私のまわりで今、やたらと評判のよい作品。
全身麻痺の大富豪フィリップと、その介護に雇われた黒人青年ドリスの友情物語。
実話を基にしたということが信じられないような、後味のよい、爽やかな作品でした。
でもさらっとしすぎて、もうひとつ物足りなかったかな…
監督: エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ。
二人は、普通だったら接点の持ちようのない境遇。
パリ中心の館のような高級住宅に住み、執事や秘書や料理人などに囲まれて暮らしているフィリップと
郊外の安っぽい団地の子沢山家庭に暮らす、前科者のドリス。
何かの冗談のような感じで、ドリスは富豪の介護人となるのですが…
フィリップの周りにはそれまで、彼のご機嫌を取る人間しかいなかった。
しかしドリスは、まったく対等に接して来る。
それはドリスの、無知ゆえの怖いもの知らずに加えて
彼の天真爛漫さによるところが多いと思うのですが
その後者の部分が、少々多すぎるような気がします。
例えば、ドリスが食べているチョコレートをフィリップが欲しがるところで
ドリスは、これは健常者用のチョコだから駄目だと言う。
一瞬フィリップの顔は強張るのですが、それを何度も繰り返すドリスの前に
遂に二人は笑いだすのですが…
普通に言えば、これは可笑しくもなんともない冗談です。
そこを笑いに変えてしまう強引さを、ドリスの天衣無縫さという理由に
変えてしまっていいものだろうか。
そんなことを言ったら大抵の常識人間は、身勝手なドリスに敵わなくなってしまう。
実際問題、ドリスの後釜の常識的な介護人たちは
正当な理由もなくフィリップに拒否され、八つ当たりされてどんなに困惑したことか。
その辺りが、私には少々納得できなくて物足りなかったのですが
でもまあ小さなことです。
ドリスが本当のところは、愛情深い人間であることは間違いない訳ですし、
だからこそ境遇の違う二人に、確かな関係が成立したのですから。
人生に行き詰まっていた二人が、お互いを必要とする人間に出逢い、
本音を晒しながら友情を育んでいく。
アース・ウインド&ファイヤーの「セプテンバー」をBGMに
マセラティで暴走する、冒頭のシーンも圧巻です。
カフェ・ドゥ・マゴやヴァンドーム広場など、パリの景色もふんだんに。
やはり仏映画の「ぼくの大切なともだち」(パトリス・ルコント監督)に
ちょっと似た味わいの、爽やかなヒューマン・コメディでした。
最強のふたり http://saikyo-2.gaga.ne.jp/