コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

認知のニッチ需要

2022-09-27 00:24:20 | ノンジャンル

つれあいがだいぶんボケてきている。すると、活字を読むのはもちろん、映画やTVドラマを観るのも無理なようだ。集中力が続かなくなっている上に、いま見た映像や音声内容を片っぱしから忘れてしまうようで、まるでつまらないわけだ。

ウクライナ戦争のニュースが流れるたびに、いったいロシアはどうしちゃったのと目を丸くする。プーチンがウクライナを侵略したんだよ、というと、怪訝な顔で、だって、ウクライナはロシアの穀倉地帯でしょとソ連時代で時間が止まっているようで、こちらが質問攻めにあう。

そこで、動物や野生のドキュメンタリや「笑える」犬や猫の動画を、膝上に抱いた猫といっしょに視せることになる。猫に見せるための魚や鳥が映された専用動画があるそうだが、似たようなものかもしれない。

ところが、この長い動画をふと視はじめてほとんど見通したのには驚いた。音声に加えて大きな字幕が出る。ラジオドラマに字幕がついたようなものだから、聴くと読むとが同時なので、普通に楽しめたようだ。

ボケが進んだ老人向けに、こうしたまとめ動画はなかなかわるくないのではないか。名作小説やエッセイの朗読や読み上げサービスはあるだろうが、下世話な嫁の姑やママ友への仕返し話やダメ男やクズ夫のヘタレ話など、鬼女板などにある話でじゅうぶんだろう。

自分一人で視聴するのではなく、家族でいっしょに同じものをみる、みることができるというところが当人にとっても嬉しいようだ。私が見る大谷翔平活躍動画など3分で寝てしまうか、他にしてくれクレーム念波が猫たちといっしょに飛んでくるのに、約2時間である。たいしたものです。

ボケ老人専用動画、この企画、500円で売ります。

下掲の『あは。いっぱいします?』は私も楽しめました。いくら高齢になっても、女性はこういう愛情物語は好きなようです。ごく短い語句で綴った上質の物語です。「あは」が効いています。でも、私なら2時間も泣かせて笑わせたなら、最後は BAD END に突き落として呆然とさせますがね。そんな風にちょっと嫉妬を覚えるほど、巧いです。

#2ちゃんねる #2ch #ゆっくり解説
【2ch名作感動スレ】あは。いっぱいします?【決定版】 [ ゆっくり解説 ]

https://www.youtube.com/watch?v=WVSYkmd-vWE

(止め)

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思い月

2022-09-23 12:40:00 | 音楽

youtube で Aretha  Franklin の"I Say A Little Prayer" をときどき聴いている。というか、1974年のこのTV動画を決まって視聴しているわけだが、

https://www.youtube.com/watch?v=y1wFX1TPW6E

関連動画として並んだ数々の covers のなかに、Rahsaan Roland Kirk がこの曲を吹いているのを初めて知った。ラサーン・ローランド・カークの場合、演奏しているというより吹いている。ドシャメシャしながら元メロディは忠実に吹いている。律儀な人だ。

映画「ノッティングヒルの恋人」のウィリアムは「男はつらいよ」の「寅さん」であり、ノッティングヒルは「葛飾柴又」でウィリアムが経営する古書店は「とらや」、「おいちゃんおばちゃん」は兄夫婦、「源ちゃん」に当たるスパイクという下品な友だちまでいるという相同について書くつもりだった

旅に出ず、地元に居ついたウィリアム寅さんに対して、旅から旅へ国際女優として忙しいアナ・スコットがもちろんさくらだという思いつきのほうが、以前に書いたグレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーンの「ローマの休日」の変奏という平凡な感想よりずっとおもしろい気がする。

ラサーン・ローランド・カークと何の関係もなさそうだが、彼を聴いていてふと思いついたのである。

Rahsaan Roland Kirk - Say A Little Prayer


Roland Kirk Serenade To A Cuckoo 1972

Rahsaan Roland Kirk "The Inflated Tears & Haitian Fight Song" on The Ed Sullivan Show

映画『ラサーン・ローランド・カーク The Case of the Three Sided Dream 』予告編 [日本語字幕付き]

(止め)

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暮れなずむ街の光と影の中

2022-09-19 01:31:42 | レンタルDVD映画

映画『くれなずめ』
https://kurenazume.com/

Netflix で視聴してから検索してみて、舞台劇の映画化であることを知った。ヘラヘラした高校生6人組と、その後もダラダラとした5年の日常の時間の流れを、映画ならたえず6人をフレームに収めたり、ワンショットワンシーンを駆使して表現できるが、舞台ならどう表現したんだろう。

いや、俳優たちの唾と汗と体臭が伝わってくるような小劇場なら、俳優の緊張感がせめぎ合うヘラヘラダラダラは返って観客を飽きさせないのかもしれない。この映画化でも俳優に演じさせることにはじゅうぶん成功している。いかにもセリフ的な言葉を極力排した「日常会話劇」は俳優たちにとっても挑戦のし甲斐があるものだったろう。

静止的な画角と立ち止まらない意識のような動画を「映画的」とするなら、一人一人の回想シーンでは、妻や警官との会話以上にもっと一人芝居をさせるべきだったようにも思えるが、そうした映像としての独白を避けるのもこの映画のテーマの一つだったかもしれない。

つまり、どこまでも群像劇で押し通したわけだ。高良健吾が出ているせいか、『横道世之介』と似た趣がある「普通青年映画」に思えた。傑作や秀作とは呼ばれないが、観た人々の記憶に登場人物名が残る「名作」かもしれない。

高校の帰宅部映画として、『桐島、部活やめるってよ』の背景となったゾンビ映画製作が、小劇場演劇に代わっているとも思えた。回想の映画だから、あんな風にのめりこんで描かれてはいないが。

普通の人々の「やおい」的な日常を描くという日本しかみられない作品だ。

成田凌、高良健吾はもとより若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹の6人組はいずれも好演、ミキエの前田敦子の快演にびっくり。

客演の滝藤健一の外国人訛りにも感心した。滝藤健一と光石研は何に出ても無敵だな。

(止め)

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