コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

レスラー

2010-01-30 00:56:00 | レンタルDVD映画


レスラー
http://www.wrestler.jp/

落ち目になって消えかかったミッキー・ロークが「シンシティ」で返り咲き、かつてはスターだったプロレスラーの惨めな日常を演じている。

俺はボロボロのクズだが、娘には嫌われたくない。

ようやく娘と和解のきっかけをつかんだのに、コカインでラりッてビッチとお楽しみに励み、娘との約束をすっぽかす。好きになったストリッパーが寝てくれないのにキレて、「金払えばいいのか」と暴言を吐く。スーパーで惣菜を売っていたら、ファンに正体を見破られ、恥ずかしさに大暴れしてスーパーを辞める。

クズというより、いつまでたっても大人になれないガキ。たしかにミッキー・ロークの役どころ。醜い顔に無垢な笑顔、瞳が切なげに潤む。しかし、娘やストリッパーやスーパーのマネージャーの立場に立ってみると、未熟で甘ったれなガキに過ぎない。とても感情移入できない。

ボロボロのクズという自嘲には、ピカピカ金メッキのチャンピオンベルトの栄光の思い出があるのだ。ならば、そうした「奇形」的人物を生み出した、リングを観客をレスラーを描かなければ、落ち目のプロレスラー・ラムにリアリティを与えられない。

プロレスリングの世界がまったく描かれていない。「HACHI」とは違った意味で、「なんで、こんな映画つくっちゃったのか」と観客が首をひねる映画だ。ミッキー・ロークの本当の返り咲きはまだ遠い。

(敬称略)




なんで、こんな映画つくっちゃったのか

2010-01-26 23:29:00 | レンタルDVD映画


HACHI 約束の犬
http://www.hachi-movie.jp/

「ハチ公物語」のリメイクとは思えぬ佳作である。主演のHACHIがすばらしい。不覚にも涙が・・・。単純過ぎるストーリー、登場人物を掘り下げない、犬を擬人化したエピソードをつくらない、まるで犬が語ったかのような、きわめて抑制した展開にとどめている。

飼い主やその家族、HACHIを見守る駅の人々は、HACHIを家族や友人として遇するが、HACHIは、「七人の侍」の寡黙な剣の達人・宮口精二のように無表情。ただ、主人から受けた恩義への忠誠しかない。女子ども目当ての「お茶目」「カワイイ」マーケティングから逸脱した、かなり異色な動物映画になった。

「パーカー、君がHACHIを見つけたのではない。HACHIが君を見つけたのだ」

ある意味、究極の擬人化かもしれない。あの巨匠ラッセ・ハルストレム監督にそんな映画をつくらせてしまったのは、秋田犬ハチのたたずまいとしか思えない。映画は、やはり、役者で観るものなのだ。しかし、ハチには、アメリカの郊外町がそぐわない。雪深い白神山地に、マタギと歩いている俯瞰が似合う。

(敬称略)

小沢逮捕マジか?

2010-01-26 00:42:00 | ノンジャンル
もとい、「小沢逮捕真近?」である。
被疑者調書をとられたのがマズイ。これで、起訴はもちろん、逮捕も濃厚になってきた。根拠はあるのか? ある。こう見えても、司法試験に3度落ちたことがある。冗談はさておき、根拠は以下の映画である。

それでもボクはやってない
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id325423/
http://moon.ap.teacup.com/applet/chijin/200709/archive

取調べを受けて、調書をとられたら、いかに否定しても、痴漢なのである。警察や検察の取調べを受けることを、弁明の機会が与えられたと、けっして誤解してはならない。有罪のエスカレーターに乗ることなのだと、理解しなければいけない。この映画は、そうした司法の怖ろしい現実を教えてくれる。

なにせ、有罪率99%なのである。自分が1%に入るだろうと思う人は、99%いないだろうに、なぜか、「ちゃんと話せばわかってくれる」、あるいは、「全部否定すれば、どうしようもないだろう」と多寡をくくってしまう。取調べの際に、サインさせられる供述調書は、「自白偏重」の日本の司法では、物証よりはるかに重きをなす証拠なのだ。

管家さんが有罪となった決め手は、DNA鑑定の結果以上に、管家さんが「自白」したからなのだ。自白であれ否認であれ、供述調書にサインしたら、そこでおしまいなのだ。だから、昔の左翼事犯は、逮捕されたら、「バカのひとつ覚えといわりょと完黙」と教わったものである。名前も名乗らなければ、22日で釈放される公算大なのである。

たとえ、刑事に向かって、「尻を触りました」と泣き崩れて告白しても、調書にサインしなければ、喋ったことにも、自白したことにもならない。民主党が法案化しようとしている「取調べの可視化」が通って、ビデオ画像が証拠として認められるまでは。そして、供述調書は被疑者本人のサインがなければ、何十枚書かれようと、ただの紙屑である。

