コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

今夜は、トマト・スパゲッティ

2020-11-26 21:09:00 | 食べ物
アメリカのマフィア映画には、ギャングたちがスパゲッティを食う場面は欠かせない。映画ゴッドファーザーやグッド・フェローズなど、その場面がなくては作品が成り立たないほどだ。スパゲッティやピザなどの食事をとおしてアメリカ庶民の家庭生活を描くホームドラマでもあるからだろう。下掲のインタビュー記事の「ヤクザ話」はどうでもよいが、このトマトスパゲッティはじつに旨そうだ。

マフィア幹部の息子が教えてくれる食の掟「トマトソースの隠し味とテーブルマナー(女の話は持ち込むな)等」
https://heapsmag.com/tony-nap-napoli-wiseguy-cooking-tomato-sauce-italian-food-culture

まずは、フライパンにオリーブオイルをひいて、トマトを入れる。そこに刻んだタマネギを、そしてニンニク、生ハムを投下。ニンニクは水分のあるトマトの後に入れるのがコツだ。フライパンで直接炒めて黒こげになってしまうのを防ぐためにな。トマトソースー隠し味には、オレガノ。そしてパセリとバジル。ナイフを使わず、手でちぎってやる。そして水を加えながら焦げないようにソースをかき回して、最後にひとつまみの塩をふりかけて終了だ。あとは、茹で上がったスパゲッティに絡めるだけ。余ったソースは、パンにつけて食う。20分で完了のお手軽レシピだ。

まずは、オリーブオイルが違うんだろうな。紀伊国屋とか高価スーパーで、300mlくらいの小瓶なのに、1500円以上もするバージンエキストラかな。トマトも一缶100円以下の輸入缶詰めではなく、フレッシュトマトの中くらいの3個は欲しい。輸入の乾燥トマトがよくダシが出ると聞いたことがあるが使ったことないしな。生ハムも全然質が違いそうだが、コンビニで売っているようなのじゃなく、高めのものを入手したい。ニンニクはそこらにある中国産でもいいかと思うが、国産にするか。よく青森産のやつが1個200円くらいで売っているが、いつから青森がニンニクの名産地になったのだろう。「フライパンで直接炒めて黒こげ」にはしないように、まだ冷えたフライパンに刻んだのを入れてからオイルを投入して弱火で温めていたけれど、トマトの後に入れるのがコツというのはなかなか説得力がある。何より、トマトにニンニクの味と香りを効かせたいものな。

問題はオレガノ・パセリ・バジルだな。オレガノはともかく、イタリアンパセリやイタリアンバジルが必要なのか。広尾の明治屋あたりには常備してそうだが、新鮮ならデパ地下あたりでふつうのパセリやバジルを見つくろえばじゅうぶんだろう。かき混ぜるのは、ソースを冷やさない「ウッディスプーンに限る」そうだが、日本なら木のおしゃもじくらいはどこの家庭にもあるはず。材料費だけで、一人前1000円近くかかりそうだが、試してみる価値はありそうだな。しかし、コショウは入れないのかな。それと、イタリアじゃ、ニンニクとタマネギはいっしょに使わないと聞いたことがあるのだがどうだろう。たぶん、なんだかなあ。味が薄いよ、という結果になりそうな気もする。

(止め)






今夜は、菊地凛子

2020-11-23 23:08:00 | レンタルDVD映画


トレジャーハンター・クミコ
https://eiga.com/movie/82905/

これは菊地凛子の眼力の映画である。というか、菊地凛子はその眼力以外はこれといった印象を残さない。そんな存在の希薄さがテーマの作品といえる。といっても、この映画のタイトルはもちろん、菊地凛子という女優の名前すら知らない人が多いでしょう。

とはいいつつ、私にしろ菊地凛子については、「メキシコの鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「バベル」(06)で第79回アカデミー助演女優賞にノミネートされ、一躍国際派女優となる。」くらいの知識しかなかったわけで、このブログのどこかに書いた覚えのある「バベル」の感想において、菊地凛子が演じた「女子高生」役に不満や不足以外を感じませんでした。

リュック・ベッソン製作でジャン・レノ主演のフランス映画「WASABI」で広末涼子が演じた「女子高生」と同様に、一種のフィギュアとして日本の「女子高生」や「小ギャル」が海外でも流通消費されているのだなあと思ったくらい。たぶん、「村上隆」経由で。

とかなんとか、読み手の関心を少しでも引き寄せたいと書けば書くほど、一般性から離れていく気がするのだが、この映画はちょっと不思議な佇まいなのですね。クミコという主人公のいずまいというか。菊地凛子は主演だけでなく、製作にも名を連ねているので、もしかするとそれは女優自身にも重なっているのかもしれません。

いま<NETFLIX>で「トレジャーハンター・クミコ」が配信されていることを知り、無料動画サイト<GYAO!>で観たことを思い出したのだが、より正確にいえば、こんな映画をどうして最後まで観てしまったんだろうと思ったことを思い出した次第です。

前置きばかり長くて、なんだかよくわからない? その通り、この映画がまさにそれです。若くもなく、きれいでも可愛くもなく、まじめでもない、たいしたことのない企業の制服OLが、アメリカはノースダコタ州で凍死体となるまでの「前置き」がほとんどを占めるのだから、「なに、これ?」ってなります。

「物語」ではなく「前置き」とするのは、クミコが自身に何も思い入れていないからです。クミコが思い込んでいるのは、雪原に埋まっているはずのドル札の詰まったスーツケースを見つけることだけです。

そんなクミコのトレジャー・ハンティングのきっかけと最初の道案内をしてくれるのは、勤務する会社の法人クレジットカードとその無断使用という無機質なお手軽感からして、感情移入のしようがありません。

ということで、同じ映画を観るなら、もっと気晴らしになるような、おもしろくてためになるような、いろいろな映画がたくさんあるのだから、いや、だからこそ、「不思議な映画」は珍しいのだが、いや、困ったな。

お勧めしていいものか、まだ迷っている。そうそう、「困ったちゃん」の映画でもある。「困ったちゃん」が一心不乱になると、「都市伝説」になるというものです。そうしたファンタジー、寓話性を担っているというか、ほかに見当がつかないものとして、菊地凛子クミコの眼力に行き着きます。

とかいっちゃって、下げに下げたハードルを少し上げましたが、もう少し解説めいたことを試みれば、終盤に近づき、クミコがまとうモーテル備え付けの一枚のベッドカバー、その鮮やかな色彩が雪原を行くあたりから、この映画は真の姿を現します。

「困ったちゃん」が一心不乱になって「伝説」になるといえば、そう、ドン・ドン・ドン、ドンキい、ドンキホーテえ~♪ あのベッドカバーはクミコのまさしく鎧兜に羽飾り、さらに疑いなくサンチョ・パンサも従えています。タイトルに偽りなし。女だてらに男伊達の冒険の旅なのです。

クミコのクミコのためのクミコだけの旅。いっさいがっさいの裏づけや保証や認知すらない冒険の旅のクライマックスに向けて歩む、クミコの口許に浮かぶ笑みと黒々とした瞳。そのとき、身を包むベッドカバーは金糸銀糸で織られた王の衣装の如く屹立しています。たとえ、大きすぎるどてらのように見えたとしても。

あなたもきっと、(なんでまた、こんな映画を観ちゃったんだろうな)そう思うこと請け合います。同時に、「そなたはどうじゃ?」というクミコのかすかな声が聴こえてくるかもしれません。私のように。

(止め)








愛と信頼ここにあり

2020-11-12 21:24:00 | ノンジャンル
ベトナムのおじいちゃんが赤ちゃんの入浴の仕方を教えている動画です。とてもわかりやすいから、ベトナム語がわからずとも、おじいちゃんの手元だけを追っていても会得できるでしょう。おじいちゃんだけでなく、ボランティアのアシスタントがまた素晴らしい働きをしています。視る人すべてに微笑みをもたらす、愛と信頼の動画です。

Grandpa teaches how to bathe a baby. Guess who's his voluntary assistant.
https://www.reddit.com/r/aww/comments/jrkjm3/grandpa_teaches_how_to_bathe_a_baby_guess_whos/?utm_source=share&utm_medium=web2x&context=3

よく言った! 小林麻耶

2020-11-12 20:29:00 | ノンジャンル
小林麻耶という元女子アナでタレントになった人をご存じだろうか。若くもないのにブリッコぶりと結婚願望が重なって笑いを誘うイジラレキャラとして、明石家さんまなどのバラエティ番組によく出演していた。結婚後、いったん引退したものの、朝のワイドショーにコメンテーターとして復帰したらしいとは知っていたが、こんな発言をする人だとはまったく思っていなかった。ちなみに、早世した団十郎夫人・小林麻央の姉であり、妹の遺児をしばらく世話していた経緯がある。

小林麻耶、立川志らくの“母親いないと”発言に反論。【だいたひかる】【グッとラック


残念ながら、案の定というべきか、番組を降板することになったという。映画や小説なら、視聴者から応援の声が上がり活躍の場が広がる感動ストーリーになるはずだが、現実は小説よりつねに奇なるものだ。

