お世話になった先輩N氏が28日夜亡くなる。61歳。合掌。4月に余命2か月の末期ガンと宣告されて3か月めに入っていた。会社関係や知友への連絡係をおおせつかる。150人ほどに電話とFAXする。故人の関係者はおおむね淡々と受け止めているに対し、奥さんの知友は率直に嘆き悲しむ反応が少なくなかった。もちろん、夫に先立たれた奥さんに同情してのことだが、「何か手伝うことは?」「何でも言ってください」と申し出るのも女性に多く、実務への切り換えが早いのに感心した。あるいは、感情と身体が同期しているのか。「はあ」「そうですか」と判断停止してしまう男に比べ、何か不思議な働きのような気がする。
あわて者の弁明
あわてて言っておきますが
北朝鮮へのいかなる軍事攻撃にも僕は反対です
あわてて言っておきますが
僕は北朝鮮に味方するわけではありません
あわてて言っておきますが
僕だって拉致問題には怒っています
あわてて言っておきますが
僕は反日でも反米でもありません
あわてて言っておきますが
北朝鮮とアメリカのどちらが戦争を仕掛ける可能性が高いかといえば、それは決まってると思います
あわてて言っておきますが
北朝鮮と米のどちらが嘘つきかといえば、それも決まっていると思います
あわてて言っておきますが
なぜ、あわてて言わねばならないのか、自分でもよくわかっていません
あわてて言っておきますが
ただ、日本の人々はもちろん、北朝鮮や韓国の人々が、戦争によって、死んだり傷ついたりして苦しむのは、止められるのではないかと思っているのです
あわてて言っておきますが
イラクやアフガニスタンの人々なら、戦争によって、死んだり傷ついたりして苦しむのは、かまわないと思っていたわけではありません
あわてて言っておきますが
僕が知らない国々の知らない人々なら、戦争によって、死んだり傷ついたりして苦しむのは、かまわないと思っているのではありません
あわてて言っておきますが
すべての戦争に反対すると僕がいえないのは、残念なことに僕の国である日本は、北朝鮮と戦争をする側に立っているからです
あわてて言っておきますが
北朝鮮が攻めてきたらどうするのか、という質問は、アメリカや韓国や日本が攻めてきたらどうするのか、と質問される北朝鮮の人の立場に立ってみると、答えは決まっているように思えます
あわてて言っておきますが
答えは決まっているでしょうか?
あわてて言っておきますが
だからといって、僕が何か具体的な行動を起こすというわけではありません
あわてて言っておきますが
ほんとうに口先だけのことなので、不快に思ってもどうか見逃してやってください
あわてて言っておきますが
口先だけといいましたが、どこかで発言する、発言したというのではなくて、匿名でここに書いているだけのことです
あわてて言っておきますが
きっと明日になれば、戦争なんて起きるわけないさ、起きたとしてもごく局地的な衝突だろう、きっとアメリカが何とかしてくれるよ、僕には関係ないな、と思っているかもしれません
あわてて言っておきますが
そう思っているに決まっています
あわてて言っておきますが
今日の僕か明日の僕か、どちらが正しいのかを決めたいわけではありません
あわてずに言えればよかったのですが
北朝鮮へのいかなる軍事攻撃にも僕は反対します
毎日新聞連載の「時代を駆ける:湯浅誠」が読ませます。
今年の正月、日比谷公園に失業者や路上生活者を集めた「年越し派遣村」で有名になった、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」事務局長湯浅誠への聞き書きです。
http://mainichi.jp/select/opinion/kakeru/news/20090608ddm004070025000c.html
69年4月23日、東京都生まれ。東京大法学部から東大大学院に進み日本政治思想史を専攻。研究者を目指しながら、渋谷で野宿者支援に携わる。01年に「もやい」を設立。03年に活動家として生きることを決め、大学院を退学した。「反貧困ネットワーク」事務局長。
連載3回目から、この経歴が詳しく語られます。ほんとうの特権的エリートとはどういう人か、よくわかります。
現代の丸山真男になれたかもしれないのに、ゲバラのように中南米を一人旅し、オバマのように貧困者や障害者のための活動家となり、40歳となった現在、月収数万円で堂々と生きている。アメリカなら、とっくに政党が注目し、有力政治家になっていておかしくない人です。
今年は、原稿執筆や講演依頼がきて、収入は増えたそうで、「活動家一丁上がり!」という活動家養成塾を立ち上げています。若い頃は学問に親しみ、NPO経営の実践に成果を上げ、すでに後進を育てる計画を持つ。アメリカなら、とっくに大企業が経営者に迎えておかしくない人です。
