昨夜、BSのヒチコック特集で「裏窓」を観ました。
懐かしいなあ…
初めて観たのは20代の時であったか。
1954年アメリカ映画。
カメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュワート)は足を骨折し、
ニューヨーク、グリニッチ・ヴィレッジのアパートで療養中。
7週間もの間、身動きの取れない彼にとって退屈しのぎの楽しみは、
窓から見える中庭と向いのアパートの住人たちを眺める事だけ。
不審な動きをする住人を見張っているうち、殺人事件に巻き込まれ…
サスペンスであり、ラブロマンスであり、ヒューマン・ドラマであり。
しかも昔観た時には気が付かなかったことも見えてくる。
昔は、そのアパートも随分お洒落だと思ったものですが
今観ると、下町の生活感漂うゴチャゴチャしたアパートです。
一途に思いを寄せる恋人リザ(グレース・ケリー)を受け入れないジェフに、
若い私は苛々したものですが
今は、それも無理もないと思えてくる。
貧しい報道カメラマンのジェフに対して一流モデルのリザは
仕事柄といえ、1100ドルもするようなオーガンジーのドレスを身につけている。
動けないジェフに、美味しい夕食を用意したと言って
一流レストランのケータリング(給仕つき!)を頼んだり。
世界を飛び回りたいジェフに、雑誌社を辞めてスタジオを開いてと頼んだり。
これではジェフが怖気づくのも無理はない。
しかしジェフも、将来の展望は持てないにしても
今はリザを手放したくないという男の狡さも持っている。
画面の中で、美味しそうに食べる場面があったように記憶していたのですが
ジェフが、通いの看護婦ステラに作って貰って
その料理の腕前を褒めながら満足気に食べるのは
ただのトーストとベーコンエッグ、それにコーヒー。
サラダとオレンジジュースくらいつけたら?と言いたくなります。
野菜一切れも挟まない、シンプルこの上ないハム・サンドイッチも出てきたなあ。
アパートの一室、そこから見えるだけの狭い世界で
しかし観るほどにドキドキさせられるヒチコック監督の力量は
60年経っても些かも色褪せません。
一人酒をあおるミス・ロンリーハート、最初はベッタリだった新婚夫婦、
飼い犬をバスケットに入れて四階の部屋から上げ下ろしする夫婦、
スタイル自慢でモテモテの踊り子の本当の願い…
人間観察も面白い。
ウィットに富む会話にも退屈させられません。
それにしても、グレース・ケリーの美しいこと!
息を呑むほどです。