(敬称略)

アメリカは蜃気楼、日本は森喜朗だから

2020-11-11 02:55:00 | 政治
アメリカ大統領選をめぐって、「アメリカの政治に詳しい元外務省の」「アメリカ政治がご専門の○○大学の」「ワシントン特派員経験もあるジャーナリストの」「ニューヨーク支局の」、いろんな人が解説をしてきた。

町山智弘氏のアメリカリポートのような例外もあるが、たいていが「浮世三分五厘」の駄弁に思えたうえに、「トランプ支持者」に対する言及がほとんどないことに苛立ってきた。

繰り返し、ニュース画面に登場する、州別に色分けされたアメリカ平面図において、つねに赤色(トランプ支持)が青色(バイデン支持)を圧倒している「赤いイリュージョン〈蜃気楼〉」を眺めさせられるたびに、その視野を占める赤に肌が泡立つような思いがよぎった。



以下を読んで、自分が何に怖気をふるったのか、その正体がわかった気がした。

日本人としてバイデン勝利を悲しむ
https://anond.hatelabo.jp/20201108231135

平明にして簡潔なタイトルに唸った。私なら、「赤い蜃気楼について」とか気取ってしまうだろう。

アメリカに親戚も友人もいないがバイデンの勝利がもの悲しい。

ということは、アメリカ留学や赴任経験がないのに、「トランプ支持層」について、これほどの短文にしてこれだけ説得力ある論評をものしたわけだ。

ジョー・バイデンの勝利演説を聞いてますますその思いを強くした。

「分断ではなく統合を」。

これはトランプ支持者たちが最も聞きたくなかったスローガンだろう。 

だって現に分断はあるわけだから。

トランプが現れる前からそれはあって、トランプはそれを認めてくれたにすぎない。

トランプはそういう戦略であってもその種の問題についての欺瞞は言わず、目を背けなかった。

「俺達と奴等との戦いなんだ」と。

それはオバマやヒラリーやバイデンのどのスローガンよりもトランプ支持者となるような層の現実に向き合った言葉だ。

そうして、「俺達」の代表は敗れ去ってしまった。 

アメリカという国のありとあらゆるインテリや金持ちやエスタブリッシュメントがバイデンについた。

彼等はトランプを支持するような粗野で垢ぬけず育ちが悪く学歴の低い田舎者をまとめて卑しむ。

卑しむし、見捨てる。

彼等はこれから石油産業は閉鎖するし低賃金の仕事にはますます移民を入れるしありとあらゆる外国産の物品を輸入するし

それで貧窮する田舎の低学歴なんか勝手にホームレスになって視界の外で消えて行ってくれるのが当然だと思っている。

トランプ支持者になるような層の生息域は「合理的」にまるごとグローバリストに売り渡してしまう。

これらはどんな立派な演説でも覆い隠せない純然たる事実だ。

(中略)

バイデンとその支持者になるような層が「分断ではなく統合を」という時に、

その統合の中にトランプ支持者になるような層や、私の故郷に生きるような層は含まれない。

そのことはどんな低学歴であっても鋭敏に嗅ぎつけている。

「分断ではなく統合を」はつまり、「お前等のことは見えない振りをしながら消えていくように追い詰める」という宣言に他ならない


トランプが「希望」であるようなトランプ支持層の「絶望」に身を寄せているところが、凡百の論評の及ばないところだ。

トランプではなく、トランプ支持層をほとんど支持している。「ヘドが出るような頭もセンスも悪い低学歴のカッペ(コメント欄)」たちを仲間とし、友人とみている。

すると、「日本人として」は、「アベガー」と「反アベガー」を連想するかもしれないが、安倍はとうてい「大衆政治家(ポピュリスト)」としてトランプに及ばず、支持層の「絶望」と「過激さ」において比較にならない。

ある意味では、バイデンの勝利ではなく、トランプの敗北にこそ、アメリカのデモクラシーの底力を見ている。バイデンの勝利=トランプの敗北という等式ではなく、バイデンの勝利VSトランプの敗北という対立の構図に、分断され続ける民衆の相貌をみようとしている。

私もまた、ほんのときたま現れる「蜃気楼」のような、「見えない振りをされて、切り捨てられる」「赤い」民衆の一人でありながら、「青空」を求める自家撞着を可視化された「怖気」に震えたのかもしれない。

「分断」から「統合」へ思考停止する怯懦を鋭く指摘された気がする。


アメリカ国旗や南軍旗には、すでに赤と青の分断と統合が表されているのだな。

それでは、「トランプ支持層」にも絶大な人気がある「ボス」の名唱です。

The River bruce springsteen



(止め)