いわゆる4大紙では、この10年ほどは、毎日新聞がいちばんよい、といろんな人がいっています。いろんな人とは私の友人・知人ですが、お米をくれるので、3か月ごとに朝毎読をとっかえひっかえ読んでいる私も同感です。
いちばんひどいのは、やっぱり朝日新聞。日曜の書評欄以外は、読まなくなりました。読売新聞は、渡邉恒雄以上の記事が出たことがない。
東大生で活動家だったところは、湯浅誠と同じだが、その後、自民党の権力政治の片棒を担ぎ、自らも権力政治の手腕をふるって、読売新聞に恐怖政治を敷き、涎くる83歳となったいまも後進を育てることなく、権力の座にしがみつき、政界の黒幕を任じて得意となっています。ほんとうに特権的エリートとはどういう人か、よくわかります。
(敬称略)
<旅の恥はナマステ>
先日、インドに旅して、サイババに会ってきたという女性の話を聴いていて、風呂の屁のようにポッカリ浮かんできた言葉である。
『愛を読む人』
題名がアレだが、原作はアノ『朗読者』だから、というのではなく、ケイト・ウインスレットが主演しているので。
先日、CATVで、キャメロン・ディアス主演の「ホリディ」というくだらぬ映画を放映していた。
このキャメロン・ディアスは「チャーリーズ・エンジェル」にも主演していたので、アメリカでは人気があるらしいが、私から見ると、下唇に大きな皿をはめこんだり、首に何十ものリングを重ねて無理矢理伸ばした女性と変わらぬ、民族の奇習的な「美女」としか思えない。
いや失敬、皿女やキリン女のほうが、キャメロン・ディアスよりはるかに美しい。とにかく皺だらけ、その醜い皺が蠢めいて喜怒哀楽をつくるから、もうほとんどホラー。恋人役のジュード・ロウは、たぶん撮影中にベッドでうなされたに違いない。
そのせいか、そのせいだろうが、共演のケイト・ウインスレットが実に愛らしく見えた。「タイタニック」で初お目見えしたときは、太って野暮ったく、何というイモかと、席を立とうとしたくらいだったが、この「ホリディ」では、イーライ・ウォラックという素晴らしい老優とからんで、実に「ガラスの仮面」的な好演だった。
『レスラー』
いったいどうなっちゃったの、ミッキー・ローク、といいたいほど、醜い傷だらけの顔。整形手術の失敗らしい。体中傷だらけになりながらも闘い続けるプロレスラー役に、顔面整形だらけにしながらも演じ続けるハリウッド俳優というメタメタフィクションか。
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」にはけっして出てこない、ほんとうの「個性俳優」。「個性的俳優」ではない。中国語だと同じだが。自慰死したデビッド・キャラダインと同様に、ろくな死に方が待っていそうにない。それまでは、がんばれ、ミッキー・ローク。
『グラン・トリノ』
イーストウッド監督に駄作はないが、俳優イーストウッドも観たいので、監督兼主演がいちばん。イーストウッドとサム・クックと荻野目洋子は、わがオールタイムベストであるな(なんと健全な!)。
(敬称略)
先日、インドに旅して、サイババに会ってきたという女性の話を聴いていて、風呂の屁のようにポッカリ浮かんできた言葉である。
『愛を読む人』
題名がアレだが、原作はアノ『朗読者』だから、というのではなく、ケイト・ウインスレットが主演しているので。
先日、CATVで、キャメロン・ディアス主演の「ホリディ」というくだらぬ映画を放映していた。
このキャメロン・ディアスは「チャーリーズ・エンジェル」にも主演していたので、アメリカでは人気があるらしいが、私から見ると、下唇に大きな皿をはめこんだり、首に何十ものリングを重ねて無理矢理伸ばした女性と変わらぬ、民族の奇習的な「美女」としか思えない。
いや失敬、皿女やキリン女のほうが、キャメロン・ディアスよりはるかに美しい。とにかく皺だらけ、その醜い皺が蠢めいて喜怒哀楽をつくるから、もうほとんどホラー。恋人役のジュード・ロウは、たぶん撮影中にベッドでうなされたに違いない。
そのせいか、そのせいだろうが、共演のケイト・ウインスレットが実に愛らしく見えた。「タイタニック」で初お目見えしたときは、太って野暮ったく、何というイモかと、席を立とうとしたくらいだったが、この「ホリディ」では、イーライ・ウォラックという素晴らしい老優とからんで、実に「ガラスの仮面」的な好演だった。
『レスラー』
いったいどうなっちゃったの、ミッキー・ローク、といいたいほど、醜い傷だらけの顔。整形手術の失敗らしい。体中傷だらけになりながらも闘い続けるプロレスラー役に、顔面整形だらけにしながらも演じ続けるハリウッド俳優というメタメタフィクションか。
