コタツ評論

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自作自演

2022-04-20 04:11:00 | ノンジャンル
吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」
https://www.j-cast.com/2022/04/18435532.html

受講生のSNS投稿によれば、取締役は自社の若年女性向けマーケティングを「生娘をシャブ漬け戦略」と発言し、「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」とも話していたという。


伊東正明氏

発言の主は、「伝説のマーケター」(下記「おまけ」参照)の伊東正明氏です。早稲田大学主催の社会人向けの高額なマーケティング講座をマーケティングした結果、吉野家の若年女性をリピーター顧客とする販売戦略の解説として、上記のような予断と偏見と差別に満ちたワーディングが有効と判断したのでしょう。

慶応出身でP&Gという外資でマーケティングを学んだ人らしく、若年女性だけでなく、従来の吉野家の顧客すべて、ついでに泥臭く垢抜けない早稲田イメージにも適応してみせてコケにしているわけです。

商品や顧客をバカにするくらい冷徹なマインドがマーケティングには必要である、ということが学べます。さらに、危機管理に当たって、迅速な広報対応の実践までしています。

吉野家企画本部長の「生娘をシャブ漬け戦略」発言事件を受けて、吉野家は以下のような「お詫び文」を発表した後、伊東正明氏を常務取締役から解任しています。

https://www.yoshinoya.com/wp-content/uploads/2022/04/18120356/news_20220418_4.pdf

吉野家のHPに掲載された『当社役員の不適切発言についてのお詫び』ファイルのプロパティをみると作成者が"Ito Masaaki"だったそうです。これが事実なら、自分の不祥事に対する会社の謝罪文を自分で書いたということになります。

なるほど、会社のコンプライアンスの下位に人権を置くタカのくくり方や謝罪を矮小化する常套句の「ご不快な思いをさせた」を採用するところなど、この人らしい浅薄さがうかがえます。

すると、当然、常務取締役の解任も同様に、自らが進言して取締役会にはかった決定ではないかと推測できます。この間、ほんの数日ですから、吉野家の謝罪から取締役まで仕切ったとすれば、やはり「やり手」と評価されて業界で生き残ることでしょう。彼の発言にほんとうに眉をひそめている関係者や業界人はごく小数のはずだからです。

しかし、この程度の不徹底以上に不見識な「お詫び文」すら、いまだに出せない早稲田大学の体たらくはどうでしょう。いっそ、早稲田大の「お詫び文」も伊東正明氏に依頼すればよかった。彼なら30分もあれば書いてくれるでしょう。

おまけ

トイアンナ・インタビュー「オンラインビジネススクール立ち上げの勝算と、P&G時代に伊東正明さんから学んだこと」
https://marketingnative.jp/sp11/

4月20日、ようやく早稲田大から「お詫び文」が出ました。「教育機関として到底容認できない」文章以前の代物でした。

本学講座における講師の不適切発言について
https://www.waseda.jp/top/news/79974


(止め)
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戦争の背景2題

2022-04-04 00:12:00 | 政治


ロシアはなぜ負けるのか?
https://twitter.com/karizo2022/status/1509894208102203393

開戦一週間でこの凄まじいツイート。「特別軍事作戦」とするプーチンの「誠実」、ショイグの邸宅写真など、興味深い指摘の数々。

第二次大戦のナチスドイツへソ連の勝利もアメリカの軍事援助があったればこそという別の資料も読み、アメリカ並びに欧米各国の武器支援がどれほどウクライナ軍善戦に寄与したかを理解できた。

ソ連がナチスドイツを撃退できたのは、冬将軍とアメリカのおかげだった。日独と同時に戦争でき、ソ連をも軍事援助できたアメリカの莫大な生産力!

ロシア軍は韓国に攻め入った北朝鮮軍のようなものだったのか!

style="color:blue">https://twitter.com/karizo2022/status/1509150272458997760

ロシア兵には契約兵と徴集兵の2種類があり、徴集兵の多くは20歳前後の戦争未経験の若者が多かったので、練度士気ともウクライナ軍に劣ったといわれている。

また、その多くがロシアの辺境各地、モンゴル国境に近いブリヤート族やダゲスタン出身の兵士から集められている。シベリア鉄道で旅したことがあるが、沿線住民で占められる乗客の多くは、髪黒く背は低い肌浅黒のアジア人の風貌だった。

金髪碧眼長身のモスクワやサンクトペテルブルクの若者が戦死すれば社会不安となるが、辺境の少数民族の若者の悲劇など誰も気にしないわけだ。

けっして死ぬことはない「ジジイが戦争を始め、オッサンが命令し、若者が死んでいく」(大橋巨泉)のが戦争の実相である。罪もない一般市民や子供が巻き込まれて殺されていく悲劇が言及されるが、まずもって殺し殺される若い兵士の惨劇なのだ。

(止め)

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美しい文章です

2022-04-03 11:24:00 | ノンジャンル
亡きホームレス女性、ノートに残した暮らしと思い「美しい夕陽」「今日も書けた、読めた、歩けた」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/169413

私、今日フランスに行ってくるわ。夜の時間をゆっくり使いたいの…。美しい夕陽を見送り、顔が今日の夕陽のように赤く燃えている。(2001年6月26日)

死んだホームレス女性が書いたからではない。ホームレスなのに文章が巧みだったからではない。「夕陽」の重複はふつうは避けるものだが、そんな巧拙を越えた力のある文章の書き手だから惜しまれるのだ。

