、WBCの譲歩をほとんど引き出せなかったとすれば、その責任は上げて、WBCと交渉した日本プロ野球機構にあるはずだ。
かつて、選手の待遇改善を求めて、「ストライキも辞さず」と発言した古田敦也選手会会長に対して、読売巨人軍のドンである渡邉恒雄は、「たかが野球選手ずれが」と吐き捨てるようにいって、それこそプロ野球ファンが選手に托す「夢」をぶち壊しにしてくれたことがある。たしかに、最近発覚した、原巨人軍監督が選手時代に女性スキャンダルをネタに暴力団員に1億円を恐喝され、その仲介をしたのが現在はDeNA監督の中畑だったという週刊誌記事を読んだりすると、ナベツネの蔑視もわからなくはない。
その「たかが野球選手ずれ」に、WBCとNPBの合意を覆されたのか。あるいは、NPBがプロ野球選手会を抑えきれなかったのか。いずれにしろ、日本を代表する大手企業のトップたちが、アメリカのビジネスエリートたちに太刀打ちできず、「たかが野球選手ずれ」を矢面に立たせ、「ファンの夢を壊してはならない」ときれいごとを表にして、自分たちの失敗と力不足を隠しているように思えてならない。
最後に、プロ野球選手会とはどんな団体なのか。ウィキによれば、以下だそうだ。英称は、JPBPA(Japan Professional Baseball Players Association)
http://jpbpa.net/
「選手の待遇改善や地位向上など要求に基づいて団結し、団体交渉を行う」
労働組合日本プロ野球選手会と、「野球全体の発展を目的とする社会活動を行う」
社団法人日本プロ野球選手会の2団体を兼ねている。労組が金のことをいうのは当たり前であり、日本の社団法人にWBCをアメリカと共催するような視野を持てというほうがおかしい。
ついでに、日本プロ野球機構は、英称NPB(Nippon Professional Baseball Organization)
http://www.npb.or.jp/