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」にはけっして出てこない、ほんとうの「個性俳優」。「個性的俳優」ではない。中国語だと同じだが。自慰死したデビッド・キャラダインと同様に、ろくな死に方が待っていそうにない。それまでは、がんばれ、ミッキー・ローク。
『グラン・トリノ』
イーストウッド監督に駄作はないが、俳優イーストウッドも観たいので、監督兼主演がいちばん。イーストウッドとサム・クックと荻野目洋子は、わがオールタイムベストであるな(なんと健全な!)。
(敬称略)
私は小泉純一郎を支持していた。
05年のいわゆる「郵政解散選挙」は支持しなかったが、01年の自民党総裁選において、一般党員による予備選で地滑り的勝利をおさめ、主流派である旧経政会の橋本龍太郎を下して総理総裁になったときの「小泉劇場」には驚いた。
ヒト・モノ・カネすべてにおいて圧倒的な優勢にあった橋本龍太郎に対し、ほとんど小泉純一郎の演説とパフォーマンスだけで覆したからだ。「ワンフレーズ」と揶揄されたが、日本にも言葉で勝負する政治家がようやく出てきたかと清新な思いがした。
その代表的なワンフレーズである「聖域なき構造改革」、とくに揮発油税の一般財源化と靖国神社参拝強行に注目した。これは財政政策や政治外交問題を利権の構造(=聖域)ととらえ、手を突っ込んでひっくり返そうとしているのだなと私は理解した。
揮発油税とは、いうまでもなく財政投融資という自民党の巨大な財布に入るものであり、靖国神社参拝は、直接間接に中国に対する実質的な「戦後補償」であるODAや円借款など、「公共事業の輸出」として、金の還流に連動してきた経緯があったからだ。
当時の森派は現清和会のような主流派閥ではなく傍流であったから、これらの巨大利権を手中にするのは、とても無理。小泉の狙いは、利権構造の破壊だけにあると思った。彼の最大の政治目的である郵政民営化については、よく知らなかったし、興味がなかった。
国鉄民営化やNTTをはじめとする通信の自由化などと、郵政民営化も同じ流れだろう、くらいにしか考えていなかった。これらの規制緩和は、いずれも赤字の垂れ流しの解消や事業の効率化、市場の拡大や新規市場の開拓に寄与したと理解されていたので、郵貯をはじめ郵政事業それ自体が莫大な資金の塊であるという認識は薄かった。
小さな政府と大きな政府という二元論でいえば、私はもちろん小さな政府を支持し、小泉改革やその規制緩和に批判が強い現在でも、その立場は変わっていない。原則的に政府の介入は避けるべきだし、不必要な規制は緩和され、自由で競争的な市場が形成されるのが望ましいと思ってきた。
小さな政府を是とすることが、すなわち国民の立場であるという認識は変わっていないが、市場原理主義がこれほど猛威を振るい、規制緩和という名の野放しが横行し、階層間格差が急拡大するとは、正直思っていなかった。そして、これらは、政策の失敗の結果というより、市場の暴力に起因するものと理解するようになった。
小泉純一郎の構造改革が、意図的か結果的かは知らず、海外の巨大金融資本とその走狗の投資ファンドの参入など、利権の構造を市場に組み換えて「世界化」するものだとは予測しなかった。欧米の金融資本に根こそぎ盗られるくらいなら、国内の利権政治家と公共工事業者に振り分けられていたほうが、少なくとも地方の再分配につながるだけマシといえる。
つまり、私は、国際的な金融資本の動向や国家財政が市場化する仕組みなど、マクロな経済環境の変化について、まったく無知であり、きわめて無理解であった。にもかかわらず、小泉政権発足当時、某掲示板に、「聖域なき構造改革」は「利権構造の改革」の第一歩につながる勇気ある一撃という趣旨の書き込みをした。
この小文を書き出すとき、小泉と打ち込んでから、さて、下の名前は、シンイチロウだっけか、と思い出せず、愕然とした。物忘れがひどくなっているというだけではなく、自らの不明を忘れようとする機序かもしれぬと考え、行方不明事件となる前に、急ぎ、記しておく次第。さらなる謬見や誤認を犯しているかもしれないが、拙速こそブログの取り柄。
言論の責任とは、その影響力に比すものであって、私などは言論全体からみれば間違いなく捨象すべき誤差の範囲に入り、責任を云々するほうが滑稽で、責任はまったくないというが謙虚なくらいだが、幸か不幸か、私は私の言ったことをまだ覚えているし、当時、読んでくれたらしい十人くらいの人たちには、いささか敬愛の気持ちを抱いていたので、ここに伏して過ちを謝しておきたいのである。ごめんなさい。あれはデタラメでした。
(敬称略)