根拠はあるのか? ある。こう見えても、3度逮捕されたことがある。刑事の「おまえがやっただろう?」に、「やったがどうした!」と開き直り、しかし、頑として調書にサインしなかったら、まあ、なだめるすかす、特上弁当までふるまってくれたものだ。冗談はさておき、被疑者にとって調書が持つ致命的な意味は、冗談ではないのである。

小沢がいかに、全面否定しようとも、秘書がしたことで知らなかったといおうとも、これで証拠0から証拠1になった。いかな検察でも、証拠0なのに、状況証拠だけで起訴するわけにはいかない。それは、1:0と検察が優位に立っただけに止まらない。被疑者本人の供述がとれたことで、関係者の証言や伝聞、物証のほとんどが、0から1に、オセロのコマのように白から黒に裏返るのである。

10:0くらいに検察がリードしたわけで、1:0なら躊躇する「公正」な裁判官も、10:0なら文句つけようがないコールドゲームだと、逮捕状にサインするのである。もちろん、小沢は起訴や逮捕も織り込み済みだろうし、ことは、連日マスメディアが報道する「政治とカネ」の問題ではなく、海外メディアが報ずるような「権力闘争」だとすれば、僕たちが記憶すべきことはひとつしかない。

小沢を他山の石としない、ということだ。僕たちが、押入れに4億円の「タンス貯金」をする可能性はたぶんないが、「この人痴漢です!」と手をつかまれる可能性は充分にある。そのとき、「なに血迷ってんだ、このブス」とぼんやりしていてはいけない。あなたは、現行犯逮捕されたのだ。駅員が呼ばれ駅事務室に連れていかれ、警察がやってきて、「まあ、あなたにも言い分があるでしょう。お話しを聞きますから」とパトカーに乗ったら、オセロなら角を取られたも同然!

次は留置所、取り調べ、供述調書の作成、起訴、裁判、たぶん有罪判決(99%だから)というエスカレーターの半分を上がったと思わなくてはいけない。とはいえ、エスカレーターを逆走して降りることは不可能だが、エスカレーターを止めることはできる。調書にサインしないことだ。現行犯逮捕でなければ、任意同行には応じないことだ。いちばんよいのは、姿をくらますことだ(おいおい)。その根拠はあるのか? ある。こう見えても・・・。

(敬称略)





検察リークなんてあり得ない

2010-01-24 01:45:00 | ノンジャンル
昔、司法記者20年という人と知り合ったことがある。警察や検察取材なら、「あの人」と一目置かれていた。彼が笑いながら、私にこういった。「僕、検事の名刺を何枚持っていると思います?」。当ててみろ、というわけだ。こういう質問の場合、その答えは、極端に多いか、少ないかに決まっている。何百枚、何千枚なら、単純な自慢になるから、たぶん、「極端に多い」はあり得ない。

「極端に少ない」ほうだろうと読んだが、「極端に少ない」名刺の数の見当がつかない。「まさか、一桁?」。司法記者20年氏は、背広の内ポケットから名刺入れをとりだし、トランプのように名刺を扇形に広げて見せてくれた。名前は読み取れないが、肩書きは読める。「たった4枚?」。ニヤリとして彼は頷き、すぐに名刺入れを懐にしまった。20年間、毎日のように検察庁に顔を出して、20年間で4人しか名刺をくれないほど、取材が難しいところなのだという自慢である。

「4枚は、多いほうですか?」「少ないほうではないですね」と、彼は苦い顔をした。名刺さえ渡さない人間が、取材に応じるわけがない。口さえ利いてくれないのだろう。リークというのは、職務上知りえた極秘情報を漏らすことだから、検事のリークなどあり得ないわけだ。検事に比べれば、警察はかなり喋ってくれる。それでも、捜査情報を漏らすなんてことは、懲戒免職ものの「不正」である。

今回の「小沢事件」について、検察のリークによって報道がつくられていると問題になっているが、検事が取り調べ内容や供述内容をマスコミに漏らすことは、直ちに守秘義務違反になるのだから、とても信じられない。検事以外に、取り調べ内容や供述内容を知りうる立場にあるのは、逮捕された石川議員や小沢秘書たちの弁護士だが、弁護すべき被疑者に不利なリークをするとは、これもあり得ない。

だとすれば、いったい誰がリークをしたか? それを知っているのは、リークした本人と、リークされたマスコミの記者たちだけである。中井国家公安委員長や原口総務大臣まで、検察のリークを問題にし始めているのに、取材した記者やメディアが、「検察のリークなどではなく、独自の取材源から得た確度の高い情報である」とは、誰もどこも言わないのも、不思議なことだ。

