Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

凄まじい生のエネルギー「君と歩く世界」

2013年04月18日 | 映画


南仏でシャチの調教師をしていた女が、不慮の事故で両足を失ってしまう。
絶望した彼女が、不器用な男と出会うことで立ち直る愛と再生の物語。
そのくらいの予備知識だけで観た本作でしたが
予想を大きく裏切られました。
粗筋は確かにそうなのですが、そんな綺麗事ではすまされない映画なのです。
ステファニー(マリオン・コーティヤル)は、昼はマリンランドの調教師ですが
夜になると娼婦まがいの服を着て男の目を惹きつけることに喜ぶ高慢な女。
方やアリ(マティアス・スーナーツ)は5歳の息子を愛してはいるものの、
窃盗をしたり、行きずりの女と情事に耽ったり、
挙句は闇の格闘技で賞金稼ぎに励む粗野な男。
そんな二人の関係は、最初は友情で始まりましたが
その後結びついたのは、愛情ではなく性欲から。
二人の連絡は、携帯で「ope?(対応可能?)」、それだけ。
とても感情移入できそうもない二人と、その関係なのですが…



およそ観客に媚びない映画です。
突然の事故のシーン、突然のセックス・シーン、突然の殴り合いシーン。
汗と涙と血が飛び散る世界。
しかし、凄まじいまでのエネルギーがそこにある。
両足を失っていっときは絶望し、目が虚ろだったステファニーが、
生と性のぶつかり合いから、生きるという意味を確認していく。
激しいセックス・シーンも、血と汗が飛び散る格闘シーンも、
結局、生きるエネルギーがその根底に流れているのですから。
そこから見られるのは、瑣末なことはどうでもよくなるほどの
圧倒的な生のエネルギーなのです。
生きるのは綺麗ごとじゃないんだ、どんなに不格好でも見苦しくってもいいんだと
作品全体が叫んでいるようです。
そして高慢な女も、粗野な男も、
最後には相手の存在の大切さに気が付くのです。



「君と歩く世界」という爽やかな邦題からは、想像もつかない内容。
これ、原題は"De rouille et d'os" 、英語だと"Rust and bone"、
直訳すれば「錆と骨」。
これは何か意味があるのかとアメリカ人の友人に聞いてみましたが
特にないとのこと。
ネットで調べたら、パンチを受けて唇が切れた時の味のことを意味する
ボクシング用語らしい。
本当にそんな血の味が口の中に広がるような後味の映画だったのでした。

「君と歩く世界」 http://www.kimito-aruku-sekai.com/main.html
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする