去年、劇場で見損ない、DVDで観賞。
あまり話題にならなかった作品ですが
「刑事ジョン・ブック目撃者」「 いまを生きる」「グリーン・カード」など
私が好きな映画を作ってきたピーター・ウィアー監督の作品だから
面白くない筈がないと思っていたのです。
結論からいうと、それは間違っていませんでした。
第二次世界大戦下、スパイ容疑でシベリアの強制収容所に送られた
ポーランド軍士官ヤヌシュが6人の仲間と脱走し、
吹雪の森を抜け、モンゴルからゴビ砂漠、チベット、そしてインドまで
6500キロを歩き通したという実録サバイバル。
何しろ自然の映像が凄い。
ブリザード吹き荒れるシベリアの森、360度黄土が拡がるゴビ砂漠、
何もかもを覆い尽くしてしまう砂漠の砂嵐、雪に輝くヒマラヤの山稜。
ナショナル・ジオグラフィック協賛だけのことはある素晴らしい映像がこれでもかと
出てくるのですが、それよりも素晴らしいのはやはり人間たちの姿。
飢えに苦しみ、芋虫や蛇、オオカミの食べ残しなどに食らいつき、
そして耐えがたい喉の渇き。
極寒のシベリア、灼熱のゴビ砂漠、服も靴も破れ、足からは血が噴き出し、
しかしそんな状況でも、人間性を失わなかったヤヌシュたち。
途中から、やはり共産圏の収容所から脱走してきた女の子(シアーシャ・ローナン)が
加わります。
荒くれ男の集団(思想犯が主だが、中には勝手にグループに加わった極悪犯もいる)に
女の子が?と驚くのですが
この子が文字通り、花を添えるのです。
それまで何十日寝起きを共にしても、ろくに身の上話もしてなかった男たちが
彼女には心を開き、彼女を通してお互いを知ることになる。
純真な彼女を通して、殺伐とした男たちが、人間らしさを取り戻していくのです。
しかしやはり体力に限界があり、彼女は灼熱の砂漠の中で…
何千キロと歩くうちに、一人また一人と仲間が倒れて行く。
そういった厳しい環境の中で倒れるということは
そのまま死を意味するのです。
死にたくなかったら、ただ歩き続けるしかない。
歩き続けること、すなわち生きるということ、その素晴らしさを
全身で訴えている映画です。
しかし、これが実話ということが信じられない。
これは是非、原作を読んでみなくては…
「ウェィバック」 http://wayback.jp/