
昨日、新国立劇場で、バレエ「ドン・キホーテ」を観て来ました。
先月こちらで観た「ペンギンカフェ」も一味違った現代バレエで面白かったのですが
今回のはクラッシック・バレエの王道。
お城や森を舞台に、お姫様や騎士が華麗に舞い踊り、麗しいことこの上ない。
今回のバレエとは関係ないのですが
観賞中、熊川哲也氏のことを考えていました。
新国立劇場のバレエ団のマネジメントに関して
彼がその著書の中で、批判的なことを述べていたからです。
熊川氏のバレエは昨夏、「真夏の夜の夢」を観たきりなのですが
もう素晴らしい、の一言でした。
一体どのような家庭に生まれてどのように育ったらああいう人ができるのかと興味深々、
ごく最近、彼の自伝的エッセイ「made in London」を読んでみたのです。

1972年旭川市生まれ。
「ごく普通のサラリーマンの家庭」に生まれ、
母親も2歳年上の兄も、バレエの経験はなかったと言っています。
10歳でバレエを始め、みるみる頭角を現し、15歳で英国ロイヤルバレエ学校に留学。
17歳の時、ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人初の金賞を受賞。
同年、ロイヤルバレエ団に東洋人として初めて入団し、最年少でソリストに昇進。
1993年プリンシパルに昇格。
その後、ロイヤルバレエ団を退団して自らKバレエカンパニーを創立、
その活躍ぶりは周知の通りです。
この本は、バレエ団を退団してすぐの頃、書かれたようなのですが
いや、驚きました。
全編自己陶酔の「俺様主義」なのです。
彼の言動から、なんとなくそんな雰囲気は感じ取っていたのですが
実は血と汗と涙の努力が隠されていたとか
例えば英国に渡ってすぐは、世界の壁の厚さに挫折感を味わったとか
そんな独白を期待していたのですが…
とんでもなかった。
15歳で渡英した際も、”僕の技術レベルが高いということで
いきなり17~19歳のアッパークラスに入れられた”そうなのですが
”みんなの踊りを見た時、思っていたほどレベルが高くなかったのがわかり、
何だ、この程度か。自分の方が上手いじゃないかと拍子抜けしてしまった”と。
そして彼はこうまで言っているのです。
”僕はプリンシパルに昇格するまでーその後もだがーさしたる努力をしたことがない。
これができるようになりたいと思ったことで、できなかったことは一つもない。”
恐れ入りました。
そこまで言い切れる人間が、世の中に存在していたとは。
逆に言えば、そのくらいじゃないと
バレエ団を創設してそれを率いるなんてこと、できないのかもしれませんが…