報道の自由によって、情報源の秘匿は担保されているから、そういったとしても、誰にも、「どこの誰からの話だ」と聞かれる恐れはない。たとえ、聞かれたとしても、「答える必要はない」と突っぱねることができる。しかし、どの記者も、メディアもそうはいわない。そもそも、一人二人の記者に囁くからリークといえるのであり、記者全員が知っているのはリークとはいわない。

もうひとつ考えられるのは、検察のリークを偽装した、偽情報に踊らされているという見方である。マスコミ記者とは、「こんにちは」の挨拶さえかわさない検事の鉄壁の沈黙を考えると頷きたくなるが、全マスコミが騙されているということは、これもあり得ない。しかし、取り調べ内容や供述内容が連日のように、紙面や画面を賑わしているという、あり得ない事実がある。

もうひとつ、これだけはあり得ないという可能性があるが、いくらなんでも、それはあり得ないだろう。民主党に政権が交代してから、事業仕分けや普天間問題、亀井「徳政令」、最近では日本航空の事実上の倒産など、自民党政権ならあり得ないことが起きたが、鳩山民主党があり得ないことをしたおかげで、そんなあり得ない状況を招いたとしたら、自業自得である。まさか、記者会見の席で、検察上層部が発表したなど、絶対に、あり得ないことである。

さて、正解は、真相は、どれだろうか。あるいは、どれも「あり得る」とする複合なのか。それとも、まったく違う「あり得ない」ことがあるのか。私も20年間生きてきて、いまほど政治が面白かったことはございません(なぜか、村西とおる口調)

(敬称略)



グレース・ケリーはいかにして台湾クラブのママになりしか

2010-01-20 23:56:00 | ノンジャンル
9匹目のメスの仔猫は、まだ片眼失明の恐れはあるが元気いっぱい、ほかの8匹をうんざりさせるくらい、しつこくかぶりついています。グレース・ケリーのような美貌のメス猫に育ってくれるよう願い、しかし、その箱型の体形からケリーバックと謙遜し、「ケリバ」と名づけたのは既報の通りですが、さて、いまはどうなっているか。

アラ~、シャッチョさん、ひさしぶりネ
だから、社長じゃねえよ
パパさんがいいか?
俺とおめえは10歳も離れていねえだろが
わたしの名前は、パイ・リンリン、中国人ちゃないヨ、台湾人たヨ
ああ、知ってるよ、日本人じゃねえことはな
アラ~、コンドさん、いらっしゃい!
こっちはいいから、向こうへ行ってろよ
シャッチョさん、お待たせネ
寂しかったか?
シャッチョさん、フルーツ食べるか?
何が悲しくて、このクソ寒いのに、缶詰のみかんを食わなきゃならん
いまだにみかんの缶詰があるなんて、おめえの店で知ったがよ
うちの店のオリジナルたヨ
フルーツってのはな、メロンとか、巨峰とか、そういうもんをいうんだ
おめえんとこのは、みかんにパインにモモくらいじゃねえか
バナナもあるヨ
食べ物に文句言うと、パチが当たるヨ
そういう問題じゃねえだろ
わたしが代わりに食べてあげるヨ
恩着せがましくいうな
こちらフルーツネ
頼んじゃったよ、このアマは
缶詰を開けただけで、原価200円もかかっちゃいねえだろ
それを8,000円たあ、よく警察が黙っているもんだ
ハイ、こちらフルーツネ
もうきちゃったのかよ
さてはてめえ、缶詰さえ開けずに、あらかじめ、盛りつけてやがるな
ズゾズゾーッ
って、おいおい、ほんとうに、食べちまいやがった
食べるというより、飲んでるな、こいつは
おいしいナ、おいしいナ、フルーツおいしいナ
そんなの毎晩食ってたら、そのうち糖尿になっちまうぞ
はじめて会ったときは、柳腰にチャイナドレスだったのに
見ろ、すっかりパンダみたいに膨らんじまって
わたし、中国人ちゃないヨ、台湾人たヨ
おかげで、台湾に家建てたヨ、フルーツ御殿ヨ
自分でいってりゃ、世話ねえわ
コンドさん、もう一杯、フルーツ食べるか?
客から、金をふんだくりたかったら、真露じゃなくて
もっと高い酒を出しゃあいいじゃねえか
ウチは良心的な店たヨ、お酒はチンロたけたヨ
アラ~、なに赤くなってる?
おまえ、もしかしたらスケベだナ
おめえな
スケベ以外のいったい誰が、こんな店に来るってんだ
だいたい、この店は、おめえ以外に女はいねえのか
おめえちゃないヨ、シャッチョさん
わたしの名前は、パイ・リンリン、中国人ちゃないヨ、台湾人たヨ
だから、社長じゃねえよ


「ケリバ」は、どうも、パイ・リンリンさんのような女性に成長しそうです。

(この物語は、実在の店や人物とは、一切関係ないことをお断りします)