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スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督、私はこの人の
「オール・アバウト・マイ・マザー」「ボルベール帰郷」に
非常に感銘を受けたので、楽しみにしていたのです。
マドリードで暮らす中年女性ジュリエッタは、12年前に失踪した最愛の娘アンティアへの
思いを内に秘めて、深く悩んでいた。
そんなある日、街で娘の幼友達に会い、アンティアを最近見かけたと聞き、
出す当てもない、娘に宛てた手紙を書くことで、自分の封印していた過去と向き合っていく。
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愛する娘は何故失踪したのか?
自分は何故、突然見捨てられたのか?
ネタバレになるので詳細は書きませんが
映画の冒頭からやたら重苦しく、陰鬱なミステリー調で進んでいく割には
後に明かされるその理由は、え?それだけ?と拍子抜けするようなものです。
ただ、他人にとってはそんなこと?と思うようなことが
当人にとってはどうしようもなく切実であることは、世の中にはあります。
お互いに傷つけるつもりではなかったのに、絶望的に傷つけてしまうことも。
濃密な親子関係であるだけに、修復できないほどにぶつかってしまうことが
確かにあるのです。
ことに、絶対だと思っていた母親の愛情に疑いを持った時の子供が受けた傷は
その後の人生を歪めてしまうものであるかもしれないと、個人的に思います。
愛と裏返しの喪失感、そのやるせなさに、ただ言葉を失くすしかない。
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画面は、アルモドバル独特の鮮やかな原色にくっきりと彩られ、非常に印象的。
この作品は、カナダのノーベル文学賞作家アリス・マンローの作品が原作なのだそうです。
そしてその小説を訳されているのは、SNSの友人である小竹由美子氏なのです。
私はこの方の本は、「なにもかも話してあげる」しかまだ読んでいない。
是非、「ジュリエッタ」の原作も読んでみたいと思います。
公式HP http://julieta.jp/