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かつて「ダ・ヴィンチ・コード」の原作を読んでから映画を観た私は、怒り狂ったのでした。
大人の知的謎解きゲームが、浅薄な土曜サスペンス劇場になってしまっている。
それに懲りて「天使と悪魔」は映画を観てから原作を読んだのですが、
これが非常にいい感じで、映画を楽しんでから蘊蓄をじっくり確認することができた。
今回はどうしよう?と迷いながら、タイミングもあって
結果的に原作単行本の「上」だけ読んで、観ることに。
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これがよかったかもしれません。
作品後半では、あっと驚くドンデン返しがあるのです。
あれを知ってしまってから観たら、やっぱり面白くないよねえ。
一方、原作の前半でしつこく描写される、主人公の幻想に現れる地獄絵図や
ダンテの神曲の地獄扁を描いたボッティチェリの絵が
映画ではくっきりと映像化されるので、分かりやすいことこの上ない。
人口爆発を抑えるには、人類の半数を滅ぼすウィルスをばらまくしかないと考える
生物学者の陰謀を阻止するべく、ダンテの神曲の「地獄変」に隠されたヒントを手掛かりに
ラングドン教授が女医シエナと共に、謎を解明していくという話。
頭脳明晰なラングドンが、今回は記憶喪失に罹って苦しむという設定も面白い。
原作前半で意味あり気に提示された、シエナの天才としての「普通ではない」子供時代や
その後の彼女の人生の苦悩が映画ではまったく無視されたことや
アクションシーンが多すぎたことなど不満はありますが。
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それでもフィレンツエ、ヴェネチア、イスタンブールのシーンが美しいし、
息をもつかない展開にハラハラさせられます。
これで心置きなく原作の「下」を読むことができます。
公式HP http://www.inferno-movie.jp/site/#!/