
『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』の巨匠ジュゼッペ・トルナーレ監督と
エンニオ・モリコーネの音楽というので、期待しすぎちゃったかな。
若く美しい大学生エイミー(オルガ・キュリレンコ)は、大学の天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と
6年越しの秘密の愛を育んでいた。
しかしある日突然、エドの訃報を知る。
呆然とするエイミーの元に、その後もエドからのメールや手紙、ビデオが届き続ける。
その謎を解き明かそうと、エイミーはエドが暮らしていたエディンバラや
かつて二人で過ごしたイタリアのサンジュリオ島を訪ね歩くのだが…

”数十億年前に死してなお、地球に光を届ける星々のように、命尽きても我々の愛は
大切な人たちの行く先を照らし続けることができるのか。”(HPより)
そんな壮大でロマンに満ちたストーリーといっても
結局のところ、単なる不倫劇じゃないかと思ってしまう。
エイミーの同い年というエドの娘や、妻にとってはたまらないでしょう。
つまりは、自分が死んだ後も忘れられたくないという、老いた男のエゴに感じてしまう。

エイミーの過去のトラウマを解きほぐしてやりたい、
自分の死によって絶望しているエイミーを慰めたいという男の思いやりも
あまりにしつこいメールや手紙やビデオ攻撃に、観る側はちょっとうんざり。
その謎解きはあまりに原始的だったし。
「老いた魔法使いは見捨てない」という彼のメッセージは
「死んでもなお、どこまでもつきまとってやる」という呪縛に見えてしまったのでした。

ただこれは、エドが天文学者でなければ成立しなかった話でしょう。
「天文学者が普段観測している光は、すでにこの世にないはずの光」
という着眼点が、この話のすべての始まりである気がします。
エディンバラやイタリアの湖水地方の映像はとても綺麗。
あの意味あり気に出て来た健気な黒い犬「ブッチ」が、私には一番印象的だったか。
重要な伏線かと、期待してしまったのでした。
脚本もジュゼッペ・トルナトーレ、原題「CORRESPONDENCE」。
「ある天文学者の恋文」 http://gaga.ne.jp/tenmongakusha/