君は何もしていないんだ、もう君に食べさせる食料はない、誰か男でもつくり2人でいる所を見たらすぐ殺してやる、俺はそれを待っているんだと、又、おかしい事を口走る。私は、男を作り、共に過ごそうなんて、1度も思ったこともないわ、一時も早く、一人で静かに自立して生きていきたいだけなの…。(01年6月18日)

25才より、読む書くことを志、現在こんな環境の中で約2カ月で6冊ものノートを書けたら十分だ。 きっとはげまし協力してくれた人も、世に認められず収入がなくとも喜んでくれるだろう。 私も喜んでいる。今日も書けた、読めた、歩けたと…。きれいな風景を見て、美しい音楽も聞くことが出来た。(01年3月26日)

かつて朝日新聞は、「コトバの力」なる珍妙な購読キャンペーンを打ったことがある。言葉や文章による報道に携わりながら、その使命や特権を留保するかのような「コトバ」を使ったのに驚き呆れたものだ。

いっそ「コトバのチカラ」でもよかったくらい、新聞の凋落はその後著しいわけだが、上記の彼女の文章には、その対極の個から滲み出る確固とした「言葉の力」を看取できる。

ホームレスでか弱い女性なのに、前向きで力強い意志を語り、夕陽の一景や一杯のコーヒーにも人生の喜びを見出している、という「感動の物語」には収まらない、読み手の感情を揺さぶる力だ。

それは罪悪感という甘いオブラートに包まれた毒物として、心の皮膜にごく小さな傷をつける。


インドのハヌマンラングールというサルとアクシスジカは協力関係にあることが知られている。サルは樹上からシカは鋭い嗅覚を使って、外敵の接近を互いに知らせ合う。

(止め)
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女を殴らない男はいない

2022-04-01 00:21:00 | レンタルDVD映画
米アカデミー賞のウイル・スミス暴力事件では、ビンタされたクリス・ロックが平気で立っていたことに驚いた。ウイル・スミスは完璧な右フックのフォームだった。

かつてモハメド・アリを演じたこともあり、ボクシング練習もしただろうウイル・スミスだが、やはりアクションスターの見掛け倒しに過ぎなかったのか。

それとも、一見、非力な口先男に見えて、クリス・ロックがストリートで鳴らした猛者だったのか。ほとんど動揺も見せずに、そのままパフォーマンスを続けた根性も含めて、クリス・ロックに「アッパレ!」をあげたい。

ウイル・スミス夫人の丸刈りに「GIジェーン2に出たら?」というジョークには、会場と一緒に笑っていたくせに、傷ついた表情のジェド夫人に気づき、猛然と壇上に上がったウイル・スミスには「喝っ!」だな。



ジェド夫人の坊主頭はファッションではなく、脱毛症に悩んでのことらしいので、他人の身体的な差異をジョークにするのは「最低!」というクリス・ロックへの批判は当然だろう。

おそらく、美人女優のデミ・ムーアが丸刈りになって海兵隊の猛者になるまでを描いた「GIジェーン」を引き合いに出すことで、クリス・ロックとしてはポジティブな揶揄のつもりだったはずだ。

しかし、ロシアのウクライナ侵略への批判を込めた反戦の受賞スピーチが相次いでいるなかで、男勝りの強い女性を描いたとはいえ、この好戦的な海兵隊映画を持ち出したのはいかにも分が悪い。

また、アウシュビッツをはじめとする強制収容所の女性たちや、戦後ナチス将校の愛人や水商売の女性たちがナチス協力者として街中を引き摺り回された光景など、「丸刈りにされた」女性たちを想起もする。

ハゲなど、他人の身体的な差異をジョークにしたという一般的な解釈にとどまらないわけだ。

『蜘蛛女のキス』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した名優ウイリアム・ハートが亡くなった。亡くなって知ったのだが、今年のアカデミー作品賞を受賞した『コーダ 愛の歌』に出演しているマーリー・マトリンと同棲していたそうだ。

二人が交際したきっかけは、『愛は静けさのなかに』の共演だった。この映画で聾唖のヒロインを演じたマーリー・マトリンは実際に耳が聞こえない聴覚障害者だった。

「コーダ 愛の歌」も聾唖者の家族のため、唯一健常者の娘が家族外との通訳をつとめながら家業と家事に励む一方、歌手の道を目指すなかで生まれる葛藤と悩みから成長していく物語だ。マーリー・マトリンをはじめ、実際に聾唖の俳優をキャスティングしていることでも話題になった。

その聾唖のマーリー・マトリンをウイリアム・ハートは、虐待していたという。たとえば、アカデミー主演女優賞を得た授賞式から帰る車中で、マトリンはハートから、「自分がオスカーに値すると本当に思っているのか?」「君がもらったその賞が欲しくて何年も働いてきた俳優が何百万人もいるんだ。それを考えろ」と言われたそうだ。

わずか19歳にしてデビュー作品でオスカー像を手にした小娘に、業界の先輩としてモラルハラスメントに及んだだけでなく、性的虐待も受けていたことなどをマーリー・マトリンは自伝で明らかにしているそうだ。一方的な暴露話ではなく、ウイリアム・ハートはこれらを認め、後に謝罪しているという。

あの知的な風貌で繊細な優しい表情のウイリアム・ハートでさえそうなのか、人は見かけに寄らないものだと驚いた。

今回のウイル・スミスの暴力事件も、アメリカでは妻を侮辱されて怒った男らしい一撃という日本のような好意的な見方は少なく、家族を守る男らしさという差別的な男性性の表れとの批判が多いらしい。

(止め 敬称略)




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