
1999年4月20日、コロンビア州デンバーのコロンバイン高校で、同校の生徒、
エリック・ハリスとディラン・クレボルトが13人を殺害、24人を負傷させたあと自殺した。
この本は、犯人の一人、ディランの母スー・クレボルトによって書かれたものです。
この本のことを新聞の書評で知ってから、読んでみたいと思っていました。
どうしたら、あんな恐ろしい殺人鬼ができるのか?
母親は同じ家にいて、本当に何も気が付かなかったのか?
これを読めば、何か答えは見つかるのだろうか?
結論から言えば、特記できるようなものは何も見つかりませんでした。
著者は良妻賢母であり、教育関係者として優等生的な人生を送った女性だった。
夫を愛し、息子たちを愛情深く育て、自分の人生に満足していた。
あの日までは。
あの日を境に、著者は全世界から想像を絶する非難を浴び、奈落の底に落とされ、
それでもわが子を否定しきれない葛藤を持ちつつ、惨劇の原因を追究し続けています。
沢山の裁判を起こされ、財産をすべて失い、43年間連れ添った夫とも離婚し、
今は贖罪の思いを胸に、自殺防止の活動に奔走しているといいます。
事件後の長期にわたる研究の結果、スクールカーストによるいじめも認められ、
精神分析医の結論は
”エリック・ハリスは殺人的傾向のある精神病質者で、ディラン・クレボルトは
自殺傾向のある鬱病患者で、それぞれが相手の狂気を必要としていた”
ということなのだそうです。
しかし、病名をつけることに何の意味があるのだろう?とも思います。
この本を読む限り、ディランは愛情深い家庭に育った、普通の少年にしか見えないのですから。
私の下手な説明より、著者の文章を少しご紹介したいと思います。
”問題は何かって?現実はそうではないことだ。
ディランの行動も、彼の本当の姿もそこにぴったりとはまらないことだ。
彼はマンガに出てくるような瞳に風車の模様があるような悪者ではない。
この凶悪で残虐な犯行の裏にある真実はずっと不穏なもので、犯人である彼は
「ちゃんとした家庭」に育った、のんきで内気で人好きのする青年だった。
トムも私も、ディランがテレビの見過ぎや砂糖の多いシリアルの摂り過ぎにならないよう制限する、教育熱心な親だった。息子たちが観る映画を制限していたし、寝かしつけの時にはお話を聞かせ、お祈りをし、抱きしめていた。
事件の前の年にいくつか問題行動があった以外は、ディランは典型的な良い子だった。
育てやすく、一緒にいるのが楽しい、私たちの自慢の息子だった。”
400ページに及ぶこの本が上梓されたのは、事件から16年経ってからなのだそうです。
『息子が殺人犯になった』 https://tinyurl.com/yaag2heu