![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/69/19f70ed65509645bd053b822aebec920.jpg)
アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝を実写化したドラマ。
クリント・イーストウッド監督の最新作。
アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のスナイパーであった彼は
160人もの敵を射殺して伝説の男と呼ばれるが、次第に心に傷を負って行く…
幼少時のクリスに狩猟の手ほどきをしながら、父親が言いいます。
お前は羊を守る牧羊犬たれと。
そしてクリスはその言葉を守るべく鍛錬を重ねて育ち、
家族を守るため、国を守るためにシールズの特訓にも耐え、イラク戦争に赴きます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/ca/4afab59e33401dcc48b292605f017257.jpg)
しかし現場はあまりにもむごい。
手榴弾やロケット砲を抱えていれば、それが10歳足らずの子どもであれ女であれ、
射殺しなければならない。
ほぼ無音楽の画面に、息遣いと銃弾の音だけがこれでもかと響く。
電気ドリルを密告者の子どもの頭に突っ込んで殺すなど残忍な敵兵が現れますが
イラク人からしてみれば、160人もの同胞を殺したクリスこそ
残酷極まりない殺人鬼でしょう。
どのみち、地獄でない戦争なんてないのでしょうから。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/28/9fc9237209e7b57afdadacae74aab789.jpg)
クリスが次第に心を病んでいくのも、当然と言えば当然のことです。
しかし、私はここで、とんでもない言葉を思い出してしまった。
朝日新聞の「銀の街から」に書かれていた澤木耕太郎氏の言葉。
"確かに戦場の惨たらしさ、帰還兵の困難さは描かれている。
しかしイーストウッドは、スナイパーという職人でもあり徹底した現場の人でも
あったカイルの半生を忠実に描いていくうちに、彼の心の底にある思いを無意識の
うちに掘り起こしてしまったのではなかったか。
その思いとは、そう、「だが戦争は楽しい」というものだ。
この映画が、アメリカ本国でイーストウッドの作品としては例のないヒットと
いうかたちで受け入れられたとすれば、それは観客がその表面には現れてこない微
かな気配に鋭く感応した結果であったように思える。
少なくとも私は、カイルが彼の言う「野蛮人」の頭や胸を正確に射貫いていくとき、
快感に似たものを覚えているのに気がつき、ハッとしたものだった。”
「だが戦争は楽しい」
聞いてはいけないものを聞いてしまった気分。
あの阿鼻叫喚の地獄絵図の中で、そんな言葉を使っていいのか。
しかし、認めたくはないがそれを完全に否定できないからこそ、
クリスも帰還後、あれほど苦しんだのではないか…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/be/cdb1b2e217afb98dd5e2ac16e1985bbc.jpg)
クリス・カイルはこの映画の製作中に亡くなられたそうです。
実に皮肉な方法で。
画面ではそのシーンは描かれず、簡単なテロップによって語られます。
その後の完全無音のエンドロールは、イーストウッド監督の鎮魂、黙祷の
メッセージだったのでしょうね。
http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/