
本年度アカデミー作品賞の「アルゴ」をようやく観て来ました。
1979年イランで起こったアメリカ大使館人質事件の裏で行われ
長年公表されてこなかった人質救出作戦を、実話をもとに描かれた作品。
評判にたがわず、スリル満点の緊迫感溢れる脱出劇。
前半はやや退屈でしたが、後半は息をつぐ暇もないという感じ。
面白かったが…アカデミー作品賞を取るほどのものかな?という感想も
正直持ちました。
「脚色賞」「編集賞」には納得ですが。
以下は、核心に触れない感想です。
30年以上も前に、イランでアメリカ大使館人質事件があったということは
かすかに覚えていましたが
その背景や理由まではまるで分かっていませんでした。
この映画でも冒頭でさらっと説明してはいましたが
あれでは表面的すぎて良く分からない。
しかし、当時のイランという国の中での反米感情は
映画の画面から嫌というほど伝わってきました。
アメリカ大使館襲撃も、イランの過激派グループの仕業ということですが
画面で見る限り、一般大衆すなわち普通の人々が雪崩のように押し寄せている。
脱出作戦が決まり、一行が映画の撮影スタッフとしての実績を作るために
イランのバザールに出かけた際にも、
青い目の連中(アメリカ人)に対する憎悪に燃えた人々に取り囲まれ、
押し潰されそうになる…
アメリカ大使館員たちが、襲撃された際に必死にシュレッダーにかけた写真や書類。
イラン政府が、何十人もの子供を使って紙屑を繋ぎ合わせ、
脱走者の写真を復元させようとしたことにも唖然としました。
この辺りの説得力は、映画ならではです。
いつ殺されるか分からないという緊迫した状況の中で
偽物の撮影スタッフになりすまして脱出させるという突拍子もない作戦を
実行に移したCIAも凄いし、それを認めたアメリカも凄い。
(途中、作戦停止とか色々あるわけですが)
成功率がとてつもなく低いと思われたこの作戦を考え出し、自ら飛び込んだ
CIA局員トニー・メンデス、こんな人が実際に存在するなんて…
ラストの空港では愈々緊迫感が増すのですが
最後の最後、銃を構えた屈強な兵士たちに尋問されるシーン。
黒々とした髭に囲まれた浅黒いイラン人の男たちの怖い顔が
なり済まし映画スタッフの6人が見せたSF映画の絵コンテを見て
かすかに綻ぶのです。
ベン・アフレックは70年代のSFオタクで、スター・ウォーズの熱烈なフアンであると
何かで読んだことがあります。
その彼の、主演監督作であるこの作品には、映画への憧憬が詰まっているのかもしれません。
「アルマゲドン」では熱い若者というイメージだったベン・アフレック、
本作では髭を蓄えた、渋いCIA局員が決まっていました。
こんなに才能に溢れていたとは…
アルゴ http://wwws.warnerbros.co.jp/argo/