子どもの頃親しんだ児童文学のひとつに
ドイツ作家のケストナーの、「点子ちゃんとアントン」というお話があります。
この中に「トルコ蜜飴」というお菓子が出てくるのです。
「トルコ蜜飴」って一体どういうの!?と、私は子供心に激しく憧れたのです。
しかし、昔はネットなどという便利なものはなく、そんなものを知っている人が周りにいる筈もなく、謎は謎のまま、長らく封印されていたのでした。
後年、ロシア語通訳者・故米原万理さんのエッセイ「旅行者の朝食」の中で、まるで同じような記述を見つけたときは、だから狂喜したのでした。
米原女史も、「点子ちゃんとアントン」に出て来たこのお菓子が気になり、
”トルコ蜜飴という字面を見ただけで、心が千々に乱れたのだった。どんな味のお菓子なのか。どんな色と形をしているのか。一度でいいから食べてみたい。”
で、彼女が子ども時代を過ごした1960年代のプラハで出逢った「トルコ蜜飴」。
”ヌガーをもう少しサクサクさせて、ナッツの割合を多くした感じ。
並みのキャンディやチョコレートじゃ太刀打ちできないくらい美味しい。
すると、そんなの目じゃないわよ、とロシア人の友人がモスクワ土産の
「ハルヴァ」という缶入りのペースト状の飴をなめさせてくれた。
こんなうまいお菓子、生まれて始めてだ。
たしかにトルコ蜜飴の百倍美味しいが、作り方は同じみたいな気がする。
初めてなのに、たまらなく懐かしい。噛み砕くほどにいろいろなナッツや蜜や神秘的な香辛料の味がわき出て混じりあう。”
そうして彼女はその後、世界中で「ハルヴァ」を捜し求めるのです。
長年かかって探し回った結果、彼女が得た結論は
”イディッシュ語ではHALVA、トルコ語ではHELVA、アラビア語ではHALWAとつづられ、どうやら同じお菓子をそう呼んでいることがわかってきた。(中略)
きっとドイツ人やチェコ人は、ハルヴァを真似して作ったお菓子をトルコ蜜飴と名づけたのではないだろうか。
手元の仏語辞典『petit ROBERT』にはHALVAという見出し語があり、
「トルコの飴菓子。ゴマ油に小麦粉と蜂蜜とアーモンド(またはピーナッツやピスタチオ)の実などを混ぜて作る」とあった。”
読むだけで唾が出るような記述ではありませんか…
今回のトルコ行きが決まった時、真っ先に思ったのが、「ハルヴァ」を探そう!ということでした。
現地人ガイドさんなどに散々聞いて、見つけたのがこれです。
感想は…
甘すぎました。
これは、トルコのお菓子全般に言えることなのですけど。
夢は、夢のまま持っていた方がよかったかも…
