Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「イントゥ・ザ・ワイルド」(ネタバレあり)

2008年09月13日 | 映画
またしてもやられました…
日経新聞の映画批評「シネマ万華鏡」。
そこで星5つ取った「イントゥ・ザ・ワイルド」。

こんなマイナーな映画を観に行く人は少ないだろうし、観に行くような人は、多分話の筋も知っているだろうと思うのです。
なので、ネタバレしてもいいかと思います。

「青年が荒野に行き、のたれ死ぬ」 それだけの話です。

1992年アラスカの荒野で衰弱死した青年の遺体が発見される。
彼は裕福な家庭で育った成績優秀な青年だったが
お金もIDカードも名前も全て捨て、アラスカの荒野へと旅立つ。
実話を元にした原作をショーン・ペンが映画化。

「この映画によって彼は世界の一流監督の仲間入りを果たした」
と、日経の記事は始まっています。
「絶望を絶望として肯定せよ、とでもいうような、ほとんど東洋的ニヒリズムにさえ達している。その冷徹で、静謐な、澄みきったまなざしに打たれる。本年度屈指の一本。」と。

絶望を絶望として肯定するとは、どういうことか?
彼、クリスは、ニヒリズムに酔いしれるような哲学的な青年ではない。
明るく、知的で、純粋で、無謀で、傲慢な若者です。
確かに、両親の不仲や欺瞞は彼をどんなに傷つけたか分からない。
しかしだからといってそれは、全てを捨て、社会や文明を拒絶するほどの理由になるのか?
なろうがなるまいが、事実クリスという若者はそういう道を選び、ショーン・ペンはそれを忠実に映像化したのでしょうが。
それをニヒリズムと言えば、確かに言えるでしょう。

クリスが大自然を愛したことは事実です。
狂おしいまでに。
アメリカの大自然を切り取った映像は、荘厳なまでに美しい。
しかし、美しい大自然は彼を愛してはくれなかった。
大自然は都会育ちの人間を受容してくれるほど、甘くはなかった…
旅の途中、様々な人に彼は出会うのですが、誰も、彼を引き止めるほどの力は持っていなかった。
というより、様々に差し出された善意を、彼は優しい笑顔で、無慈悲なまでに切り捨てていくのです。

クリスは結局、飢えと絶望の中で最後の時を迎えるのです。
それは、彼の傲慢さへの答えであったのかもしれない。
だけど彼は、最後にこう書き残すのです。
「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合った時
 僕の一生は幸せだった みんなに神のご加護を!」
ここに来て、彼はようやく両親を許すことができたのでしょうか。

若い頃、五木寛之の「青年は荒野をめざす」を読んだ覚えがあります。
荒野を、孤独をめざすのは、若者の特権であるのかもしれない。
けれども、代償はあまりにも大きすぎました。
その傲慢さを、少しは控え目にしなさい!と二人の息子の親である私は思ってしまいます。

という訳で「本年度屈指の1本」とまで私には思えなかったし、クリスに共感できなかったので☆2。

イントゥ・ザ・ワイルド 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする